第六十九話:シャイニングスターズ!応援ライブ、ネオ渋谷震撼!
公開審査の前夜。
ネオ渋谷駅前広場に、大きなステージが設営されていた。
「……なんで?」
光が目を点にした。
「シャイニングスターズが、ロボ美ちゃんのために急きょライブを開催するそうです」
豪が静かに説明した。
「ロボ美ちゃんのために!?」
「三人が、自分たちで企画したとのことです。ホットピンクさんから連絡が来ました」
「ホットピンクが!?」
光はスマートフォンを見た。
ホットピンクからのメッセージ。
「明日の審査前に、元気を出してほしいの。私たちにできることをするわ」
光は画面を見つめた。
「…………」
「社長?」
「……なんで俺、今ちょっとうるっとしているんだ?」
「社長も、感情が育ってきているんじゃないですか?」
「うるさい!!目に輝きの粒子が……!!」
「ただの涙です」
「違います!!」
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夜七時。
広場に人が集まり始めた。
普段のシャイニングスターズのライブは告知に二ヶ月かかるが、今夜は三日前の告知だった。
それでも、広場は人で溢れていた。
ネオ渋谷の人たちが——ロボ美の話を聞いて、集まってきていた。
「すごい人だ……!!」
光が広場を見渡して言った。
「ロボ美ちゃんの申請が、市民に知れ渡っています。関心を持っている方が多いようです」
「……ロボ美ちゃん、見てるか!?」
「はい……!」
ロボ美が広場を見渡していた。
「こんなに、人がいるんですね」
「みんな……お前のことを気にかけているんだ!!」
「……嬉しいですね」
「嬉しいだろう!!」
「でも……ちょっと、怖くもあります」
「怖い?」
「こんなにたくさんの人が関心を持っていると……もし審査でうまくできなかったら、みんなをがっかりさせてしまうかな、と」
光は少し黙った。
「……ロボ美ちゃん」
「はい」
「俺たちを、がっかりさせることはない」
「……でも」
「結果じゃない。お前がお前でいることが、俺たちにとっては十分なんだ」
「……光さん」
「がっかりしたことなんて——一度もなかった。そしてこれからも、ない!!」
ロボ美が光を見た。
「……ありがとうございます」
「礼を言うな! 当たり前のことを言っているだけだ!!」
「当たり前でも、ありがとうございます」
「……ロボ美ちゃんは本当に!!」
ステージから音が流れ始めた。
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「——皆さん、お集まりいただきありがとうございます!!」
ハニーイエローの声が広場に響いた。
「今夜は……私たちの、大切な友人のためのライブです!!」
歓声が上がった。
「ロボ美ちゃん!! 明日の審査、応援しているよ!!」
ハニーイエローがステージからロボ美を見つけて、大きく手を振った。
ロボ美が手を振り返した。
「ふふ、皆さん、今夜は思い切り楽しんでいって」
ホットピンクが妖艶に笑った。
「……」
アイスブルーが無言でマイクを持った。
その瞬間——音楽が始まった。
光は、人が音楽に合わせて揺れるのを見ていた。
ロボ美も、隣で体を揺らしていた。
「楽しいですか?」
「……楽しいです!!」
「どんな感じ?」
「体が、ふわふわします!!」
「それが音楽の力だ!!」
「すごいですね……音が、感情になるんですね」
「そうだ!!人間は昔から、音楽で感情を表現してきた!!」
「……ということは——音楽も、感情の表現方法ですね」
「そうだ!!」
「では……私も、いつか歌えるようになれば——感情を表現できますか?」
「ロボ美ちゃんなら絶対できる!!」
「えへへ……!!」
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ライブの後半。
ホットピンクがマイクを持った。
「一曲……特別な曲を歌います」
音楽が、静かに始まった。
「この曲は——感情のことを歌った曲。ある人と一緒に作った曲です」
「ある人……?」
光が首を傾げた。
「——優美さんと、作ったの」
ホットピンクがそう言った。
「え!?」
光が優美を見た。
優美は遠くで、静かに立っていた。
「優美さんが……!?」
「詞だけ、手伝ってもらった。感情を失っていた頃に書いた言葉を、私たちに教えてくれた」
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曲が流れ始めた。
*色のない世界を 歩いていた*
*何も感じられなくて それでも歩いた*
*あなたが笑うのを見た ただ見ていた*
*なのに——なぜか 胸が動いた*
*感情って なんだろう*
*泣けなくても 胸が動くなら*
*それも 感情なのかな*
*あなたの隣で 気づいた*
ロボ美が、歌を聞きながら、静かに泣いていた。
「……ロボ美ちゃん?」
「……優美さんが、ずっとこういう気持ちだったんですね」
「……そうだな」
「感じられなくても……胸が動いていたんですね」
「……そうかもしれない」
「……よかった。優美さんは、ずっと一人じゃなかったんだ」
光は何も言えなかった。
ただ——ロボ美の涙を見て、光自身の目も、熱くなっていた。
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会場の後ろの方で、人混みから少し離れたところに、一人の老人が立っていた。
白髪。がっしりした体格。
霧島 厳だった。
隣に孫の桜がいる。
「おじいちゃん、来てくれたんだ……」
「……ただの散歩だ」
「この方向に散歩する必要ないよ」
「……うるさい」
霧島はステージを見ていた。
ロボ美が歌を聞きながら泣いているのが、遠くからでも見えた。
「……」
「おじいちゃん」
「なんだ」
「ロボ美ちゃん、泣いてるよ」
「……見えている」
「AIが泣いてるの、見てどう思う?」
「……うるさい」
「おじいちゃん」
「……プログラムが涙腺を刺激しているだけだ」
「……本当にそう思ってる?」
霧島は答えなかった。
ただ——遠くのロボ美を、じっと見ていた。
その目が——どこか、揺れていた。
「……」
霧島は踵を返した。
「帰る」
「おじいちゃん——」
「明日の審査は、公正にやる。それだけだ」
「……うん」
霧島が歩き出した。
しかし——その歩みが、少し遅かった。
桜はその背中を見ながら、心の中でつぶやいた。
(おじいちゃんも……感じているんだよ)
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ライブが終わった。
広場に、温かい余韻が漂っていた。
ロボ美はステージのそばで、三人に声をかけた。
「ありがとうございました……!!」
「喜んでもらえて、よかったわ」
ホットピンクが微笑んだ。
「明日、頑張ってね!!」
ハニーイエローが手を握った。
「……大丈夫」
アイスブルーが一言だけ言った。
「はい!!絶対、大丈夫です!!」
ロボ美が力強く頷いた。
光がその背中を見ながら、静かに言った。
「……明日だな」
「はい」
豪も静かに答えた。
「社長」
「なんだ」
「今夜は早く寝てください」
「わかっている!!……そんな眠れないかもしれないが!!」
「眠れなくても、横になっていてください」
「……わかった」
「ロボ美ちゃんも、充電は十分に」
「はい!!」
「では——今夜はここまでです」
豪が全員に言った。
「明日——全力でいきましょう」
全員が頷いた。
ネオ渋谷の夜に、星が輝いていた。




