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転生珍獣王女奮闘記  作者: 千里
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No.34 突然の来訪者


私は顔をクッションに埋めたまま、先程の事が頭に何度もリプレイされいる。

あそこでプロポーズされるなんて。

しかも、お兄様達の目の前で。


「ティーちゃん、良かったじゃない!」


「そうですよ。あのお二人なら、ティア様を幸せにしてくれそうですし」


「私は何処までもティア様にお供致します」


ハーツにユーリ、ジェニーまでも賛成したように言い出す。

私はいきなりの展開に、ドキドキしっぱなしで言葉が出てこなかった。

色々プラスしても、恋愛偏差値の低い私には、上手い切り返しなんて分からない。

ただ、握られていた手が温かくて。

視線が優しすぎて。

それを恥ずかしいし嬉しいと思う私もいて。

でも、死亡フラグが近づいた気がして怖くなって。


「どーしよう…!」


前世合わせてアラフォーの私が、恋にとまどうなんて想像してなかったよ!

神様、ストーリー変わったにしても、変わりすぎやしませんか!?

ドキドキしたり嬉しかったり、恥ずかしかったり、怖くなったり…一気に感情がごちゃ混ぜだよ。

グルグルと思考がめぐって、クッションに埋めたままうめく私。

そこに突然、窓が開いてフットワーク軽く誰かが入ってきた。

ジェニーがレイピアに手をかける。

ハーツもユーリも警戒して、一瞬にしてピリッとした空気に変わる。


「やぁ、俺の姫君。困っているようだね?」


空気をものともせずに、笑顔を浮かべているのは紅猫ことハルクさん。

窓から登場なんて、非常に紅猫らしい。


「入室はドアからお願いします、ハルクさん」


「だって面倒だろ?それで、姫君はなんて返事をするんだい?」


サッとソファーに座って、何事もなかった様に問いかけるハルクさん。

警戒していた三人には、手で大丈夫だと合図を送る。


「どこから聞いていたんですか?」


仕方なく私もソファーに腰を下ろして質問する。

何となく聞かなくても、答えは分かっているけど。


「王子様が入ってきた時から?」


「全部じゃないですかっ!」


羞恥心から吠える様に言うと、ハルクさんは笑いながら


「入ろうとしたら、聞こえてきたんだよ?邪魔したら悪いから待ってたんだけど」


ケロッと答えたハルクさん。

私は羞恥心で頭を抱える。

お兄様とハーツ達のまえでも、恥ずかしさのメーター振り切っているのに!

ハルクさんにまで、盗み聞きされてたなんて…恥ずかしさ倍増。

気遣いじゃなくて、面白がっているんだ。


「まだ決められていません!」


「へぇ~、見るからに真っ赤になってたけどね?」


「それは…!」


言い訳が思い浮かばない。

頭のいい紅猫だから、適当な言い訳や誤魔化しなんて通用しないと思うし。

言葉を探そうにも、自分の事なのに一番よく分かってないのが私で。

死亡フラグを避けたいのに、避けきれてないのが現状。

ハルクさんから視線を反らして考えていると、彼がパチッと手を叩いた。


「ねぇ、俺を飼ってみない?」


「…はぁ??」


分けが分からなくてきょとんとする私に、ハルクさんは笑顔のままツラツラと言葉を並べる。


「俺ってお買い得だよ?表から裏まで何でもこなすし、特にお掃除は得意だよ?なんなら、結婚でもいいよ?あー、でも王子様方にプロポーズされてたよね~俺じゃ勝てないか~」


「なぜ?!しかも、軽いし!」


なんのお掃除だかは、聞いてはいけないような気がするからスルー。

クレッシェンド家と聞けば、想像は容易いし。

あー…だから、飼うなんだ!

クレッシェンド家は、主は己で決めるルールがあったけ。

主を持つか持たないかは、自分で決める。

確か小説では、半々だと書いてあった気がする。

でも、小説では主を探すなんてシーンは無かった。

またイレギュラーだよ。

神様、私をどうしたいんだよ!


「だって姫君は面白いし、人生一度だよ?楽しまなきゃ損でしょ?」


「私の意見は?!」


「じゃ、俺も筆頭に入れてよ?魔導師・騎士・執事がいるから…俺は護衛で!どう?楽しそうでしょ?」


「それだけで、決めてしまうのですか?!」


「楽しくなきゃ!刺激ない人生なんてつまらないよ?俺は楽しいに、時間を使いたい!」


紅猫の気まぐれさは、小説の倍は斜め上に行ってしまったようだ。

小説では影でヒロインを守る、騎士のようなポジションだったのに…今は自分に素直なチャラい人にしか見えない。

呆れた顔をしている私に、背後から冷たい空気が漂ってくる。


「筆頭は間に合ってます。お帰りはあちらのドアからお願いします」


笑顔なのに目が笑っていないユーリ。

冷たい空気を放っているユーリに、ハルクさんは怯む事なく肩を竦めて見せる。


「俺は姫君に聞いているんだよ?執事君には聞いてないし」


「貴方はクレッシェンド家の方でしょ!怪しい人を、ティア様の側に置けません!」


「怪しいのは否定しないけど、主を持てば忠実なのも執事君なら知っているでしょ~?」


「でも僕は反対です!」


「便利なのに?姫君には、マイナスにならないと思うけど?」


険しい顔で反対するユーリと、言葉遊びしているような楽しげなハルクさん。

珍しく語気強めなユーリに、ハーツが肩を叩いて宥める。


「ユーリ落ち着きなさいな。気持ちは分からなくもないけど、決めるのはティーちゃんなのよ?」


「しかし!」


食い下がるユーリに、ハーツは苦笑を浮かべる。


「ティーちゃんは、臣下を蔑ろには絶対しないのは分かっているでしょ?」


その言葉にユーリが、唇を噛み締める。

やり取りを見ていたハルクさんは、やっぱり楽しげに会話を聞いている。


「姫君の答えは?」


イエスともノーとも言い難い心境に、苦し紛れの答えを口にする。

ノーと言っても、紅猫は簡単には引き下がらない気がするし。

何よりこんな事を冗談で言うなんて、紅猫らしくない。

気まぐれでも、信念を持っているのが紅猫だと思うから。


「保留で!」


秘技・先伸ばしの術。

最近こればっかりだよね私。

考えなきゃいけない事が、いっぱいあるのにまとまらない。

自分の事ながら、焦れったくなってくる。

私の答えにハルクさんは口笛をふくと、にっこり頬笑む。


「やっぱ好きだわ~姫君」


「はぁ!?」


「ちゃんと考えてくれようとしている。真っ直ぐで変な所で不器用なのもいいね~♪」


「そりゃ~考えますよ!適当な言い訳は通用しないでしょ?」


私の返答に更に笑みを深めて、ハルクさんは機嫌良さそうに頷く。


「じゃ、いい返事期待してるよ?」


「確約は出来ませんが、考えてみますから」


「今はそれで良いよ。でも、きっと俺が必要になるよ?」


予言めいた意味深な言葉を残して、サッと立ち上る。


「じゃ、姫君。いい返事を期待してるよ?」


また窓に移動すると、ヒョイっと窓枠足をかけて去って行った。

言いたい事だけ言って、 本当にズルい紅猫だ。

紅猫の策略にハマった感が否めないけど

、返事をしてしまった以上は考えないといけない。

指輪の捜索に、プロポーズの返事。

紅猫の話。

どれから手をつけたらいいものやら…。

パンクしそうな頭を振ってから、大きく息を吐く。


「やれる事から片付ける!」


くよくよ悩んで立ち止まっているなんて、私らしくない。

今までだって、何とかなってきたし、してきたんだから!

ギュッと拳を握りしめて、気持ちを切り替えた。

まずは、指輪の行方からだ。

国を傾ける訳にはいかないのだから、優先事項だよね。


「サンエーリ様に会いに行ってくる!」


サーチが何処まで出来るか分からないけど、当たって砕けろ!

砕けちゃダメだけど、頑張ってみよう。

そう決めて踏み出す。

目指すは、お兄様の執務室。


「行ってらっしゃい~♪」


「行ってらっしゃいませ」

「行ってらっしゃいませ」


ハーツとユーリ、ジェニーに見送られて部屋を出る。

すぐに転移魔法を使おうとして、やめる事にした。

たまには、考えながら行くのもいいよね。

再度歩き出した私の頭は、死亡フラグの回避方法の事でいっぱいだった。

好きだから困る、困るけど好き。

見えない答えを探しながら、お兄様の部屋へ足を向けた。



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