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転生珍獣王女奮闘記  作者: 千里
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No.56 彼女と兄上


<リーフside>


ティアの背中を見送るしかなかった俺達に、マリーン様のすごい冷めた視線が突き刺さる。

言いたい事が分かるだけに、視線を反らしてしまう。


「逃げられる確率八十%。今のままなら、確実にヤバいわよ?私ならこのまま国に帰るわね」


「……母上、敵なんですか?味方なのですか?」


「もちろん、彼女の味方よ?お嫁さんになる時は、誰だって不安になるのは当然でしょ?ディアティアちゃんは、好意を受けとる事を苦手に思っている気がするわ」


「マリーン様は、やはり鋭いですね。ティアの国の環境は、普通の人間なら歪んでいるような日常でしたから」


生まれた瞬間に存在否定されて、母親には蔑まれ暗殺者まで送り込まれてくる毎日。

ティアの中の光は、なんだったんだろう?

スノーリー様に出会うまでの五年間。

ディルの言葉を借りるなら、全く手の掛からない子だったとか。

我が儘も言わない、甘えるのが下手な読書好きな本の虫。

逆に心配で、毎日様子を見に通ったと笑っていた。

スノーリー様が教師になってからは、毎日二人は楽しげに勉強していたらしい。

笑顔が増えて安心したと、ディルは思っていたと。

そんなティアが泣いたのを見たのは、スノーリー様が亡くなった時だけだと聞いた時、ほのかに切なくなった。

冷たくなった紅茶を飲んで、ティアの不安そうな顔がチラチラと目に浮ぶ。


「そう……なら余計に伝えてあげなきゃ!ディアティアちゃんの中が、サンとリーフの好きでいっぱいになるように。不安を取り除くのは、旦那様の役目よ?」


「そうですね。ティアは変な所で不器用なんですよ。私達だって、やっと大切な人に出逢えたんですから、゛愛してる゛でいっぱいにしてみせますよ」


キラキラ笑顔のサン。

本気なのがヒシヒシと伝わってくる。

まぁ、気持ちは同じだ。

愛しいも恋しい気持ちも、初めて教えてくれたのはティアだ。

ティアからの、控えめの゛好き゛は甘くくすぐったくて、心が満たされる。

だから知って欲しい。

安心して愛されて良いんだよ。

俺達はずっと一緒なんだ、って。


「逃がしてはやれないな~。あんなに優しくて、面白い不器用な可愛いお姫様は、ティアだけだろうしな」


「デレデレね。まぁ、そうよね~あの旦那様が、あんなにデレてたのは初めてだもの。カリーナの時でも、最初は余所行きの顔してたわよ?」


「父上いわく、゛兄上の小さなお姫様゛は特別みたいですよ。セレーネでも、ティアにかなり絡んでましたから」


「旦那様はブラコンなのよ。きっとそれもあるわね~。ちょっと焼きもち焼いた方が良いかしらね?」


クスクス笑うマリーン様は、だいたい想像出来たらしい。

マリーン様の言葉に、サンは微妙な表情を浮かべる。

きっと俺の表情も、同じように微妙な表情のはず。


「ティアは私達の婚約者であって、小さなお姫様は過去の話ですよ」


「そうね。なら、早めに安心させてあげなさいな。きっと今、不安でいっぱいのはずだから」


「そうですね。今すぐ行ってきます!俺達には、ティアしかいないんですから」


俺とサンが紅茶を飲み干すのと同時に、慌ただしい複数の足音が聞こえてきた。

一同は俺達の目の前に膝をつくと、報告します!と頭を下げる。


「青の宮にて、不審者・女と自称エルフ捕縛しました。不審者いわく、第二王子の知り合いだと狂言しているらしく……」


俺達は騎士を睨むと、すぐに立ち上がる。

やっぱり離すんじゃなかった。

引き留めて、抱き締めとけば良かった。


「母上、すみません。私達は至急行ってきます」


「フフフッ、早く行っておあげなさいな。教育的指導は大切よ?」


「はい。では、マリーン様。後ほどティアと一緒にうかがいますね」


一礼して騎士に案内させる。

うちの騎士が、何をやらかしたのか……。

殴りたい気持ちを押さえながら、騎士の後を追いかけた。


***********


後ろ手で縛られて、ちょっと豪華な部屋に転がされてます。

お茶会の帰りに、見知らぬ若い騎士とすれ違ったのが運のつき。

腕を捕まれて素晴らしい反射神経で、私の腕を捻り上げた。

私は雰囲気にのまれて、されるがままでして。


「お前達、見知らぬ顔だな!なぜ、お前達みたいな愚民が、王族の住まう宮に足を踏み入れた!?」


赤茶色の髪と同系色の瞳。

顔は少年っぽさを残した、比較的整った顔立ちだ。

つり上がった瞳は、今も殺気で射殺さんばかりに睨み付けている。

殺気の中に蔑みが入り交じっているのは、慣れたもんでスルーする。


「おやめなさいな、目が節穴な騎士様?この子は、セレーネ王国の一姫よ。サンエーリ様とリーフ様の、婚約者なんだから」


「なんだと!王太子殿下の近衛騎士の俺に向かって、その態度はなんだ!そもそも姫が、そんな平凡陳腐な顔な訳あるか!お前のその尖った耳も幻術だな希少種のエルフが、そこらにいるはずないだろ!」


唾を飛ばして言い切る騎士様に、軽く面倒な事になったな~と、肩を竦める。

この騎士様の偏見は、ハーツの神経をガチでゴリゴリ逆撫でしているよ?

止められるか激しく不安だ。


「目だけじゃなくて、頭も悪いのね~可哀想!貴方がどんだけ偉いかは知らないけど、うちのお姫様を侮辱するのは許さないわよ!」


「お姫様?笑わせるな!平凡陳腐なコイツが姫なら、俺は騎士を辞めてやるよ!とにかく不審者確保!」


『確保!』の言葉に何処に潜んでいたのか、三人同じ制服の騎士が出てきて私の手首を背中に回すと、ロープでギチギチに縛る。

ハーツも妖しい表情のまま、同じように縛られる。

逃げれるけど逃げると、こっちの立場が悪くなるよね…。

そのまま、ロープを引っ張られて連れてこられたのは、まぁ……当たり前だけど知らない部屋。

ドンッと押されて尻もちをつくと、無防備だった足首にまでロープを巻かれる。

これ、怒ってもいいよね?


「レディーの足に許可なく触れるなんて、騎士にあるまじき行為ね!恥を知りなさいよ!」


「ハーツ、切れないでね?攻撃魔法は禁止だよ?ほら、今すぐは生死に関わらないし。破壊しても賠償出来ないし?」


近くの人が激怒していると、隣にいると冷静になれちゃうのが不思議だよね?

さっきまでキレそうだったのに、ハーツの殺気を感じると……ねぇ?


「口を塞がないだけ、ありがたいと思え!狂言を訂正して土下座で、誠心誠意謝るなら足だけ外してやってもいいぞ?」


腰に手を当てて得意気に言葉をのせる騎士に、私は何とも言えない微妙な表情になってしまう。

だから、疑問を解決してしまおう。


「何に対する謝罪?私達は何もしてないとおもうけど」


「俺を愚弄しただろ!自称エルフも言いたい放題言いやがって。自称エルフのくせに!エルフなら縄なんて、きかないはずだろが!」


ハーツの胸ぐらを掴んで、ガンガン揺するとポイッと離す。

なんだこの騎士……いや、駄犬で十分だね。

私のスイッチ押したね。


「黙りなさい!私の筆頭に乱暴するのは、許さないから。近衛だか知らないけど、正しい知識を持たないと、足下すくわるれるよ。今のままなら駄犬で十分だね」


転がされたままで格好はつかないけど、一応忠告。

次はない。次は実力行使します。

そう心を決めたのと同時に、私の襟首を締め上げて立たせると……ゴツッと拳が飛んできた。

鈍い音は痛い。現在進行形で頬と顎が痛い。

きっと色変わるよね?

またドンッと押されて倒れ込む。


「俺は伯爵家の三男だ!多少の事なら、握り潰せるからな!」


「あんた、今すぐ潰す。私のティーちゃんに、なんて事してくれてんのよ!」


「ハーツッ!私は大丈夫だから。多少は痛いけど、死ぬようなケガじゃないから」


「ダメよ!許さないわ……」


ぶわっ、とハーツの魔力が解放されてブチブチッと縄が切れる。

熱風のような魔力が溢れ出す。

同時に、ドアの前に誰かの気配がする。

ドアを背中に転がされているから、気配でしか分からないけど……偉い人なのは分かる。


「王太子殿下!どうなさい」


「これは、どういう事だ?なぜ、少女が拘束されて転がされている?それに、この魔力量は……」


王太子殿下の登場でしたか。

サンエーリ様のお兄様と初対面でコレか……イマイチな出会いに申し訳なさでいっぱいになる。

その間も会話は続いているようなので、私はハーツを宥める事にする。


「ハーツ、私は大丈夫だから。治癒魔法がなくても、二・三日で良くなるよ?」


「でもっ!ティーちゃんは、自分をもう少し大切にしてよ!女の子なのよ!」


私を起こしながら、ハーツは唇を尖らせる。

宥めながらも、王太子殿下の方の話もちゃんと聞いておく。

駄犬騎士はふんぞり反っていたのが嘘のように、膝を折り頭を下げている。


「僭越ながら申し上げます!この愚民は、第二王子の知り合いだと狂言し、更には自分達を侮辱したのは許されざる事実にございます!」


「サンの知り合い……髪の色に瞳の色、もしかしてディアティア王女か?」


回り込んで近くに片膝をついた王太子殿下に、縛られたままだけど私は一応頭を下げて微笑もうとして失敗した。

唇の端が切れているらしくて、口角を上げると痛い。

どうりで、口の中が鉄くさいはずだ。


「こんな格好でごめんなさい。私はセレーネ王国、第一王女・ディアティア・セレー」


「ティアッ!!」

「ティア、大丈夫……じゃ、ないな……」


私の自己紹介を遮ったのは、サンエーリ様とリーフ様。

私の様子を見て、みるみる室内温度が下がっています。

膝をついてる王太子殿下と、手足を拘束されて…しまいには、頬の色が変わりつつある私。

さて、どうやって説明すればいいかな…?


「ティア、誰に何を言われて、何をされたの?」


真剣なサンエーリ様に、私はどうしたもんかと言葉に悩む。

ハーツの扱いには若干イラッときたけど、私が平凡陳腐な顔立ちなのも、王女だと信じられないのも仕方ないかな~なんて思ったり。

何より縛られたままなのは、ちょっと助けて欲しいかも。


「この駄犬が、ティーちゃんを平凡陳腐な顔立ちで姫な訳ないって!ティーがお姫様なら、騎士辞めるっていってたわ!あ、ティーちゃんを殴ったのもソイツよ!」


まくし立てる様に、ハーツが詳細をぶちまけていく。

ハーツの言葉を受け取ったサンエーリ様の温度が、更に急降下する。

王太子殿下は、丁寧に私の縄をはずしてくれる。


「すまなかった…」


「いえ、ありがとうございました」


足首の縄の時に、視線を若干反らしながら優しく外してくれた。

触れる手はどこか、サンエーリ様に似ている気がする。

乱暴に動かされて乱れた髪を、王太子殿下は柔らかく撫でて直してくれた。


「そ、そんなはずない!セレーネ王国の姫は、可憐な美少女だと……」


うん、きっとそれはローズニアの事だね。

中身はあれだけど、容姿・美貌だけは完璧に可憐な美少女に当てはまる。

室内温度がまた、下がっていきますよ。

そうだよね。ローズニアには迷惑と鬱陶しさしか、感じてないって言ってたから。

極寒に近い空間に、駄犬騎士の顔は青を通り超して白。

ガタガタ足が震えているのは、恐怖からか冷たさからか?

冷静じゃないのは確かだよね。

だって、敬語を使いこなせてないし。


「ティア、少し待っていてね?兄上、少しこの脳筋と話してもいいですか?」


「かまわん。存分に教育的指導するといい。少女を殴る人間は、俺の近衛には必要ない」


「ノル様、少しふるいにかけた方がいいかもしれませんね?本当に駄犬以下ですから」


ひょいと視線が高くなったかと思うと、優しい動作で王太子殿下が椅子に座らしてくれた。

片手で私を持ち上げて、顔の高さが変わらなくなると分かる…王太子殿下は、シリーさんに似ていて先生にも似ている。


「少しだけ、いい子で待っててくれ。賢者殿も、座って待つといい」


「あら、私にお気遣いは無用よ☆私の場所は、いつもティーちゃんの後ろですもの♪」


「そうか」


ふっと、一瞬瞳を細めて微笑んだ王太子殿下は、穏やかで温かかった。

スルッと、心に入ってくる温かさ。


「脳筋君のお家は、他国の王族のお姫様にも勝てるんだ?」


「辞めてくれよ。やっと二人で口説き落として、婚約までこぎつけたのに…大切なお姫様を、拳で殴った?殺されたいのか?」


これは放置でいいの?

なんか空気怪しくなってきたよ。

ソワソワするのは私だけなのか、サンエーリ様もリーフ様も笑顔を顔に張り付けている。

かなり怒っている?

うん、かなり怖いね。


「いいえ!も、申し訳ありません!責任は自分だけで、家族は関係ありません!」


「やっぱり脳筋だね。君の行動は、全て家に直結するに決まっているでしょ?少し考えれば、分かりそうなもんだけどね」


「関係ないと言うなら、家族と縁を切るしかないだろうな~。他国の王族で、サンと俺の婚約者を殴った責任は……なぁ?」


「あ、あの……申し訳ありません!」


二人の威圧感半端ない。

私じゃないのに、謝りたくなってしまう感覚。

だからか、ちょっとだけ参加させてね。


「あの、サンエーリ様・リーフ様。私が平凡陳腐なのも、珍獣ですから致し方ないわけで……私はハーツに謝ってもらえたら、それでいいですよ?」


ハーツに暴言は許せないから、それだけは謝ってもらう!

他は、まぁ仕方ないよね。

なんたって私だし。

珍獣姫は伊達じゃないよ。


「ダメだよ、ティア。婚約者を傷つけられて笑って許せる程、私達は人間出来てないからね」


「それに、駄犬には躾が必要なんだ。本人のためにも、その家族のためにも」


「上に立つ者が教えるのも、大切は事。ディアティア姫には、見苦しいモノを見せている事の謝罪は後ほど届けよう」


「謝罪は必要ないです!本当に気持ちだけで、十分ですから!」


王太子殿下の参戦で、私はどうしようかな~と考えてしまう。

まだ婚約者として披露されていない私が、仲裁に入るのはマズイよね?

でも……放置も出来ない。


「あの、では……挽回の機会を与えてあげては、いかがでしょうか?もちろん、今回の事は罰がなしでは、示しがつないので、一発殴らせてもらいます」


どうですか~?

これ以上の解決策は、思い浮かばないよ。

懇願するように、サンエーリ様とリーフ様を見る。

しばし、三人で睨めっこ。


「…分かったよ。かなり斬新奇抜な意見だけど、被害者はティアだし一発と、青の宮と緑の宮の出入り禁止で勘弁しようか」


「左遷ですか?!やっと近衛騎士になれたのに……」


「それだけで済んで、ディアティア姫に感謝するんだな。家族にまで被害が行かなかった事は、異例中の異例だからな」


王太子殿下の言葉に、駄犬騎士は肩をガックリ落として俯いてしまう。

これ以上のフォローは、無理だから諦めてもらおう。

ハーツが背後からウキウキした様子で、ひょっこり私の横に来て


「殴るのは、是非・私でお願い!ティーちゃんが素手で殴って、手を怪我したら大変だから!」


ハーツの表情からして、仕留める気満々。

本気を感じ取ったのか、駄犬騎士の表情はみるみるひきつる。

本気と書いてガチと読む。


「いいだろう。賢者殿にお任せしよう。ディアティア姫も、それで良いだろうか?」


「え、あ、はい。皆さんがよろしければ?」


それ以外の言葉を言えないよ。

ハーツはガチだし、三人はペナルティーは必要だって言うし。

ハーツは、笑顔で胸ぐらを掴むと……強化したであろう拳で左頬にくらわせる。

ゴツッと、鈍い音がして吹っ飛ぶ。


「目が覚めたかしら?私の主に感謝しなさい。これで済んだんだから!」


「……っ、はい……申し訳ありません」


その場で膝をついて頭を下げる駄犬騎士と、意気揚々と頷くハーツ。


「本当にティアは、お人好しだね。他人に優し過ぎるぐらいに、優しいからね」


「まぁ、そこに惚れたからな~。惚れた方の負けってことか」


肩を竦めるサンエーリ様とリーフ様に、私は苦笑いを贈る。

迷惑かけてごめんね、と、心配してくれてありがとうを一緒に苦笑いに込める。


「彼を緑の騎士団長の所まで、連れていくように」


「ハッ!承知致しました!」


手の平を返した様に、私を縛るのに参加していた騎士二人は駄犬騎士を連れていく。

頑張れ、名も知らぬ駄犬騎士!

私がコッソリとエールを送っていると、正面にまた王太子殿下が膝をついて、私の頬に触れる。

ぽわぽわと温かい魔力を感じると、頬の痛みが引いていく。


「よし、頬は大丈夫だな。他に痛い場所はないか?」


「だ、大丈夫です!ありがとうございます!」


ブンブンと顔を振ってから、頭を下げて今一度状況を整理する。

なぜ、王太子殿下は初対面の私に、すぐに膝をついてしまうのですかね?!

サンエーリ様もリーフ様も、特には気にしていないみたいだけど。

私の中では、軽くパニックだよ?


「兄上、ティアがパニックになっているので、手加減してあげて下さい。彼女はルフールやヴィヴィじゃないのですよ?」


嬉しいそうに言うサンエーリ様に、王太子殿下は少し考えると


「サンやリーフの花嫁だ。私の義妹にはるんだ。庇護するのは当たり前だろ?なにしろ、義妹だからな」


私の頭におもむろに手を伸ばすと、軽く髪を撫でる。


「兄上はそう言う人でしたね。ティアは兄上の好ましい性格してますから」


「まぁ、ティアには甘えられる場所が多い方が、いい方向に行くだろうしな」


「俺の事はノルと呼ぶがいい。ノルレッテでは、地味に長いからな」


なんて無茶ぶりを言ってくださる王太子殿下。

呼び捨てになんて、出来るわけなくて……サンエーリ様とリーフ様に助けを求める。


「じゃ、私とお揃いにしようか?ノル兄上……違うな~」


「あの、えーと……ノルお兄様?」


これ以上の譲歩は無理だと、王太子殿下を見ると柔らかい微笑みとぶつかる。

眼福であります!


「ディアティア姫では余所余所しいから、俺もティアと呼んでもいいか?」


「はい!お好きな様に!」


慌てる私をよそに、サンエーリ様とリーフ様の会話が聞こえる。


「う~ん、初対面で兄上まで味方につけるなんて、さすがティアだよね」


「似た者同士なのが、無意識にわかっあんじゃないか?」


好きなように繰り広げられる会話に、私は慌てながらも王太子殿下改めて、ノルお兄様に頭を撫でられ続けた。

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