第12話 今ある壁
「ハンバーグ大きい……」
七瀬は、目の前に運ばれてきた《ダブルパティバーガー》を見て、目を見張った。
天河と美王香のハンバーガーも来ていて、どれも大きく、異様なオーラを纏っていた。
七瀬は、ハンバーガーを両手で掴み、大きく頬張った。
「おいしい……、やっぱりハンバーグが1番好きかも」
一口食べ終えた七瀬は、子供のように目を輝かせながら言った。
それを聞いて天河は、「よかった」と優しく言ったあと、ハンバーガーを豪快にかぶりついた。
天河の「美味しい」に続いて、美王香も、
「美味い」と口にした。
そのあと七瀬を見つめ、優しく語った。
「生きてて、何度も壁に当たって折れそうな時もある。でも、ごく稀に超嬉しいことに出会えて、今日も私を生かしてくれる。七瀬ちゃんも今、頑張って闘ってるから、いつかきっと、そんな超嬉しいことにブチ当たるよ!」
その言葉を確かに受け取った七瀬は、目に一粒の涙を浮かべ、「ありがとう……」と呟いた。同時に、外からぽつり、ぽつりと雨粒が降ってきて、アスファルトを濡らし始めた。
雨だ──
雨に先に気づいた天河は、二人の会話が途切れたところで、そっと声をかけた。
「会話の途中、ごめん。雨が降ってきたけど、どうする?傘、持ってない……」
苦笑するように天河が言うと、七瀬は目に光を宿らせて、はしゃぐように声を上げた。
「アメってなに?液体が降ってきた!あれ浴びたい……」
七瀬の前代未聞の提案に少々驚きながらも、美王香は微笑みながら答えた。
「浴びたいのね。いいよ!まったく〜、初めての地球には面白いものがたくさんあるから、しゃーないね」
天河も七瀬の提案に賛成しつつ、ひとつ条件を付け加えた。
「まずハンバーガー全部食べよう」
天河の条件に二人は頷き、ハンバーガーを手にとった。
外の雨粒は、絶え間なく、降り注いでいた。
七瀬にはそれが、空から降ってきた無数の流星のように見えた。




