第五十八話:輝け!白銀光、本気のナルシスト宣言!最終決戦!
旧研究施設から全員が地上に出た翌日——。
想定外のことが起きた。
「装置が……暴走している?」
豪が険しい顔で画面を見つめた。
「はい。昨夜、装置の電源を落とした際に内部のエネルギー制御系が壊れていたようで……残留エネルギーが蓄積し、放電を始めています」
「どこに影響が出る?」
「このまま放置すれば……施設全体に過電流が発生し、地下区画が爆発する可能性があります」
「爆発!?」
「最悪の場合、ネオ渋谷地下の一部が崩落します」
「そんなことが——!!」
光が立ち上がった。
「どうすれば止められる?」
「制御室の中央パネルを手動でリセットすれば止まります。ただし……装置から放電されている空間の中を通る必要があります。強い電磁波が出ているため、電子機器を持ち込めない」
全員が一瞬沈黙した。
「……つまり、ロボ美ちゃんは入れない」
「はい。ロボ美ちゃんの回路が焼ける危険があります」
「俺が行く」
光が即座に言った。
「社長——」
「俺が一番体を張る場面だろう」
「危険です」
「わかっている」
「……でも、行きます」
「わかっています」
豪が目を閉じた。
「私も行きます」
「当たり前だ!!」
「……では、行きましょう」
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施設に戻ると、エネルギーの放電はすでに始まっていた。
廊下に青白い光が散っている。
「社長、制御室は地下二階の奥です。ただし——」
「ダーク・グレイスがまだ中にいる」
ダーク・グレイスが昨夜、施設を離れる前に自分の研究データを回収していた。
「……彼女のせいで装置が壊れたんじゃないですか」
ロボ美が心配そうに言った。
「おそらく、昨夜の強制起動が引き金になっています。彼女の意図ではないと思います」
「急ぎましょう!」
光と豪が走り出した。
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地下に降りると、予想通りダーク・グレイスがいた。
彼女は制御室の前で、パネルと格闘していた。
「……間に合わない。電気系統に詳しくないし——」
「ダーク・グレイス!!」
光が叫んだ。
ダーク・グレイスが振り返る。
「……来たの」
「なぜここにいる!!早く出ろ!!」
「リセットしようとしているのよ。でも私には——」
「俺がやる!!」
光がパネルに向かった。
「あなたが? 電気系統なんてわかるの?」
「白銀コーポレーションのCEOだ!!うちは電気系統のエンジニアリング部門もある!!多少はわかる!!」
「多少、という不安な言葉が入っているけど」
「うるさい!!豪!!」
「はい、サポートします」
豪が光の隣に立ち、パネルを確認した。
「……社長、ここを切って、次にここを押してください」
「わかった!!」
「ダーク・グレイスさん、後方に退いてください」
「……わかった」
三人が動いた。
放電の光が激しくなる。
「社長、急いでください!!」
「わかってる!!」
光の手が動く。パネルのスイッチを切り、次のレバーを押す。
「……次はここですか!?」
「そこではありません、一つ右です!!」
「これか!!」
「そうです!!次は——!!」
二人の声が交錯する中、放電が部屋全体を包み始めた。
「もう少し——!!」
光の声に、力がこもった。
その瞬間——豪が光の腕を掴んだ。
「社長!!最後は——これです!!」
「一緒に押すぞ!!」
「はい!!」
二人の手が、最後のスイッチを押した。
ドン——。
施設全体に、低い振動が走った。
そして——放電が、ゆっくりと収まっていった。
廊下が、静かになった。
「……止まった」
豪が息をついた。
「社長、大丈夫ですか」
「……ふぅ」
光が壁に手をついた。汗をかいている。
「大丈夫だ」
ダーク・グレイスが二人を見ていた。
「……ありがとう」
低い、静かな声だった。
「礼を言うな」
光が振り返った。
「俺はネオ渋谷を守っただけだ。それが俺の仕事だ」
「……あなたの仕事は、CEOじゃないの?」
「CEOの仕事は、自分の街を輝かせることだ!!」
「……そう」
ダーク・グレイスは少し間を置いた。
「白銀 光」
「なんだ」
「あなたは——本当に、変な人間ね」
「二回目だぞ、それ」
「二回目でも、変わらないわ」
「……俺は輝いているんだ!!」
「……ふふ」
ダーク・グレイスが、また笑った。
その笑いは——昨日より、少しだけ自然だった。
「一つだけ、聞いていいか」
光が静かな声で言った。
「なに」
「お前は……本当に悪い奴だったのか?」
ダーク・グレイスは少し考えた。
「……感情がないと思っていたから、誰かを傷つけることに躊躇がなかった。それは本当のことよ」
「でも——」
「でも……あなたたちと向き合ってみたら、躊躇が生まれた。理由がわからなかったけれど……今はわかる。感情があったから、よ」
「……そうか」
「私がしたことを、許せとは言わない。シャイニングスターズの三人にも、謝らないといけない」
「それができるなら——十分だ」
光は真っすぐ言った。
「俺たちは……別に、裁くためにここに来たんじゃない」
「……知っている」
「ロボ美ちゃんを守るために来た。それだけだ」
「…………」
「だが——結果として、お前にも会えてよかったと思っている」
ダーク・グレイスは答えなかった。
ただ——その目が、静かに光っていた。
「さあ、帰るぞ!!この輝きを地上に持ち帰らないと、ネオ渋谷が暗くなる!!」
「……相変わらず、最後にナルシストが来るのね」
「これが俺だ!!」
豪がすかさず言った。
「社長、この輝きという表現、禁止でしたが」
「もう施設の中じゃないから許可する!!」
「自分で決めないでください」
光は豪の背中を叩いて、笑いながら歩き出した。
ダーク・グレイスは、その背中を見ていた。
「……おかしな人たち」
そして——一歩、後を追った。
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地上に出ると、全員が待っていた。
「無事か!!」
黄金 輝が叫んだ。
「当たり前だ!!」
「ロボ美ちゃん、心配しましたよ……!」
「大丈夫だ、ロボ美ちゃん」
光がロボ美の頭をぽんと叩いた。
ロボ美は光の顔を見て、ほっと息をついた。
「よかった……本当に、よかったです」
「ダーク・グレイスさんも、無事でしたか?」
ロボ美がダーク・グレイスを見た。
「……ええ。あなたの光さんたちが助けてくれたわ」
「光さんは、かっこよかったですか?」
「…………まあ、そこそこね」
「光さん!!ダーク・グレイスさんが褒めてくれましたよ!!」
「そこそこ……って言ったじゃないか!!もっとストレートに言え!!」
「……うるさいわね」
全員が笑った。
ネオ渋谷の空に、夕暮れの光が降り注いでいた。




