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転生珍獣王女奮闘記  作者: 千里
18/66

No.18 散歩ってこんなでしたか?


朝食をサラッと終わらせて、私は庭園を案内しています。

何故か、腰を抱かれ手を繋がれて。

どうしてこうなった?!

最初は普通に歩いていたのに、たまたまモーリとすれ違うあたりから、二人は今の状態になった。

悔しいそうだったモーリは、何もの言わずに睨むだけで終ったのは快挙。

その弊害は、今の状態だったりする。

またしてもなんのフラグ!?

混乱する私をよそに、二人は楽しげに微笑んでいる。

何がそんなに楽しいの?


「フフッ、あの騎士の顔は見ものだったね」


「あぁ、悔しそうだったな」


クスクス笑い出す二人に、私は混乱しまま尋ねてしまう。

この状態のままだと、噂になりかねない。


「あの、私なんかと噂になったら二人が大変じゃない?」


私にいい感情を持たない人が多いし、二人に迷惑になってしまうのも避けたい。

私は別に問題はないけど、二人はエメラル国の代表であり、重要な人物にあたる。

それが、平凡姫とか呪われ姫と噂になるのはいかがなものか。


「私は大歓迎だよ。むしろ、それでティアに寄り付く虫が減るなら、いくらでも壁になるよ」


「それに、゛なんて゛なんて言うなよ。俺達が好きでしている事なんだたら気にするな」


「気にしますよ!私は色々言われても平気ですけど、私に構って二人まで色々言われたら心が抉られますって」


本当に抉られる。

ハーツやユーリが変人扱いされるのでも、かなり切ないのに。

自分が原因でそんな事になれば、間違いなく落ち込んでしまう。

図太くても、自分にどうにも出来ない事で周囲に悪影響を及ぼすのは、一番こたえる。

人の噂や態度がもっともな例。

原因が自分だと分かっているから余計に。


「大丈夫だよ。私達は一緒にいる人間は、自分自身で選ぶ。それによってもたらされる責任も自身で背負えるから」


「根拠のない噂より、俺達は自分の目で確かめて自分で決める。ティアは、呪われている一族だと言われている俺達を避けるか?」


「それはないかな。感染する訳じゃないんだし、それを理由に避ける意味が分からない」


私が避けたい理由は、何時だって死亡フラグを避ける、もしくは折るため。

それ以外に、理由はない。

きっぱり告げると、キラキラ倍増の笑顔と、少し手と腰に力がこもる。

ただエスコートされているはずなのに、色気の大量発生によりピンク色の空気になっていないか不安しかない。

心臓も異様に早くなってしまうのは、仕方ないと思ってほしい。

ときめいた訳ではないと、自分に言い訳してみたり。


「ティアがいてくれて良かった」


「そうだな。ティアがティアでいてくれるのなら、俺達は俺達のままでいられる」


これは、反則だと思う。

眩し過ぎる笑顔とコメントに困ってしまう。

どう返せばいいのか、心臓が早鐘を打っていて上手く言葉が見つからない。

いつの間にか庭園に着いていたのに、気がつくのが遅れるくらいには焦っていたらしい。

綺麗な花に迎えられても、今はまだちょっと落ち着いていられない。


「私やリーフは呪われの血と言われているんだ」


「まぁ、実際呪われているしな」


「一応、少しだけ知っています」


私の知識は、前世の小説だけど。

視点がヒロインだったから、穴だらけの知識で申し訳ない。

愛を知らない王子が、ヒロインに惹かれて初めて呪いが解ける。

ヒロインが゛奇跡゛を起こせる、たった一人の人だったから。

何が奇跡かは、前世で知る前に死んでしまったから分からないけど。

詳しい詳細は、私には分からないままここにいる。

分かるのは、ヒロイン不在でストーリーの変化が始まっていること。


「だからティアみたいに普通に接してくれるのは、家族と公爵家の人間だけなんだ」


「うちも、男子は呪いの影響あるからな。祖父は前弟王だし、現に俺も兄上も恋やら愛はさっぱりだしな。それでも、身分だけですり寄ってくる奴はいるんだけどな」


「それ以外は、だいたいは腫れ物に触る様に遠巻きにされるんだよね」


「あー…私も似たようなモノですよ?なんせ、呪われ姫らしいですから」


初めは揶揄して言われていたのに、今では定着されていたりする。

まぁ、私の場合は腫れ物ってよりは…侮蔑に近いけど。

どうでもいい人に、なんと思われても気にならないけど。

私が冗談めかしに言うと、二人は顔をしかめる。


「ティアは呪われていないよ。噂は無責任だからね」


「俺達には分かるんだよな。だから、あの噂には腹が立つんだよ」


真剣に言い募る二人に、私はちょっと嬉しくて笑ってしまう。

父様やお兄様以外で、そう言ってくれたのは…ハーツやユーリ、ジェニーだけで。

側近の彼等は、何を言われても涼しい顔で笑い飛ばす。

サンエーリ様やリーフ様も、同じように思ってくれていると考えると、胸が温かくなる。

だから、私は笑って言う。

強がりじゃない本音を。


「私って意外に図太いんです。大切な人が知っていてくれたら、十分幸せなんです」


紛れもない私の本音。

大勢にもてはやされるより、大切な人達が私を見ていてくれたら。

きっと、私は道を誤らないはずだから。

頬笑む私に、二人は少し笑う。


「ティアは強いうえに、欲がないんだね」


「まぁ、馬鹿は放っておきたい気持ちは分かるけどな」


「馬鹿と言うより、あれは一種の感染病か何かですよ」


貴族独特の感染病。

ターゲットを蔑み、それで優位に立ってたと思う病。

根深い病としか思えない。

それを話すと、二人はまた爆笑。

ツボに入ったみたい。


「ハハハハッ、病なら仕方無いね」


「確かにな。ハハハッ!」


そんなに笑える事を言ったつもりはないけど、楽しそうなのでヨシとする。

明るい笑いを見ながら、私はどこかで私自身も楽しんでいる事に気がついた。

死亡フラグが心配だけど、こうして話せてよかった。




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