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龍眼の転生者 〜内なる龍が目覚める時〜  作者: 小川 俊


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それは既に溢れ出している④【一番牙】

第14話「それは既に溢れ出している④【牙】」をお届けします。


今回は灰狼とジミマイの一騎打ち。


これまでの流れの中で積み重なってきたものが、静かに、しかし確かにぶつかり合います。


言葉は多くありませんが、その分、想いと本能が剥き出しになる戦いになっています。


どうぞお楽しみください。

『貴様の名など――どうでも良い!!』


灰狼は尻尾を長く大きくし、ブレードのような刃物へと変形させると、ジミマイへと斬りかかった。


ガシャンッ!!


ジミマイは棘のある巨大な金棒でそれを受け止めてみせる。


鍔迫り合いのまま、灰狼は悪魔の顔面へと噛み付こうとする。


ガチンッ!


だが、その動きは回避される――否、読んでいた。


灰狼は、自らの頭部で視界を遮り――

隠していた左前脚の爪を、ジミマイの横腹へ突き立てた。


グシュッ!


『ングッ……!』


ガインッ!!


鍔迫り合いの距離を嫌い、ジミマイは間合いを取るために後退する。


『ギヒヒヒ……なるほど。ここへ向かわせた配下が戻って来ない訳だ。』


腹部から血を流しながらも、ジミマイの表情にはまだ余裕が見える。


しかし、灰狼は止まらない。


『お前も戻れぬ身体にしてやるわ!』


キィィイイイン!


空気を裂く音と共に、灰狼の身体が回転する。


『――狼参刃』


尾の刃は丸鋸の如く唸りを上げ、一直線に悪魔へと襲いかかった。


『なに!?』


ギャリギャギャァァァァ!!


ズダァァァァァン!


ジミマイは間一髪でそれを金棒で防ぐも、後方へと大きく弾き飛ばされ、崩れた門の瓦礫へと激突した。


灰狼は止まらない。


『これで幕だ』


回転する刃は、体勢を崩した悪魔へと、目にも止まらぬ速さで追撃する。


『カース・オブ・ダイヤモンド』


片膝をついたジミマイが、不気味な言葉を口にする。


――瞬間。


金棒に宿る黒いオーラが、爆ぜた。


バギャキャンッ!!


高い衝撃音が鳴り響く。


気付けば、回転していた尾のブレードは赤くひしゃげて停止し、灰狼は吹き飛ばされ、地面へと叩きつけられていた。


『……な……何が……起きた……』


灰狼は、ゆっくりと悪魔へと顔を向ける。


ジミマイは片膝をついたまま。


だが、その手に持つ金棒は――もはや先程のものではなかった。


黒いオーラが渦巻き、苦悶する化け物の顔が浮かび上がっている。


『ギヒヒヒ。惜しかったなぁ。こいつは悪魔族の新兵器だ』


ジミマイは立ち上がり、ゆっくりと灰狼へと歩み寄る。


『こいつを呼び出したら、魂を一つ喰らうまでは止まらない』


ズンッ……ズンッ……ズンッ……


灰狼の目の前まで来ると、ジミマイは金棒を大きく振り上げた。


『ほら、今日は狼の魂が食えるぞ』


ドォォォンッ!


金棒は地面を抉る。


だが――そこに灰狼の姿はない。


ザザッ!


ギリギリのところで回避し、間合いを取る灰狼。


『グゥゥゥ……グゥゥゥ……』


息は荒い。


攻防の要である尾のブレードはボロボロに砕けている。


それでも、灰色の瞳はまだ死んではいない。


『そのまま寝てれば楽に死ねたのになぁ。馬鹿犬め』


『武器は立派でも……使い手は三下か。その武器も哀れよ』


『なんだとぉ……』


怒りに任せ、ジミマイは金棒を振り回しながら突進する。


ドォォォンッ!


ドォォォンッ!


ドォォォンッ!


だが、その攻撃は単調。


灰狼を捉えることはできない。


『ちょこまかと逃げやがって、このクソ犬が!』


『どうした……武器が泣いているぞ』


ブチッ


『くぉのザコ犬ぐぁぁ!殺してやるぅぅ!』


ズッドォォォオオオン!


攻撃がさらに大振りになり、隙が生まれる。


その瞬間――


ガブリッ!


『うっ……ぐぁあああ!』


灰狼は、金棒を握る腕に噛み付いた。


『殺してやる!殺してやるぞカス犬がぁ!』


ジミマイはもう一方の腕で、灰狼の脇腹へと拳を叩きつける。


ギリギリギリギリ……


それでも、灰狼は離さない。


口からは血が溢れ、悪魔の血と混ざり合って地面へと滴る。


(……こんな奴らを……玉藻様のお側に……近付かせはせぬ……)


『はぁなぁれぇろぉああ!』


殴る、蹴る、叩きつける。


それでも――離さない。


(……怪我をした某に……玉藻様は……手を差し伸べてくださった……)


『ぁぁぁあああ!』


ドスッ!


ドスッ!


ドスッ!


灰狼の意識が遠のいていく。


(身寄りも無く……頼るものも無かった某に……愛をくださった……ただ一人の……)


『はぁなぁすぇぇえええ!』


ドスンッ!


『くはっ……!』


牙が、緩む。


意識が、消えかける。




(私がお前の母になろうね。良い子、良い子)




その声が――灰狼の意識を引き戻した。


灰色の瞳が、見開かれる。


(某は――玉藻様の一番牙!!!)


ガリュッ!!!


灰狼は、ジミマイの腕を噛み千切った。


『うぉぉおおおおお!』


絶叫が響く。


灰狼は止まらない。


噛み千切った腕は、なおも呪われた金棒を握っている。


ブォンッ……ブォンッ……ブォンッ……


回転が、再び始まる。


両膝をつくジミマイ。


その頭上に、闇を纏った死が迫る。


『ほれ……木偶の坊の魂でも喰らうがよい』


ゴシャンッ!!!


ジミマイの頭部は、胴体へとめり込みながら潰れた。


死体から黒い何かが浮かび上がり、金棒に宿る口へと吸い込まれていく。


ガラッ……ゴロゴロ……


バタンッ


金棒は元の姿へと戻り、地面へ転がった。


灰狼はその場に崩れ落ちる。


意識は――途切れた。




灰狼は――勝った。




第14話を読んでいただき、ありがとうございます。


灰狼という存在の「強さ」や「在り方」を、今回の戦いで少しでも感じていただけたら嬉しいです。


派手さだけではない、静かな熱や覚悟を意識して描きました。


ここから物語はさらに動いていきますので、引き続き見守っていただけたら嬉しいです。


よろしければ、ブックマークや評価などで応援していただけると励みになります。


いつも本当にありがとうございます。

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