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『絶望の夜に覚醒した治癒魔法~眠り続ける弟を救うため、私は森の奥で「魔女」になる~』  作者: 沼口ちるの


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第5話:迷いの森の新生活と、宝石を乗せたリス(?)

王都から離れた『迷いの森』の奥深く。

魔法屋のおじいさんが言っていた通り、そこにはツタに覆われた古い山小屋がひっそりと建っていた。昔、変わり者の魔女が住んでいたという場所だ。


少し埃っぽかったけれど、掃除をすれば十分に住める状態だった。

ここでの生活が始まって数日。私は森の浅い場所で薬草を採取し、月に一度、王都のギルドへまとめて売りに行くという生活サイクルを組み立てつつあった。


「よし、今日はもうちょっと奥まで行ってみようかな」


リオンの入院費を稼ぐためには、もっと高価な素材が必要だ。

森の奥は危険な魔物が出ると言われているけれど、今のところ遭遇したことはない。おじいさんが「生命の魔力に当てられて魔物は逃げていく」と言っていたのは本当らしい。


鬱蒼と茂る木々を抜け、少し開けた場所に出た時だった。


「きゅうぅ……っ」


かすかな、痛みに耐えるような鳴き声が聞こえた。

茂みをかき分けると、そこには大きなイバラのツタに絡まれ、動けなくなっている小さな動物の姿があった。


「リス……? いや、違う?」


ふさふさの尻尾に、丸っこいフォルム。大きさは両手で包めるくらい。

見た目はリスに似ているけれど、最大の特徴は『額に真っ赤な宝石が埋め込まれている』ことだった。ルビーのように美しいそれは、今は力がなく淀んだ色をしている。


イバラのトゲが深く刺さっているらしく、小さな体からは血が滲んでいた。


「痛かったね、大丈夫だよ」


私はそっとしゃがみ込み、額に宝石のあるリス(?)に向かって両手をかざした。

私の意志に呼応して、手の中から温かい黄金の光が溢れ出す。光がリスの体を包み込むと、刺さっていたトゲがポロリと抜け落ち、傷口が嘘のように塞がっていった。


『生命魔法』の上澄み。レオンハートさんは恐ろしい力だと言っていたけれど、こうして小さな命を救えるのなら、私にとっては優しい魔法だ。


「きゅっ!」


完全に傷が癒えたリス(?)は、パチリと目を覚ました。

額の赤い宝石が、太陽の光を反射してキラキラとまばゆい輝きを放っている。


「よかった、もう元気みたいだね。気をつけて帰るんだよ」


私は立ち上がり、再び薬草採取に戻ろうと背を向けた。

しかし。


トトトトッ、ピョン!


「えっ?」


肩に軽い衝撃を感じて横を向くと、さっきのリス(?)が私の肩にちょこんと乗っていた。

私の頬にすりすりと額の宝石を擦り付け、ご機嫌な様子で「きゅいっ!」と鳴く。


「あの、お家は? 帰らなくていいの?」


「きゅん!」


完全に懐かれてしまったようだ。

後で知ることになるのだが、この子はリスなどではない。額の宝石で魔力を操る、非常に希少な幻獣『カーバンクル』だった。その宝石は国が買えるほどの価値があり、乱獲を避けて人の寄り付かない森の奥に隠れ住んでいたのだ。

強大で純粋な『生命魔法』の光を浴びたことで、カーバンクルは私を完全に「安全で心地よい主」として認識してしまっていた。


しかし、そんな幻獣の生態など微塵も知らない私は、呑気に微笑んでいた。


「そっか。じゃあ、私と一緒に来る? 一人暮らしはちょっと寂しかったし、大歓迎だよ」


「きゅきゅっ!」


こうして、私の『迷いの森』での生活に、初めての同居人(?)ができた。

まさかこの額に宝石を乗せた可愛いリスが、王都の魔導士たちが血眼になって探す伝説の幻獣だとは夢にも思わずに。


そしてこれを皮切りに、私の周りには次々と「ちょっと変わった怪我をした動物たち」が集まってくることになるのだった。

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