No.27 これは恋ですか?
意識がフワッと浮遊した気がして、目を開く。
この微睡んだ感じが懐かしい気がする。
あの時には、美少年が目の前にいて微笑んでいた。
あれはあれで衝撃的だった。
そして、今回は…
「うん、熱もだいぶ下がったみたいだね」
「まだ寝てろよ?」
麗しい二人に囲まれていました。
サンエーリ様とリーフ様が、当たり前の様にいらっしゃいます。
あれ?おかしいぞ、ここは私の寝室で間違いない。
なのに、お二人がいる。
慌てて起き上がる。
「あの、どうして…?」
「毒に当たったの忘れたの?」
「いえ、それは覚えてるよ?」
「じゃ、どーした?そんな慌てて」
これが慌てずに、何に慌てれば良いんですか!
どうして、そんなに平然としていられるのかが知りたい。
一応、未婚の乙女の部屋になぜいるんですか!
「やぁ、起きたかい?」
「お兄様っ!?」
なんとなく察してしまった。
お兄様が絡んでいるのを。
平然といる辺、お兄様らしいけど。
「初めて看病したけど、僕達にも出来るモノだね」
「あぁ、本当に。最初はどうしようかと思ったよ」
「まぁ、ティアが無事で良かったな」
看病されていたの?
驚きすぎて言葉に詰まる。
じゃ、あの唇の感触も現実で。
カァーと顔に熱が上がる。
今、ものすごくジタバタしたくなるのを、グッと耐えてパタンッとそのまま横になる。
「どうしたの?」
お兄様がニヤニヤしながら、聞いてくる辺質が悪い。
分かっているんだもの。
私の今の心境を。
嫌だとか嫌悪感がない事が問題なんだから。
むしろ、ドキドキしてどうしていいか分からないくらい。
「ちょっと二人にしてくれる?サンもリーフも昼食まだでしょ?」
「分かった。じゃ、サッと食べてくるよ」
二人が出ていくと、お兄様は私の額に手を乗せて頬笑む。
「今、最高に困っているでしょ?」
「うっ、お兄様には分かるのですか?」
「他人事はよく分かるよ。客観的に見れるからね!」
ハハっと笑うお兄様は、体制をそのままに悪戯ッ子の様な顔をして呟く。
「口移しされて嫌な気持ちにならないのも、ドキドキするのも答えは一つなんじゃないかな?」
「一つですか?」
「そう、恋だよ恋。答えはいつも一つなんだよ」
「コイ…鯉?……恋ですか?!」
そう言われてしまえば、納得出来てしまうふしがある。
口移しなんて、友達でもよっぽどの事がないとあり得ない。
今回はよっぽどだけど、迷いなく出来るのは……。
またボンッと顔が熱くなる。
「ねぇ?恋でしょ?」
「いや、でも…どっちがしたか分からないし」
「でも嫌悪感ないでしょ?」
駄々をこねる様に言う私の頭を撫でて、お兄様は頬笑みます。
「そうだとして、どんな顔して会えば良いんですか!」
「いつも通りで良いんじゃない?」
「それが分からないんですよ…しかも二人にドキドキしてる私って…」
人間としてどうなの?
二人にドキドキして、常識の範囲外で。
優しいサンエーリ様と穏やかなリーフ様。
ただ、確率的に高いのはサンエーリ様。
それでも落ちる前は曖昧で。
リーフ様にされていても、嫌悪感はない。
あるのは、変わらないドキドキだけ。
恋もままならないのに、その相手が二人だなんて想像していなかった。
だって将来は、違う国で気ままな悠々自適な老後を送るのが夢な訳で。
恋愛だって、緩やかな恋愛希望で。
「エメラル国なら問題ないでしょ?」
一妻多夫性だから問題ないけど、問題はそこではない。
私の常識が、迷走しそうで怖い。
今の段階で、もう迷子なんだから。
「大丈夫だよ?僕は応援するから!」
「余計に怖いです!」
「失礼しちゃうな~!お兄様を信頼しなさい」
「してますよ!でも、それとこれとは別問題なんです!」
「細かく考える事はないよ!お兄様は、ティアの幸せを願っているんだよ」
それは分かっているし、疑った事はない。
今お兄様が言った事だって、茶目っ気たっぷりに言っている本心だって知っている。
「幸せ……って難しいです」
「思うままに。今のままで良いんだよ」
「思うままに?」
「ティアは選ぶ自由を、許されているんだから」
王太子のお兄様の言葉が響く。
お兄様は選ぶんじゃなく、選ばされるのが運命だから。
同じような言葉でも、意味は全く異なる。
「お兄様は……」
恋をした事がありますか?と聞きかけて、私は飲み込んだ。
無神経過ぎると、愚かだと思ったから。
そんな私にお兄様は、小さく笑うと
「僕の初恋は、お嫁さんまでとっておくって決めているんだ」
「決めているんですか?」
「ドキドキはないかもだけど、穏やかに育む事出来るだろ?」
「はい。そうですね…お兄様なら出来ると思います」
「ティアも気持ち大切にしなよ?」
今の気持ちを大切に…恋愛経験の乏しい私に、私はどうすればいいのか?
お兄様に見つめられたまま考えていると、サンエーリ様とリーフ様が戻ってきた。
「やぁ、なんの話しだい?」
「いや、恋の話しについてだよ?」
「恋は落ちるモノで、愛は育むものだよね」
「えっ?」
悟りを開いた様な言葉に、私は疑問系で返してしまう。
「だから、ティア一緒に幸せになろう?」
「えっ?」
「三人で仲良くな?」
これは遠まわしの宣戦布告、告白に近くない?
そう思えば、また顔に熱が上がる。
「さぁ、もう少し寝ようか?」
「そうだな」
「えっ、今寝られる気がしないけど」
「じゃ、私達の国のお伽噺をしてあげよう。昔、昔ある国の麗しい王子様がいました」
規則正しいお腹の周りの振動に、目を閉じて聞くことにする。
話の内容は、エメラル国の初代王子様の話しなのがすぐに分かった。
王子様は重い病におかされており、治せるのはある魔女だけ。
王様は願いを一つだけ聞く代わりに、王子様を治して欲しいとお願いしました。
魔女は全力で、王子様に力を使いました
。
それと言うのも、魔女は王子様に恋心を持ってしまったのです。
完治した王子様に、喜んだ王様は願いを魔女に聞きました。
『王子様と結婚させて欲しい』
でも、王子様にはすでに愛する人がいました。
それを聞いた魔女は、嫉妬に狂い自分の人生をかけて、呪いを王様や王子様にかけてしました。
解けるのは、王子様の本当 の愛だけ。
呪いが解けると、宝石が無色透明の澄んだ色になると言われています。
その宝石を手にした王子様は、愛する
人と一生幸せに暮らしました。
「めでたし、めでたし。今私の宝石の色は何色になっているだろうね?」
私は返事をする前に、心地よい微睡みに落ちてしまう。
そのまま眠りに落ちる寸前、柔らかく温かい何かが頬と額に感じた。
幸せで何とも言えない心地が、胸を満たしていた。




