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ネオ渋谷のナルシストCEO  作者: AItak


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第四十七話:輝き!セレモニー!謎の女との運命の邂逅!

【本文】

ネオ渋谷駅前広場。


夕暮れに染まる空の下、真新しい商業施設「ネオ渋谷プラザ」のオープニングセレモニーが、今まさに始まろうとしていた。


巨大なステージには、金と銀のリボンがかかったテープが一本。その前に、長さ三十センチほどの大きな金ハサミが二丁、ずらりと並んでいる。


「社長、確認ですが——テープカットはお一人で行っていただくものです」


豪が事前に釘を刺した。


「わかっているとも!」


光はびしっと答えた。その目がすでに爛々と輝いている。隣には黄金 輝が同じような目をしていた。


「ふふ、光……本日も輝いているな」


「お互い様だ、黄金 輝」


「今夜の主役は、この俺だ」


「いや、俺だ」


「私です」


「ロボ美ちゃん!? なんでお前がそこに入ってくる!」


ロボ美はきょとんとした顔で首を傾げた。


「だって、セレモニーって、みんなで行うものじゃないんですか?」


「……そういうわけでもないんですが」


豪がそっとロボ美に説明する傍ら、ステージの上では司会者がマイクを手に取っていた。


「それでは、本日ご来場の皆様! ネオ渋谷プラザのオープニングセレモニーを執り行います! まずはテープカットを、白銀コーポレーションCEO・白銀 光様にお願いいたします!」


どよめく観衆。フラッシュが焚かれる。


「いざ!」


光はステージに颯爽と上がり、金のハサミを手に取った。


「ネオ渋谷よ! この白銀 光の輝きが、今宵さらに眩しく——」


「失礼、私も切らせてもらおう」


黄金 輝がもう一丁のハサミをすでに手に持ち、光の隣に並んでいた。


「黄金! なんで貴様がここにいる!?」


「俺もスポンサーだ」


「くっ……!」


「では、お二人同時にテープカットをお願いします!」


司会者が絶妙な機転を発揮した。観衆が拍手する。


「……ならば、競争だ」


「望むところだ」


二人は同時にハサミを構えた。


「「いきます!」」


パチン——!


見事に同時にテープが切れた。


しかし次の瞬間、二人とも相手を見て叫んだ。


「「な、なんだってー!? なぜ同時なんだ!」」


「社長方、お揃いで驚いておられますね」


豪がそっとロボ美に耳打ちした。ロボ美は「えへへ」とほほえんだ。


観衆の拍手が鳴り止まぬ中、セレモニーは和やかに続いた。


---


そして——。


セレモニーが終わり、光たちが会場内のパーティーエリアへ移動しようとしたとき。


人混みの中から、一人の女性がゆっくりと歩み出てきた。


真紅のドレス。漆黒の長い髪。そして、まるで宝石のように輝く、紫の瞳。


その女性は、まっすぐに光たちへと近づいてきた。


周囲の人が、まるで波のように左右へ退いていく。


「あら……本物の白銀 光は、想像よりずっと輝いていたのね」


「!?」


光は思わず振り返った。その美しい女性が、微笑みを浮かべながら自分を見ている。


「ふふ、初めまして。私の名前は……そうね、ダーク・グレイスと呼んでちょうだい」


「……ダーク・グレイス?」


光は眉をひそめた。その名に覚えはない。しかし、この圧倒的な存在感——ロード・ビューティーとはまた違う、底冷えするような強さを感じた。


「社長……」


豪が無言で一歩前に出た。その目が鋭くなっている。


「ふふ、護衛の方ね。残念だけど、今日は戦いに来たわけじゃないの」


ダーク・グレイスはそう言いながら、光の後ろにいるロボ美へと視線を移した。


「ロボ美……ね」


「え? あ……は、はじめまして」


ロボ美が戸惑いながらも、ぺこりとお辞儀する。


ダーク・グレイスはそのロボ美をじっと見つめ——一瞬だけ、表情が揺れた。


しかしすぐに、いつもの妖艶な笑みを取り戻した。


「あなたのロボ美……少し、借りるわ」


「何を言っている! ロボ美ちゃんは俺の大切な仲間だ! 誰にも渡さない!」


光が前に出る。その目に、珍しく真剣な炎が宿っていた。


「まあ……今夜はそういうつもりはないわよ。ただ、ご挨拶に来ただけ」


ダーク・グレイスはそう言いながら、くるりと踵を返した。


「次に会う時は……もう少し覚悟しておいてちょうだい、白銀 光」


「待て! 逃がすか!」


「豪! 止めろ!」


光と豪が同時に動いた。しかし——気づいたときには、ダーク・グレイスの姿は人混みの中にすっかり消えていた。


まるで、最初からそこにいなかったかのように。


「…………」


光は拳を握りしめる。


「社長……」


豪が静かに声をかける。


「わかっている」


光は低い声で答えた。


「あの女……只者じゃない」


その隣で、ロボ美はダーク・グレイスが消えた方向をじっと見つめていた。


(あの人……さっき、私を見た時……一瞬だけ、別の顔をしていた気がする……)


ロボ美の感情回路が、微かに揺れる。


「ロボ美ちゃん、大丈夫か?」


光がロボ美の顔を覗き込んだ。


「……はい。大丈夫です、光さん」


ロボ美は笑顔を作った。しかしその目の奥には、今まで感じたことのない——何か、複雑なものが揺れていた。


---


「それで、その女の正体は?」


翌日、白銀タワーのオフィス。光は険しい顔で豪に問いかけた。


「調査中ですが……『ダーク・グレイス』という名は偽名と思われます。現時点では正体不明」


「新たなる秩序との関係は?」


「ほぼ確実に関係があると思われます。ただ……ロード・ビューティーとは格が違う可能性が高い」


豪が珍しく、やや表情を曇らせた。


「ロード・ビューティーは舞台の下手な役者でした。しかし、昨夜の女は……舞台そのものを動かす演出家かもしれません」


「………」


光は腕を組み、窓の外を見た。


ネオ渋谷の空は今日も青い。しかし光の目には、どこかに影が差しているように見えた。


「ロボ美ちゃんを守る」


光は静かに、しかしはっきりと言った。


「それだけは、絶対だ」


「……はい」


豪が短く答えた。その目に、珍しく力強いものが宿っていた。


---


一方、ネオ渋谷の地下アジトでは——。


「……ふふ」


ダーク・グレイスは、椅子に腰掛けて目を閉じていた。


「思っていたより……面白い子ね、ロボ美」


右腕のシャドウが無言で控えている。


「あの目……純粋だった。迷いがない。感情が……本物だった」


ダーク・グレイスの手が、微かに動いた。


「……羨ましい」


その言葉は、ほとんど声にならなかった。


シャドウは黙って聞いていた。


しかし次の瞬間、ダーク・グレイスは表情を引き締めた。


「でも……感傷に浸っている時間はないわ」


「次の作戦を実行しなさい、シャドウ」


「……了解しました」


シャドウが静かに一礼し、暗闇の中へと消えていった。


ダーク・グレイスは再び目を閉じた。


薔薇の香りが、地下の空気に漂う。


そして——その頬を、一筋の何かが伝いそうになって……止まった。


(感情がない人間は……泣けないのよ)


彼女は静かに、一人でそう呟いた。



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