第9話 川の瀬を流れるように
会話の隙を見つけたベガは、緊張した様子で口を開いた。
「私も地球の名前がほしい……、天河や美王香みたいに。二人で名前考えられないかな?」
この提案に天河と美王香は驚いた。
まず天河が質問に答えた。。
「わかった、じゃあ名前を考えよう。それと一旦部屋に入ろう。暑いからね。それで、俺が名前を考えて、美王香が苗字を考えるのどう?」
美王香が小さく微笑んで「いいね」と答えると、3人は部屋に入り、それぞれ顎に手を当てて考え始めた。
天河もまた、一つの答えを掘り起こすように、じっと考えていた。
ベガも口を挟まず、じっくりと見つめていた。
数分後、天河がパズルのピースがぴたりとあてはまったかのように、はっと顔を上げた。
「七瀬って名前はどう?七夕っていう日に、川の瀬を流れるように地球に来たから。」
天河から贈られた新しい名前は、夜空に輝く1番星のように、ベガの心へ届いた。
「ありがとう!その名前いいかも」
七瀬はとても嬉しそうに飛び跳ねて、そう言った。
それに続くように、美王香が提案を出した。
「苗字、織月ってどう?『織』は《織星レジデンス》から。『月』は七夕の日満月だったし。織月レジデンスは君の帰る場所だよ」
七瀬は二人を見つめた。
胸いっぱいに広がった喜びは、抑えきれず涙となって零れ出した。
「ありがとう……、それと私泣き虫で……。いい名前と苗字。こんなに嬉しいプレゼントありがとう!」
天河と美王香の2人も嬉しそうに頷き、美王香が言った。
「名前っていいよね。自分が何者なのかを示す言葉だからね。それが、なりたい自分や未来の自分を映すもの、生き様になることもあるんだよ」
それを聞いた天河と七瀬も、感嘆の息を漏らした。
辺りは青い空が広がっていて、太陽の光が街を照らしていた。
ハトが鳴き、時計の針は正午を指していた。
お腹空いた──
そう最初に思ったのは、七瀬だった。
「おリョウリ食べない?」
まだぎこちない言葉使いに微笑みながら、天河と美王香は頷いた。




