No.30 秘密のお茶会
<リリースside>
カチャッとカップと皿がぶつかる音で、お茶会は開かれた。
メイドもいない二人だけの部屋に、やけに音が響く。
「俺からの条件は一つ。面白いか面白くないか」
「その基準は?」
「俺次第だよ。面白いと思えば、契約なしで生かすし、面白くない場合は遂行する」
ワタクシの目の前で、堂々としているのは…ハルク・クレッシェンド。
赤毛の髪の毛が際立つ美青年だ。
表側普通の伯爵家の青年だけど、裏方も担っているのがクレッシェンド家。
気分屋なのがたまに傷だけれども、腕は確かであるのは、一部には有名な話し。
「第一王女を暗殺すればいいんでしょ?」
「えぇ、そうよ。アレは生かしておけないのよ」
「我が子なのに、怖いね~。まぁ、そんな人がいないと、商売にならないんだどね」
「報酬は確認後に渡すので問題なしでしょ?」
「もちろん。遂行するかは俺の気分次第だし、前金なんてもらったら動きにくくなるしね」
肩を竦めるハルクは、王妃である私の前でもふてぶてしいくらいに自分を貫いている。
それでも我慢するのは、アレが毒で寝込んだ程度だったから。
誤算だったのは、ディルとサンエーリ様が一緒にいた事。
現在、王太子と王子暗殺未遂の捜査がおこなわれている。
ワタクシの場所までは捜査は届かないはず。
「どんな姫君なのか楽しみだな」
「規格外。薬師をする王女は必要ないの。王女とは気品と気高さ美しさがなければダメなのよ」
アレは気品もなければ美しさもない。
いくら陛下や周りが認めようとも、私は認めない。
アレはローズニアの邪魔をされては困るのよ。
美しい私の可愛い子。
あの子にこそ、大国の嫁入りが相応しいの。
「美しさね…」
「陛下とワタクシの子は、美しいのは当たり前のはずだったのに!」
陛下も美しいし王太子のディルだって、ワタクシの子に相応しく美しく成長したのに。
アレを見た時の衝撃は、今でも覚えているわ。
髪の色は陛下で目の色は前王様に似たのに、顔の造形は誰とも似ていない平凡さ。
絶望でしたわ。
だから余計に、次に産まれてきたローズニアが可愛くて仕方なかったの。
金色の髪も紅い目もワタクシ譲り。
美しく成長していくローズニアに、ワタクシは癒されてきた。
「大変だね~王族も。俺には全く理解出来ないけど」
「国の顔が美しくなくて、どうするのかしら。民に愛されてこその王族ですのよ?」
「それが美しさ?」
「当たり前ですわ!美しさを前にすれば、全てが膝を折りますわ」
「そんなもんかね…まぁ、いいや。会ってみれば分かるし。気分次第で決めるけど、もし乗らなくても他言無用。これはクレッシェンド家の規律だから安心しといて」
グッと冷めた紅茶を飲み干すと、すぐに立ち上がって優美な動作で一礼する。
「では、王妃様。ごきげんよう」
そのまま振り返りもせずに、窓へと向かって消える。
猫さながらの動作に、口角が上がる。
気分次第にせよ、暗殺の依頼は遂行出来た。
アレは平凡な顔立ちだから、もしもなんてないはず。
後は彼に任せてしまえばいい。
プロだろうから、ワタクシが依頼したとはバレないはず。
ワタクシはメイドを呼ぶ鈴を鳴らしなが、高揚感に酔しれた。
ワタクシの願いが叶うと信じて。




