第4話 宇宙にないもの
「そこまで混んでなさそうだ」
飲食店の《ファミレス!!》というお店の前にいる天河は、そう言った。
それを聞いたベガは、
「もう限界……、お腹空いたぁ」
と弱々しい声で呟き、ふらふらと天河の後についていった。
天河がお店の扉を開けた途端、店内を流れる涼しい空気が、二人の身体を優しく撫でた。
頬を撫でたのは、静寂に包まれた宇宙にはない、人々の温かな営みだった。
その優しさを感じた瞬間、ベガの瞳に、ほんの少しの涙が滲んだ。
「温かい……、孤独を感じない……」
「温かい……?夏だけど?とりあえず、楽でいられるならよかった!席に座ろうか」
天河は不思議そうに首を傾げながらも、微笑んだ。
二人は、人の営みを感じながら席へと歩いていった。
「何食べたい?料理分からないならおすすめにするけど……」
天河は手を差し伸べるように、優しく問いかけた。
するとベガは、温もりに包まれたような笑みを浮かべ、
「私はチキュウの補給物について知らないから、イザヨイテンガが決めていいよ」
と天河を見つめながら、そう言った。
天河は、『補給物』という言葉に疑問を持ちつつ、ベガが満足しそうなメニューを考えた。
「補給物……?食べ物じゃなくて?とりあえずベガのメニューは、ハンバーグセットにするよ」
そう天河が提案すると、ベガは興味深そうに天河を見つめ、言葉を続けた。
「チキュウでは補給物を、タベモノって言うのか!知識になる……。それと、はんばーぐ?補給できれば何でも大丈夫」
ベガの言葉を聞いた天河は、穏やかな口調で訂正した。
「何でもいいわけじゃないけどな……」
♢
しばらく二人で会話していると、店員が『ハンバーグセット』を持ってきた。
天河は店員さんに向かって、感謝を込めて軽く頭を下げた。
テーブルに置かれたのは、
まるで黄金色のようなパン。
光を反射するような鮮やかなサラダ。
鉄板の上で、肉汁が弾ける音がするハンバーグだった。
その全てがベガにとって初めて見るものだった──




