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一方、鏡の中に引き摺り込まれた結稀とアーシェが連れてこられたのは、子供部屋のようだった。大きなベッドの上に勢い良く飛び込んだ2人を迎えたのは、大きなリボンのドレスを身に纏った少女だった。
「キラキラした綺麗な御目目にサラサラの髪・・・貴女とても素敵ね。」
少女は微笑みを浮かべながら、結稀に近づきゆっくりと手を伸ばす。
「エミリーの新しいお人形さんにしてあげる。」
少女の言葉の意図が分からず困惑の表情を浮かべる結稀。少女の指が結稀の胸の辺りに触れようとしたその時ー 黒い刃が少女の腕をズバッと斬り裂いた。それと同時にアーシェが結稀の体ををグイっと引き寄せ、彼女を庇う様に抱き締める。
「結稀に触るな。」
アーシェは片手を翳し、エミリーと名乗った少女に向けて更に黒い刃の斬撃を仕掛ける。しかしエミリーは自身の背後に現れた鏡の方へ吸い込まれるように入って姿を消してしまい、斬撃は残った鏡だけを破壊したのだった。
「助けてくれてありがとう、アーシェ。」
「ああ。だが、また直ぐ襲ってくる筈だ。気を付けろ、結稀。」
2人は背中合わせになって互いを護る様に構え、辺りを見廻す。部屋の中には綺麗なドレスで着飾られた女性達が沢山並べられていた。2人は女性たちに近付いてみたが、彼女達はぴくりとも動かず、反応も無い。全く生気が感じられず、正に“人形”と化していた。
「魂を奪った人間で人形遊びか...随分と悪趣味な遊びだな。」
「この人達、何とか助けられないかな?」
結稀の問い掛けに、アーシェはふるふると首を振り「無理だ。」と静かに答えた。
「魂を奪われてから時間が経ち過ぎてる。蘇生は不可能だ。」
「そっか・・・。助けてあげられなくて、御免なさい。」
アーシェの言葉を受け、結稀は冷たい人形に成り果てた女性達に向けて悲しそうにそう小さく囁いた。そして結稀がゆっくりと女性達から離れようとした時 ー
死んでいる筈の女性達が突如動き出し結稀とアーシェに向かって飛び付いたのだった。
「わぁっ!?」
「ちっ。動きづらいな。」
2人の動きを封じるように体を掴んだり覆い被さってくる女性達を振り解こうと藻掻く結稀とアーシェ。その周りに鏡が複数現れ、その中の1つから出て来たエミリーが結稀の腕を掴む。
振り解こうにも、鎌じゃ周りの女性達の遺体も傷つけてしまう。・・・そうだっ!あれならなんとかなるかも。
結稀はブレスレットに力を込め細いワイヤ―の様な物を出現させると、そのワイヤーで少女と女性達を拘束し動きを封じたのだった。そしてエミリーの手を振り解いた結稀はアーシェとアイコンタクトをとり同時に攻撃を仕掛ける。結稀の時の力の込められたナイフとアーシェの黒い斬撃がエミリーの体を斬り裂き、ダメージを受けた事で女性達の操りが解けた。その一瞬の隙を衝き女性達を一カ所に集めると、彼女達を包む時の力の結界を張ったのだった。
「このまま畳みかけるぞ。」
「うんっ!」
大鎌と黒いオーラを纏った鉤爪を勢い良く振り下ろしエミリーに止めを指そうとする結稀とアーシェ。2人の攻撃がエミリーに届く直前、地面から放たれた波動が結稀とアーシェに襲い掛かる。間一髪で攻撃を躱した2人の前に、地面に現れた黒い穴から飛び出したスタンが立ちはだかる。
「お嬢様はやらせません。」
スタンが手を翳すと、床一面が無数の針地獄と化した。2人は直ぐに上空に飛び上がり針を躱すと、空中で体勢を整える。アーシェはスタンの周囲に無数の黒い剣を出現させ一斉に放った。しかしスタンは直ぐ傍に出現した鏡の中に消え剣の攻撃をかわす。そしてアーシェの背後に現れた鏡から飛び出て来たスタンは手にしている包丁を斜めに勢い良く振り下ろし、気配に気づき振り返ったアーシェの体を斬り裂こうとした。ところが、斬り裂かれたかに見えたアーシェの体は数多の蝙蝠となり四方に散らばって行ったのだった。結稀は亡霊達に囲まれている少女目掛けて大鎌を勢い良く振るった。大鎌は少女と亡霊達の体を斬り裂いたが、斬り裂かれた亡霊達の体は即座に再生され、少女もくすくすと笑いながら姿をくらませた。部屋一杯の亡霊達を蹴散らし、2人の隙を衝く様に襲ってくるエミリーとスタンの攻撃を躱す結稀とアーシェ。
・・・倒しても倒しても亡霊達は直ぐ復活しちゃう。何か倒す方法はないのかな?
結稀が何か打開策が無いか辺りを見廻していると― 2カ所の壁が斬撃と爆撃で派手に破壊されたのである。
「何とか皆と合流出来たみたいだね。」
「ひっ・・・またお化けが一杯・・・。勘弁して下さい!!」
「皆無事みたいで良かったよ!」
「良カッタデス。」
「どこが無事よっ!!大量のお化けに襲われてる真っ最中じゃないのよっ!!」
クロノス達はそれぞれ武器をかまえると、亡霊達に攻撃を仕掛けていく。エミリー、スタンと交戦している結稀、アーシェに視線を向けたハイネは、2人に向けて「結稀!アーシェ!」と大きな声で話しかける。
「その2人の力の核となる人形か何かがこの部屋の何処かにある筈!それを見つけて破壊してっ!!それできっと倒せる筈だよっ!!」
2人は力強く頷くと、神経を研ぎ澄ませ邪悪な気配の濃い場所を探る。そして、部屋の隅にある綺麗な装飾の施されたチェストに目を留めた。
「そっちに行ったら駄目よ。」
エミリーが結稀の直ぐ傍に現れ捕まえようと手を伸ばす。部屋に居た亡霊達も結稀とアーシェを阻もうと2人に向かって一斉に集まって来た。そんな亡霊達をクロノス、ハイネ、コロン、クレア、ミリアの斬撃や砲撃、魔術が一掃していった。クロノス達の足止めの隙を衝いて、アーシェがチェストに向けて黒い刃の斬撃を仕掛ける。しかしその斬撃はその前に立ちはだかったスタンに阻まれてしまった。
「この身に代えても・・・お嬢様は護り抜きます。」
「ううん、もう終わりだよ。」
斬り裂かれた傷を再生させながら小さく呟くスタンのすぐ横に一瞬で降り立つと、結稀は大鎌を勢い良くブゥンッと振るった。大鎌はスタンの体とチェストを同時に真っ二つに斬り裂いた。斬り裂かれたチェストからちらりと見えたのは、同じように半分に斬り裂かれたエミリー、スタンにそっくりの人形だった。
「申し訳ございません・・・お嬢様・・・」
「スタン・・・」
互いに向かって手を伸ばすエミリーとスタン。2人の体はぼろぼろとゆっくり崩れていったのだった。そして2人が消えると、彼女達が操っていた亡霊達も全て消滅したのだった。
「お・・・終わったの?」
ビクビクしながら辺りを見廻すクレアに、結稀は気配を探りながら「うん、もう気味の悪い気配みたいなのは感じないし、多分大丈夫だと思う。」と答える。一同は亡霊達から解放された事にほっと安堵し、出口へと向かう為部屋を後にしたのだった。




