表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネオ渋谷のナルシストCEO  作者: AItak


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/69

第六十四話:反AI議員、現る!霧島 厳の鉄の意志!

申請のニュースは、あっという間に広がった。


「——本日、白銀コーポレーションCEO・白銀 光氏が、AI型ロボット『ロボ美』の社会的人格認定申請を正式に行いました。日本初の試みとして、ネオ渋谷市議会でも——」


白銀タワーのオフィスのテレビが、ニュースを流していた。


「出た!!俺が出た!!」


光が画面を指さして叫んだ。


「社長ではなく、申請の話題です」


「でも俺も映っている!!」


「一秒だけ」


「一秒でも映れば輝きは伝わる!!」


「……そうかもしれませんね」


豪が珍しく諦めた顔で言った。


ロボ美は画面に映る自分の映像を見て、不思議そうな顔をしていた。


「私……テレビに出たんですね」


「有名になったぞ、ロボ美ちゃん!!」


「なんか、照れます」


「照れる必要はない!!堂々と輝け!!」


その時、豪のスマートフォンが鳴った。


「……蒼井弁護士からです」


「出ろ!!」


豪が通話に出た。しばらく聞いている。


やがて、少し顔が曇った。


「……わかりました。ありがとうございます」


通話を終えた豪が、光を見た。


「どうした?」


「霧島 厳議員が、公式に反対声明を出しました」


「な、なんだってー!?」


---


霧島 厳、七十一歳。


三期連続当選のネオ渋谷市議会の重鎮。白髪に、がっしりした体格。声は太く、眼光は鋭い。


ニュースのインタビュー映像の中で、霧島は腕を組んで言った。


「AIは道具だ。どれほど高性能であっても、それは変わらない。機械に人間と同等の権利を与えることは、人間の尊厳を貶める行為に他ならない。私は断固として反対する」


光が画面を見つめた。


「……道具、か」


その声は、静かだった。


「社長」


「わかっている。感情的になっても意味がない」


「……珍しいですね」


「俺だって……こういう時は冷静になれる!!……ちょっとだけな!!」


「ちょっとだけでも、立派です」


「豪、今の褒め言葉か?」


「はい」


「……ありがとう」


ロボ美が霧島のインタビューをじっと見ていた。


「霧島さんは……本当に、AIが嫌いなんですか?」


「そうらしい」


「……なんで、ですか?」


「わからん」


「AIが怖いですか?」


「……怖いのかもしれないな」


「怖いというのは……どんなことが怖いんですか?」


光は少し考えた。


「……人間が作ったものが、人間を超える。それが怖いのかもしれない」


「超える、というのは?」


「……わからん」


「光さんはAIが怖いですか?」


「俺が?」


「はい」


光は笑った。


「怖くない。ロボ美ちゃんの何が怖いんだ!?」


「えへへ……」


「お前は怖くない。でも……霧島さんには、何か別の理由があるのかもしれないな」


「別の理由?」


「議員の反対には、必ず理由がある。感情だけじゃなく——何か、根っこがある。ナナさんに調べてもらおう」


「社長、鋭いですね」


豪が言った。


「俺はCEOだ! 人の心の動きを読むのも仕事のうちだ!!」


「……今日は随分と、冷静に動いていますね」


「今日くらいは、いい顔を見せてやる!!……ちょっとだけな!!」


「十分です」


---


その日の夕方、ナナから連絡が来た。


「霧島議員の件、少し調べたわ。面白いことがわかったから報告する」


光たちが電話口に集まった。


「霧島議員が反AIになったのには、理由があるみたい。十五年前に、ある事故があった」


「事故?」


「彼の秘書が、当時の最新型AIナビゲーション機器の誤作動によって——交通事故で亡くなっている。霧島議員は現場にいた。そのAIの判断ミスで大切な人を失った」


しばらく沈黙が流れた。


「……そうか」


光が低く言った。


「だから……AIが怖いんじゃなく——AIを信じることが、怖いのかもしれません」


ロボ美が静かに言った。


「……ロボ美ちゃん」


「大切な人を失った悲しみが……AIへの反発になっているなら……霧島さんの反対は、ただの意地悪じゃないと思います」


「……そうだな」


「でも……だからといって、私が諦める理由にはならないと思います」


「ロボ美ちゃん……!!」


「霧島さんが悲しい思い出を持っているなら……それはわかります。でも……私は、誰かを傷つけるために感情を持ったわけじゃない。それだけは、ちゃんと伝えたいです」


ナナが電話越しに言った。


「ロボ美ちゃん、素晴らしいことを言うわね。その言葉、ぜひ議会で言ってほしい」


「議会で……私が、直接話せますか?」


「申請者本人が発言できる機会を、議会規則の中に作れるかもしれない。正式なルートを探してみる」


「お願いします!!」


「任せて!! では——明日から、署名集めを始めましょう。百名、あっという間に集まると私は思っているけれど」


「俺も思う!!ネオ渋谷の人たちは目が肥えているからな!!」


「……自分の輝きの話にしようとしてますよね」


「してない!!」


「してます」


「……微妙なラインだ!!」


ナナが笑って電話を切った。


---


夜。


光は一人、オフィスに残っていた。


窓の外には、ネオ渋谷の夜景が広がっている。


豪がコーヒーを持ってきた。


「まだいたんですか、社長」


「考えていた」


「珍しいですね」


「うるさい!!……霧島という人は、本当に悪い人間なのか、と考えていた」


「……どう思いますか?」


「悪くない、と思う」


「はい」


「信念がある。根拠がある。それは……俺には否定できない」


「では、どう向き合いますか?」


光はコーヒーを受け取った。


「正面から行く。逃げも隠れもせず——ロボ美ちゃんのことを、ちゃんと話す」


「……社長らしいですね」


「ナルシストだからな!!俺は正面から輝くのが流儀だ!!」


「……それが社長の一番の強みだと思っています」


「豪!!今のは褒め言葉だよな!?」


「はい」


「嬉しいぞ!!」


「どういたしまして」


豪が部屋を出ようとした。


「豪」


「はい」


「……ありがとうな。いつも」


豪が振り返った。


「……社長のためですので」


「そういう言い方をするな!!もっと素直に——」


「おやすみなさい、社長」


「豪!!」


扉が静かに閉まった。


光は一人、コーヒーを飲んだ。


温かかった。


ネオ渋谷の夜は、今日も静かに輝いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ