第11話 生まれ落ちた理由
「『誰かの願いを叶えるために生まれた』ってお父さんに言われたの。だから私は、自分の望みをすべて捨て、誰かの苦しさや願いに寄り添って生きてきた。スターギヴァーっていう、願いを聞いて叶える仕事してた。」
七瀬は、どこか寂しげに微笑みを浮かべ、そう言った。
話を聞いていた天河や美王香は、七瀬の苦しみを受け止めるように頷いた。
それを受け止めた七瀬は、話を続けた。
「でもね、コスモスクエアのみんなとは、一つだけ違うものを持って生まれたの。それは、【感情】という能力。悲しいことがあったら嘆く。上手くいかなかったら怒る。だけど、そうする度に願いを叶えるのが辛くなっていった。」
雨に濡れたような声で、ぽつりぽつりと言葉を紡いだ。目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
「叶えるために生まれてきたのに、感情を持ってるせいで、みんなができてることを自分だけができない。そこで、ある疑問に辿り着いた。生きる意味はあるのか。私がここにいる価値はあるのか──」
ヒートアップしていく七瀬に被さるように、天河は声を放った。
「それならさ……一緒に、生きる意味や自分の価値を探そうよ!感情だって、悪いことばかりじゃないさ」
沈んでいる心を引き上げるように、天河はそう言った。
七瀬は大粒の涙を流し、震える声で呟いた。
「つらかった……ありがとう……。私、もう誰かの願いを背負えないの」
それを聞いた美王香は、さらに元気づけるように、明るい声で答えながら、七瀬の頭をそっと撫でた。
「生きてるだけで偉いよ〜!なんか、昔の天河みたい。それくらいいっぱい耐えてたんだね、大丈夫。帰る場所はここだから」
涙が止まらず、声がかすれてきた七瀬は、胸いっぱいの喜びを抱きしめるように、小さくはにかんだ。
そのとき、七瀬の胸に一つの疑問が浮かんだ。
気づけば、口から言葉がこぼれていた。
「昔の……天河?」
その言葉に重なるように、店員さんの声が響いた。
「お待たせしました、ハンバーガーのセットです。」
店員さんの声に天河と美王香が反応し、天河は頭を軽く下げた。
美王香も小さくお腹を鳴らしながら、「食べよう?」と言った。
七瀬の目の前にあるのは、ダブルパティバーガーだった──




