第3話 チキュウに降りし少女
「ここは……、どこ?」
群青色の瞳をした白髪の少女は、そう言った。
天河は、それを聞き、頭を悩ませた。
日本語を喋ってるから、日本人だろうし、東京ぐらいわかるかも──。
「ここは東京だよ、この辺りでは、七夕祭りもやってるよ」
天河がそう言うと、少女は困惑した様子で、質問を聞き返した。
「トウキョウ?知らない場所かも……。衛星名わかったりする?」
「衛星名わかったりする?」なんて、これまでの人生で一度も聞いたことない質問に、困りながらも冷静に、考えた。
「え、衛星名……?えーと、地球だよ?」
少女は嬉しそうに、さらに言葉を重ねた。
「チキュウ?!ここがチキュウなんだね!!私の名前は、ベガ。コスモスクエアって言われる、宇宙拠点みたいなところから来たの。ここから、とっても遠いところ。あなたは?」
地球を知らないことに驚きつつも、天河は自分の名前を答えた。
「俺の名前は、十六夜天河、地球人だよ。」
それを聞いたベガは、微笑みながら呟いた。
「いざよいてんが……、チキュウのネームは興味深い!チキュウって面白いん──」
最後の言葉が途切れたかと思うと、張り詰めていた糸が切れるように、地面に倒れ込んだ。
天河は、予想外の光景に、目を丸くしながらも、胸の奥が、不安で締めつけられた。
「えっと、大丈夫?怪我?」
天河がそう尋ねると、数秒後、返事が返ってきた。
「お腹空いた……、動けない」
風にあおられる蝋燭の炎のように、か細い声で答えた。
辺りの暗さは増し、夜がゆっくりと深まるにつれ、それを待っていたかのように、風は吹き荒れ始めていた。
「このままいても寒いから、どこか飲食店に行こう!ご飯も食べれるよ?」
天河が、ひとつひとつ言葉を選びながら、慎重に口を開くと、ベガは、力が抜け落ちたような声で、
「わかった、道案内してほしいな」
と返事した。
天河は頷き、ベガとともに、人々の営みが灯る街へと歩いていった。




