第五十三話:シャイニングスターズ、ピンチ!地下に消えた三人!
翌朝。
「三人が消えた……だと?」
光は受話器を持ったまま、立ち尽くしていた。
「はい……シャイニングスターズの三人が、昨夜から連絡が取れないとのことです」
豪が静かに報告する。
「ホットピンクに、ハニーイエロー、アイスブルーの三人が……」
「昨夜、三人は渋谷でオフを取っていました。その後、突然連絡が途絶えています。最後の位置情報は……ネオ渋谷駅から徒歩五分、地下商店街の入り口付近」
「地下……」
光と豪の目が合った。
「ダーク・グレイスか」
「状況からして、そう考えるのが自然です」
「くそっ……!」
光が拳でテーブルを叩いた。
「なぜ三人が狙われる! ロボ美ちゃんじゃなく!」
「おそらく……牽制です。こちらが動き出したことを察知し、仲間を人質にして足止めを図った、と考えられます」
「卑怯な……!」
光の目に、珍しく怒りの炎が燃えた。
「社長、落ち着いてください。今はまず……」
「わかっている。黄金 輝を呼べ。椿さんにも連絡を。すぐに動く」
「了解です」
豪が素早く動き出す。
ロボ美がそっと光の傍に来た。
「光さん……三人を、助けに行きましょう」
「当たり前だ」
光はロボ美をまっすぐ見た。
「俺の仲間を、傷つけさせるわけがない」
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一方、その頃。
ネオ渋谷地下の薄暗い部屋。
コンクリートの壁、鉄製の扉、そして——。
「……で、なんでこんなことになったんだっけ」
ハニーイエローが腕を組んで首を傾げていた。
「昨夜の帰り道、いきなり囲まれたのよ」
ホットピンクが爪を見ながら答える。完璧に落ち着いていた。
「……数は八」
アイスブルーが壁を叩きながら、静かに言った。
「八人に囲まれたのに、なんで捕まったの、私たち」
「スタンガン使われたのよ。規格外のやつ。流石に効いた」
「あ〜、そういう理由ね」
ハニーイエローが納得した顔をした。
「じゃあ、今は?」
「今は捕まってる」
「それはわかってる。どうするの?」
三人はしばらく、部屋を見渡した。
扉は鉄製で厚い。監視カメラが一台。換気口が天井に一つ。
「私のやり方で行く?」
ホットピンクが立ち上がった。
「あなたのやり方って?」
「扉の前に立って、看守が確認に来たところを——」
「女性に手を上げるような人はいないわ、ここ」
アイスブルーが静かに遮った。
「……そうね。では別の方法で」
「天井の換気口は?」
ハニーイエローが見上げた。
「高さ三メートル。私では届かない」
「私も」
「…届く」
アイスブルーが一言言って、ハニーイエローの肩に足をかけた。
「ちょっ、急すぎる!」
「お願い」
「はいはい……!」
ハニーイエローが踏み台になる。ホットピンクが支える。アイスブルーが換気口に手をかけた。
「……固い。でも、いける」
「どういう力の入れ方してるの」
「鍛えてるから」
「え、どこを?」
「全部」
「ストイック……!」
ぎぎぎ、と金属が軋む音がした。
「……ちょっと待って。これ開いたとしても、中を通れる?」
「通れる」
「三人全員?」
「……二人は通れる。私は無理」
「なんで?」
「……肩幅」
ホットピンクが少し沈黙した。
「……アイスブルー、筋肉で肩幅増えたの?」
「増えた」
「代償がえぐい」
「仕方ない」
三人は再び作戦を練り直した。
「換気口はアイスブルーが使えないなら、扉から出るしかない」
「だから最初に私のやり方と言ったのよ」
ホットピンクが少し得意そうに言った。
「でも看守は来ないんじゃ——」
「来させるのよ」
ホットピンクは部屋の中を見渡した。
そして——隅に置いてあった金属製のトレーを手に取った。
「これ、音が出る?」
「出る」
「じゃあ——」
ホットピンクはトレーを壁に向かって力いっぱい投げた。
**ガシャーーン!!!!!**
「な、なんの音だ!?」
扉の外から声がした。
「今です!!」
「え!?」
鉄扉が開いた瞬間、看守が部屋を覗き込む。
その瞬間。
ホットピンクが倒れ込むように扉の隙間から滑り込んだ。
ハニーイエローが続く。
「最後ーー!!」
アイスブルーが走り、肩で看守を吹き飛ばして廊下へ出た。
「行くよ!!」
「待て!!」
三人は一斉に廊下を走り出した。
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「どっちが出口!!」
「こっちは下り!」
「逆!」
三人が廊下を爆走する。後ろから足音が迫ってくる。
「非常口どこ!!」
「…この施設、ネオ渋谷の地下区画よ。地上に出るなら——上よ!」
ホットピンクが見上げた天井に、「非常口→」の標識が光っている。
「あった!!」
三人は矢印に従って廊下を曲がる。
後ろの追手が増えていく。
「まずい……!」
「アイスブルー!」
「わかってる」
アイスブルーが立ち止まり、追手の先頭に向かって振り返った。
「——くる気なら来て」
それだけ言って、静かに立った。
「……!」
追手たちが一瞬足を止めた。
その一瞬で——ホットピンクとハニーイエローは非常口のドアを開け、地上へ続く階段を駆け上がった。
「アイスブルー!!早く!!」
「今行く」
アイスブルーは追手に向かってにっこり笑い——蹴りを一発入れて廊下に転がし、後を追った。
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「はぁ……はぁ……出た……!!」
ネオ渋谷の夜の街に、三人が転がり出てきた。
人通りのある路地。ネオンが輝いている。
「生きてる……!」
ハニーイエローがその場にへたり込んだ。
「当たり前よ」
ホットピンクが髪を整えながら言った。
「……ここはどこ」
アイスブルーが周りを見渡す。
「渋谷三丁目……っぽい?」
「光さんたちに連絡しましょう」
ホットピンクがスマートフォンを取り出した。
画面には、不在着信が二十三件。
全部光からだった。
「……お騒がせしました」
ホットピンクはそう言って、コールした。
ワンコールで繋がった。
「ホットピンク!!!生きているか!!!!」
受話口から、耳が痛いほどの光の声が飛び込んできた。
「……ええ、生きているわ」
「無事か!!どこにいる!!」
「渋谷三丁目。三人とも無事よ」
「よかった……!! 本当によかった……!!!」
光の声が、珍しく震えていた。
ホットピンクは少し目を細めた。
「……案外、心配性なのね、白銀 光」
「うるさい!!心配するのは当然だ! すぐに迎えに行く!!」
「来なくていいわよ。自力で帰る」
「それでも行く!!」
「…………」
ホットピンクは小さく笑った。
「ふふ、ありがとう」
隣でハニーイエローが「光さんいい人だね〜」と言い、アイスブルーが無言で頷いていた。
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三人が帰還したのは、それから二十分後だった。
白銀タワーのロビーで、光が三人を抱きしめた。
「無事で……本当によかった……!!」
「……社長、私には抱きつかなくていいです」
豪が一歩引いた。
「豪はいい! 豪は強いから心配してなかった!」
「それはそれで複雑です」
ロボ美は三人の顔を確認して、ほっとした表情を浮かべた。
「よかった……本当に、よかったです」
「ロボ美ちゃん、心配かけてごめんなさいね」
ホットピンクがロボ美の頭をそっと撫でた。
「でも、私たちのことより——作戦、どうなったの?」
光は三人を見渡した。
「これだけわかった」
光は静かに言った。
「お前たちが閉じ込められていた場所——シャドウが追跡を諦めた場所から逆算して、本拠地のある区画が絞り込めた」
「え、私たちが囮になったの?」
「なってくれた、と思うことにした」
「……まあいいわ」
「本拠地の特定まで、あと一歩だ」
光の目が、力強く光った。
「次こそ、こちらから動く」




