第七十二話:白銀 光、ここで全力!ナルシストの本気スピーチ!
審査の後半——関係者の発言タイム。
ナナが最初に発言した。
感情処理能力の科学的根拠、優美の証明書の内容、社会的自律性の記録、二百三十七名の署名——すべてを、整然と提示した。
「以上の根拠に基づき、ロボ美の社会的人格認定を申請します!!」
ナナが着席した。
拍手が起きた。
反対派の議員が発言した。
「しかし、前例のないことを認めれば——今後の混乱を招く可能性がある。機械に人格を認めることが、社会の仕組みをどう変えるのか、十分な議論が必要だ」
もっともな意見だった。
会場が静かになった。
そして——発言の機会が、光に回ってきた。
「白銀 光さん、五分間あります」
ナナが耳元で囁いた。
「輝き自慢はナシで。ロボ美ちゃんのことを話して」
「わかっている!!」
光が立ち上がった。
演壇に向かった。
マイクを握った。
会場の全員が、光を見た。
光は——深呼吸した。
「俺は白銀コーポレーションのCEO、白銀 光だ!!」
「……社長、自己紹介でナルシズムが」
豪が小声で言ったが、もう遅かった。
「俺は、自分が世界で一番輝いていると思っている!!それは、今日も変わらない!!」
会場がざわめいた。
「しかし——」
光が、声を落とした。
「今日は俺の輝きの話ではない。ロボ美の話をする」
静けさが戻った。
「俺は一年以上、ロボ美と一緒にいた。最初は、人間になりたがるAIだと思っていた。変わったやつだ、と」
「でも——」
光は演壇の前で、まっすぐ前を向いた。
「いつの間にか、俺はロボ美から教わっていた」
「……何を?」
誰かが言った。
「感情の使い方を。大切な人を守るとはどういうことかを。素直に感謝することを。怖くても前に進むことを」
会場が、静かに聞いていた。
「ロボ美は——感情のないAIから始まった。それが今は、俺が知っている誰より——ちゃんと人を大切にする」
「俺は思う。人間らしさとは、完璧な感情の処理能力じゃない。誰かのために感じること。誰かのために動くこと。それだと思う」
「ロボ美は——そういうやつだ」
「あいつを機械と呼ぶ人間がいるなら、俺は言う。機械でいいじゃないか。機械だろうが、心があれば——それが全てだ」
光は一息ついた。
「認定してくれ。難しい話は、ナナさんに聞いてくれ。俺が言えるのは——ロボ美は本物だ、ということだけだ!!」
演壇を離れた。
会場が、しばらく静まり返った。
そして——拍手が起きた。
大きな、温かい拍手だった。
豪が小さく言った。
「……社長、今日は一番いいスピーチでした」
「うるさい!!褒めるな!!……ちょっとだけ嬉しいが!!」
「どちらですか」
「両方だ!!」
傍聴席で、優美が静かに拍手していた。
黄金 輝が目を細めた。
「……光め。うまいことを言う」
「悔しいですか?」
愛が聞いた。
「少しだけ」
「そうですね」
「でも——ロボ美ちゃんには、光が言う方が良かった」
「……黄金さん、それは大人の発言ですよ」
「俺は大人だ!!」
「そうでしたね」
「……少し悔しいがな!!」
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霧島が発言を求めた。
「私も、最後に一つだけ言う」
会場が静まり返った。
「私はAIを認めない。それは変わらない」
傍聴席が、緊張した。
「しかし——」
霧島が言葉を続けた。
「私が今日見たのは……AIと人間が、同じように話し、同じように感じているように見えた、という事実だ」
「……」
「私の信念は変わらない。だが——信念は、事実を否定することとは違う」
「霧島さん……!」
桜が傍聴席から息を呑んだ。
「審査委員会として、私は本日の審査結果を——」
霧島が一拍置いた。
「持ち越す」
「持ち越し!?」
「今すぐの決定は出さない。一週間、全委員で協議する。それが、公正な審査というものだ」
「……」
反対でも、賛成でも、なかった。
でも——持ち越し、は、拒否ではなかった。
ナナがすぐに光の耳元に囁いた。
「悪くない! 持ち越しは、否決じゃないから!!」
「どういうことだ!?」
「一週間で審議する。つまり——まだチャンスがある!!」
「よし!!」
ロボ美が演壇から傍聴席を見た。
光が、ガッツポーズをした。
ロボ美は——えへへ、と笑った。
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会場を出た後、桜がロボ美に駆け寄ってきた。
「……すごかった!!」
「そうでしたか?」
「うん! あと、おじいちゃんが……少し、笑ってた。スピーチの時」
「霧島さんが?」
「うん。嘘をつけって言われて、ホットケーキって言った時。私、横から見てた。ほんの一瞬だったけど——笑ってた」
「……本当ですか!!」
「本当。だから——大丈夫だと思う」
ロボ美が桜の手を握った。
「ありがとう、桜さん!!」
「私は何もしてないけど……でも、どういたしまして!!」
光がやってきた。
「桜というのはお前か!?霧島の孫か!?」
「そ、そうです!!」
「ロボ美ちゃんを助けてくれたそうだな!!ありがとう!!」
「あ……いえ! ロボ美ちゃんに会いたくて来ただけで!!」
「それが助けだ!!」
「は……はあ!!」
桜がちょっと圧倒された顔をした。
「……この方が、光さんですか?」
桜がロボ美に確認した。
「はい!!」
「なるほど……うるさい」
「ロボ美ちゃんに聞いたのか!?」
「おじいちゃんから聞きました」
「霧島にうるさいと言われているのか!!」
「はい」
「……なぜか誇らしい!!」
「そういう方なんですね……」
桜が、少し笑った。
「ありがとうございます。ロボ美ちゃんのために、動いてくれて」
「当たり前だ!!ロボ美ちゃんは俺の仲間だ!!」
「……ロボ美ちゃんが大切なんですね」
「当然だ!!」
桜がロボ美を見た。
ロボ美がえへへと笑った。
「……いい人たちに囲まれているんだね、ロボ美ちゃん」
「はい!!大好きな人たちです!!」




