第五十五話:突入!!混沌のアジト大脱走!
旧研究施設・地下一階。
廊下はひんやりとして、薄暗かった。
足音が響かないよう、全員が慎重に進む。
「先頭は俺が行く」
光が低く言った。
「社長、先頭は私が行きます」
「なぜだ!」
「社長に何かあった場合、組織が止まります」
「そんな……俺は最前線に立つべきCEOだ!!」
「CEOは最前線に立ちません」
「俺は違う!!」
「静かに!!」
ハニーイエローが小声で二人を止めた。
全員が固まる。廊下の奥から、足音が近づいてくる。
豪が素早くジェスチャーで指示を出した。
——全員、壁際に。
光も、さすがにその指示には従った。
足音が近くなる。近くなる——。
曲がり角から、二人の見張りが現れた。
「…!」
見張りが光たちを発見した瞬間、豪がすでに動いていた。
ほんの数秒。
静かに、的確に。二人が廊下に倒れた。
「……さすがです」(愛)
「……ありがとうございます」(豪)
「今の技、教えてほしい」(ハニーイエロー)
「後で」(豪)
「後でって言いましたね!?覚えてますよ!?」(ハニーイエロー)
「進みましょう」(豪)
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地下一階の廊下を進む中、光たちは三つのグループに分かれることにした。
**Aチーム**:光・豪・ロボ美——最深部を目指す
**Bチーム**:黄金 輝・愛・シャイニングスターズ——感情回路スキャナーの装置を探して破壊
**椿**:出口を確保し、後方支援
「作戦通りだ。行くぞ、豪」
「はい」
「ロボ美ちゃん、俺から離れるな」
「わかりました」
黄金 輝が光の肩を叩いた。
「光、頼んだぞ」
「お前もな、黄金」
二人は短く視線を合わせた。
それだけで、十分だった。
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Bチームのことを少し見ておこう。
「こっちが深部ね」
ホットピンクが地図を確認する。
「装置は地下二階にあるはず。エレベーターは使わない方がいい」
「階段は?」
「ここから右手に三十メートル先」
「行きましょう」
愛が先頭に立って歩き出す。黄金 輝が続く。
そこに——廊下の奥から、六人の部下が現れた。
「……多いわね」
ホットピンクが目を細めた。
「ふふ、ここからは私たちのターンよ」
ハニーイエローが拳を握る。
「……やる」
アイスブルーが静かに一歩前に出た。
「黄金さん、愛さんは先に行ってください。ここは私たちが」
「頼もしいな」
黄金 輝が不敵に笑った。
「では任せる。愛、行くぞ」
「はい!」
シャイニングスターズの三人と部下六人の対峙が始まった——と思ったら。
「あのう……」
ハニーイエローが部下の一人に声をかけた。
「なんですか」
「お仕事、大変そうですね」
「……え?」
「こんな地下で毎日……お給料は出てるんですか?」
「……出てますが」
「残業代は?」
「……それは……」
「やっぱり! ブラックじゃないですか!! 今すぐ退職を検討してください!! 将来が大事ですよ!!」
部下たちが困惑した。
その隙に。
「……話は終わり」
アイスブルーが静かに動いた。
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Aチームは地下二階への階段を発見した。
「降りるぞ」
光が先頭に立とうとした。
「社長、後ろから二番目でお願いします」
「三番目じゃないだけ感謝しろ!!」
「感謝します。行きましょう」
階段を降りると、空間が広くなった。
廊下の先に、重い扉がある。
そしてその手前に——シャドウが立っていた。
「……来ると思っていた」
シャドウは静かに言った。
「ダーク・グレイスはその奥にいる」
「どけ」
光が言った。
「通す前に、一つだけ聞かせてくれ」
シャドウは豪を見た。
「あなたは……なぜここまで社長を守るのか。それだけの強さがあれば、もっと自由に生きられるはずだ」
「……」
豪はしばらく黙っていた。
「守りたいから、守っています」
「理由は?」
「理由は、それだけです」
「…………」
シャドウが目を細めた。
「十年前、私はある人に拾われた。ダーク・グレイス……黒宮 優美に。行き場のなかった私を引き取り、仕事と場所を与えてくれた」
「…………」
「それ以来、私は彼女のために動いている。しかし……これも、あなたと同じことかもしれない」
「そうかもしれませんね」
「……だとすると」
シャドウは少し間を置いた。
「私が彼女を本当に守りたいなら——今夜、止まるべきはあなた方ではなく、彼女の暴走なのかもしれない」
シャドウは静かに横に退いた。
「通れ。ただし——彼女を傷つけるな」
「傷つけるつもりはない」
光は真っすぐ答えた。
「……行け」
豪はシャドウを一瞥した。
「あなたも、本当の仲間だったんですね」
シャドウは何も言わなかった。
ただ——その目が、かすかに揺れていた。
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重い扉が開いた。
広い地下空間。かつての研究室だったようだ。
中央に巨大な装置が鎮座している。
そしてその前に、ダーク・グレイスが立っていた。
「……やっぱり来たのね」
彼女は振り返らなかった。
「来ると思っていた。シャドウが通したんでしょう」
「ええ」
「……あの子も、甘くなったわね」
ダーク・グレイスがゆっくりと振り返った。
その目が——光と豪と、ロボ美を見た。
「ねえ、ロボ美」
「はい」
「最後にもう一度だけ聞くわ。感情回路のデータを——」
「渡しません」
「……そう」
ダーク・グレイスは目を閉じた。
そして静かに言った。
「じゃあ、力ずくで取る」
装置が轟音とともに起動した。
「逃げろ!!」
豪が叫んだ。
光がロボ美を抱えた。
室内に紫の光が満ちていく。
——決戦の幕が上がった。




