↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生珍獣王女奮闘記  作者: 千里
PR
35/66

No.35 捜索は甘い香りに包まれて


お兄様の執務室に行くと、珍しく驚いた顔で出迎えられた。


「どうしたの?まぁ、いいや。入ってからゆっくり聞くよ」


「ありがとうございます」


応接用の椅子にはサンエーリ様とリーフ様が、やっぱり驚いた顔で私を見ていた。

お兄様にすすめられた椅子に腰を下ろして、私は三人の顔を見て少し笑ってしまう。

見目麗しい三人が、同じ表情をしているんだもの。

来る間、悩んでた事が少しだけ晴れた気がした。


「指輪を探そうと思って…サンエーリ様の近くにいた方が、サーチしやすいかな~と思って来ました」


私の言葉にサンエーリ様とリーフ様は、ふーっと長い息を吐き出す。


「良かった…断りの返事かと思った…。」


「あぁ、さすがに即効で断られたら、立ち直れないぞ」


肩を撫で下ろす二人に、私は慌てて首を

振る。


「断るだなんて…ちゃんと考えてますから!」


口走った言葉の意味に、口を押さえて赤くなる。

今、何を言っているんだろう。


「考えないで、イエスの返事だけで良いんだよ?」


「早く俺達に落ちろよ。優しく大切にするから」


二人から色気が、だだ漏れしてます。

それじゃなくても、綺麗で優美な二人の色気に流されてしまいそうになってしまいそうなのを、グッと堪える。

危ない。危険。

惚れた弱味で流されるな私!

フラグが何処に隠されているのか分からないのに。


「あの!今は本題に入りいんですけど!」


しどろもどろになりながらも、精一杯の理性をかき集めて、指輪の捜索をお願いする。

サンエーリ様から、チッと舌打ちが聞こえた気がしたけど気のせいだよね?


「サーチはすぐにでも出来るのかい?」


お兄様の問いかけに、私は頷いて気合いを入れ直す。

表情は固くなっているかもしれないけど、一応笑顔を浮かべているはず。


「多分…大丈夫だと思います」


自分自身に言い聞かす。

大丈夫、大丈夫。

何時も通りにすれば出来るはず。

こんなに緊張したのは、いつ以来だろう?

手をギュッと握って、深呼吸を何回か繰り返す。

何度目かの深呼吸をした時、手が温かい体温に包まれた。


「気負わないで。私で役に立つかは分からないけど、手を握るぐらいは出来るよ?」


「頼んだのはこっちだし、今失敗しても何度でも付き合うぜ?」


右手にサンエーリ様、左手にリーフ様が手を包み込む様に握ってくれた。

胸が温かいモノで満たされて、フッと軽くなる気がした。


「ありがとうございます…。頑張ってみますね!」


心からのお礼を言って、目を閉じて集中する。

サーチと心で呟いて、集中していると頭の中にある光景が浮かぶ。

華美な装飾品で溢れた室内。

チラリと見えた、金色の髪に深紅のドレスを身に纏った人物。

何かに阻まれた様に、そこでブチッと光景は途切れてしまった。


「何が見えたんだい?」


お兄様の問い掛けに、私は躊躇いがに見たままを伝える。


「華美な室内に、金色の髪に深紅のドレスがチラッと…」


「やっぱり深紅のドレスか…」


お兄様はあらかじめ予想していたように、うんざり顔で呟く。

私も同意見で、どんどん小説のストーリーから外れている気がする。

しかも、よからぬ方向に。


「深紅のドレスって事は、女性が持っているのかな?」


「この国で顔見知りになった女性なんて、数える程しかいないよな?」


私とお兄様の反応を気にしつつも、自分達の疑問を口にする。

リーフ様の疑問はもっともだ。

サンエーリ様は、国が違えど大国の王子様。

貴族だって、おいそれと言葉を交わすことなんて出来ない。

そうなると、自ずと答えは導き出される。

私やお兄様にとっては、もっとも厄介な 方向に。

本当に勘弁してほしい。

それはお兄様も一緒のようで、眉間に指を当ててうめく。


「これは、思った以上に厄介だよ」


「そうですね…」


私がサーチしただけで、証拠も根拠もないに等しい。

どうやって証拠を掴むか。

隠されてしまえば、証拠なしだと踏み込めない。

でも、誰が隠し持っているかは確信が持てた。

まぁ、フィールの話で予想はしてたけど。


「深紅のドレスの女性とは、まさか…」


「ローズニア姫か…」


私とお兄様は、何とも言えない表情を浮かべてしまう。

そんな私とお兄様の反応に、二人も確信したらしく難しい顔で黙り込む。

私もどうしたら証拠を掴めるか、掴むためにどう動くべきか考える。

一番最初に、重い口を開いたのはお兄様。


「あまり使いたくない手だけど、ティアとサン、リーフの婚約発表しちゃおうか?」


「えっ?お兄様、全く意味が分かりません」


今、なぜそんな話になったの?

不明すぎて、私の視線はお兄様をガン見状態。


「あー…あの人なら引っ掛かるかもね」


「あぁ、かもな~。自分の欲望だけに突っ張りそうだしな」


お兄様の意図が分かったのか、サンエーリ様もリーフ様も納得顔で頷いている。

分からないの私だけ?!

困惑しかない私に、お兄様が簡単に説明してくれる。


「あのローズニアが、ティアの婚約を喜ぶと思う?まして、相手がサンとリーフだよ?」


「喜ぶところか、積極的に邪魔しそうですね…」


考えるまでもなく、大国と美しい王子様に執着しているローズニアは怒り狂うだろう。

なぜ、自分じゃないのかと。

あぁ、だからか!


「だからですか…煽るのですね?」


「そう。人間怒りが爆発すると、簡単にボロ出すからね」


それは経験上知っている。

怒りや憤りは、人の本質を見抜くのには打ってつけだ。

だから、お兄様はローズニアの尻尾を掴むべく、怒りを誘おうとしているのだろう。

でも、それは私も墓穴を掘る気がする。

仮にとしても、大国の王子様と公爵家の子息と珍獣と言われている私との婚約は…釣り合いが取れないんじゃない?

冷静に考えれば、美男と珍獣。

考えれば考えるほど、怖気ついてしまいそうになって、冷や汗が流れる。


「私とサンエーリ様達では、釣り合いが取れません!他のご令嬢を」


そんな私の手の甲にキスをすると、花が散らんばかりの頬笑みが返ってくる。

急に顔が熱くなる。


「国なんて関係なく、私達はティアが欲しいよ。釣り合いで言うなら、ティアは姫でしょ?」


「全部ひっくるめて、ティアに惚れた。噂なんかに尻込みするぐらいなら、最初から求婚しない」


「でも…」


いざとなると、一歩を踏み出せない。

好意を寄せられる事に慣れず、フラグを気にしつつ快適な老後だけを目標にしてきた私。

それでいいと思ってたのに…。

好意は嬉しい、でも怖い。

降って湧いた様な話に、頭も心もついていかない。

こんなに私は弱かっただろうか?

俯いて考えていると、頭をサラサラ撫でられて顔を上げる。


「ティアは好意に慣れていないから、戸惑うのも仕方ないけど…サンもリーフも信頼出来る人間なのは、分かるよね

?」


「…はい。信じられないのは自分なんです」


侮蔑には慣れているし、そんな事でへこむほど繊細ではない。

珍獣だろうが、呪われ姫だろが気にした事はなかった。

だけど…私と関わる事で、サンエーリ様達に迷惑がかかるのが怖い。

きっと淡い恋心があるから、余計に考えてしまう。


「私達を信じて。ティアの心も身体も守ってみせるから」


「だから、安心して返事を聞かせて欲しい」


真摯的な眼差しから、私は目を反らせなくなってしまう。

胸の鼓動が激しくなって。

でも、頭は冷静にフラグが立つぞ、と警鐘をならす。


「あの…、お二人は後悔しませんか?」


なのに、口から出た言葉はこんな言葉で。

自分自身で、頭を抱えたくなってしまう。

何を言っているだと思う思考と、心の底にある淡い気持ちがグルグル回って気持ち悪くなる。

赤から青に変わった私の顔色を見て、サンエーリ様が安心させる様に笑う。


「きっと、ここでティアの手を離す方が後悔するよ。私は初めて女性、ティアに惹かれたんだ。誰より優しくたくましい君に」


「呪われた身の俺達を、ティアはそのまま受け止めてくれた。国でも身分でもなく、それがどんなに希有な事か…真っ直ぐ生きるティアとなら、俺達も幸せになれる気がする」


誠実で真剣な返答に、私は混乱しながらも一つの結論に行き着く。

死亡フラグは怖い。

でも、真摯に誠実な答えを貰って、根深く日本人の性を忘れられずにいる私にノーと言う言葉は、なかなか難しい。

日本人は、比較的ノーが苦手な生き物だ。

逃げ道を探せぞ、外堀から埋められているきがする。

ローズニアの罠のためだと思うと、胸がズキンッと傷むけど。


「ここまで言われてもティアは不安?」


「…はい。過大評価すぎて…私はそんな人間じゃありません」


自分のために、薬師や冒険者になった。

人に優しくしのは、放っておいてモヤモヤするのが嫌だったから。

全部は自分のため。

呪いの話しだって、あらかじめ前世で知っていたから気にならなかっただけで…。


「不安は私達が解消するから…私達のお嫁さんになってくれない?」


「一緒に幸せになろうぜ?」


ローズニアの事もフラグも怖いのに、心が動かされてしまう。

心の中で、もう意地を張るのは無理じゃないか…。

どんな理由を並べても、心の片隅で喜んでいる私もいて。

でも、ローズニアを誘き出す罠なのを、心に刻み込む。

口説き文句も、きっと罠を強固にするためのはずだ。


「…ローズニアの尻尾を掴むためですよね、私でよけれ」


「ローズニア姫はついでだよ。私は一人の男して、ティアに惹かれて愛したんだよ」


「あぁ、ティアはあの求婚を忘れたのか?忘れたなら何度でも言う。どうしようもない位に惹かれてる。ティア、愛してるぜ」


私の言葉に被せて、サンエーリ様とリーフ様が砂は気レベルの甘い言葉に、ボンッと湯だった様に顔に熱が溜まる。

まさか、こんな形で再度求婚されるなんて思ってもみなかった私は、言葉に出来ずに赤面するしかない。


「ティア、心のままに答えて良いんだよ?」


お兄様に促されて、私は細かく考えるのを放棄する。

ここまで言われてしまえば降参だ。

確かにある、淡い恋心がむくむくと育っている事から、目を背けられない。

小さく深呼吸して、サンエーリ様とリーフ様に向き直ると、今出来る精一杯の笑顔を向ける。


「珍獣で魔女で呪われ姫で、悪い噂も絶えない私で良いですか?」


私の質問に、サンエーリ様もリーフも一瞬目を見開いた後。

背景に数々の満開の花達が見えた。

サンエーリ様とリーフ様は、私の前に膝を折ると、私の手に額を当てて呟く。


「ティアに出会えた事に、神様に感謝する」


「不安も喜びも、これからは共あることを誓う」


二人の言葉は、どこまでも慈愛に満ちている。

バクバクする心臓をもて余しながら 、何とか頷く。

こうして、私に二人の婚約者が出来ました。

これから、どうなるか分からないけど、二人が幸せであって欲しいと願った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。