No.29 迷走する気持ち
あの後、ナルサス様に返事を出すとすぐに訪問があった。
ただ、一緒にいるメンバーに不満があるのか、綺麗な顔にはしわが寄っている。
特に眉間の辺りに。
「なぜ、殿下までいらっしゃるんですか?」
「今日は暇だし。僕の事は気にしないで」
「では、彼等は?」
「まだ、万全じゃないからね。付き添いだよ」
更に顔をしかめるナルサス様。
ご機嫌は斜めらしい。
「見舞いの品に相応しいかわからないが」
差し出されたのは、可愛くラッピングされた瓶。
「体力落ちただろうから、回復薬で味も悪くない」
真面目に言い切るナルサス様に、私は吹き出してしまう。
実用的かつ真面目なナルサス様らしくて。
「何かおかしかったか?」
「いえ、ありがとうございます。使わしてもらいますね」
「早く完治させて、薬草でも取りにいこう」
「後は怠さだけなんですけどね」
「油断大敵なのは、薬師の君が一番良く知っているはずだが?」
「うっ、そうですね。気をつけます」
「いや、別に小言を言いに来たわけじゃなくて」
私が少し詰まると、ナルサス様は咳払いをして気を取り直す。
小説通り真面目なナルサス様。
ストーリーが変わっても、変わらない事があるんだって実感した。
「その時は是非とも誘って欲しいよね」
「あぁ。他人が一緒にいて、恋人としては穏やかではいられないからな」
恋人と言う言葉に顔が熱くなる。
゛一緒に幸せになろうね゛がリプレイされてドキドキが最高潮になる。
「顔が赤いようだが、また熱がでたのではないか?」
「大丈夫です!気にしないで下さい!」
「恋人の私達には隠し事はなしだよ」
「本当に大丈夫ですから!えぇ、気にしないで」
「恋人なんだから嘘はダメだぞ?」
どんな拷問ですか!
好きだと思われる人から恋人連呼とかどんな反応すればいいのか分かりません。
「本当に恋人なのか?」
「そうだと言っているだろ?」
「王子様には聞いてない」
嫌味たらしく゛王子様゛と言われたサンエーリ様は、小さく舌打ちをする。
「えーと…」
「あの時は許されて、今はダメなのか?」
「いえ、そんなつもりは…!」
まるで悪女の様な言われ方に、私の方が躊躇ってしまう。
それに微笑んだのは、お兄様。
「じゃ、訂正の必要なしだね」
「必要なしだね。私としては、次のステップに進みたいくらいなんだけど」
「そうだな。婚約者になるためには、フェリス王の許可が必要だよな」
「婚約者?!」
「婚約者だと?!」
驚いたのは私とナルサス様。
特に告白どころか、恋人らしい事もしてないのに、婚約?!
「何を驚いているの?」
コテンッと首を傾けるサンエーリ様。
もう、私をどうしたいのだろうか?
驚きを通り越して、言葉にならない。
「コラッ、ティアの意見を無視しちゃダメだっていったろ?僕は賛成だけど」
「お兄様まで!」
「冗談なら質が悪いな」
「冗談じゃなくて本気だぞ?」
ナルサス様の言葉に被せる様に、リーフ様が言う。
お兄様とサンエーリ様は、頷いている。
「返事は急がないから大丈夫だよ」
ドキドキしっぱなしの私は、勢い良く頷く。
今すぐ返事をしろと言われないだけマシなのかもしれない。
「では、俺も申し込みしてみよう」
「えっ?」
「決めるのは君だろ?まだ完璧には決まってないのだし、まだチャンスはあるはずだ」
「そうだよ。決めるのはティアだからね」
「では、文章にして陛下に申し出してみるとしよう。」
決意したようなナルサス様に、私はなすすべなく黙った。
そう宣言すると、ナルサス様は
「早く完治さるように」
そう言って帰って行った。
混乱だけを残して、去って行った。
私はとりあえず、問題を早伸ばしにして落ち着こと深呼吸をした。




