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時の契りと異世界統一  作者: 椿
第6章 : Rainy Haunted House 
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3

 「取り敢えず、1回適当な部屋を開けてみようよ。」

 怖がる様子も無くいつも通りのマイペースな口調で一言そう語ると、ハイネは目に付いた部屋のドアノブを手に取り、ゆっくり開けた。開いた部屋は品のある食器やカトラリーが並べられた大きなテーブルが真ん中にあるダイニングルームだった。

 「ミリアの気配は感じられない・・・。此処には居ないのかな?」

 ハイネの後に続き中に入り部屋の中を見廻す結稀。ミリアに繋がる些細な手掛かりも逃さぬよう、神経を研ぎ澄ませ部屋の様子を探っていく。すると警戒を強める結稀達へ向けて、部屋中の食器やカトラリー、包丁等が突如浮かび上がり、飛んで襲い掛かって来た。

 「ひぃいいいっ!?こ・・・これってポルターガイストッ!?いやぁぁ!?」

 恐怖で叫び声を上げながら、乱暴に杖を振り回し雷の魔法を部屋中に放つクレア。

 「ちゃんと敵の攻撃に当てろ!!この下手糞!!」

 チッと舌打ちしながら、ポルターガイストの攻撃とクレアの雷をサッサッと躱し冷たく言い放つアーシェ。そんな彼に、クレアは不服そうにキッと睨みながら「だって怖いんだもの!!仕方ないでしょ!!」と反論する。

 此処で足止めを喰らっている場合じゃない・・・。早くこの部屋を脱出してミリアを捜さないと。

 仲間の位置と出口の扉を順番に見据えながらポルターガイストの攻撃を受け流していく結稀。そんな彼女に向けて、突如魔の手が伸びたのだった。


 「!?」


 彼女の直ぐそばにある大きな鏡から子供の手が現れ、彼女の腕を掴んだのである。そしてその手は強い力で彼女を鏡の方へぐぃっと引っ張ったのだった。

 「結稀っ!?」

 鏡の中に引き摺り込まれる結稀を助けようとアーシェが手を伸ばす。そして彼女の手首を掴む事に成功したアーシェだったが ― 結稀と一緒に鏡の中へと入り込んでしまったのだった。

 「結稀!!アーシェ!!」

 鏡の中へと消えて行った2人を心配し駆け寄ろうとするクロノス。彼が一歩踏み締めた瞬間、足元に大きな穴が出現する。クロノスはずるりと穴の中へと落ちて行き、謎の穴は彼を吞み込んだ後直ぐに姿を消してしまったのだった。

 「ク・・・クロノスまで消えちゃった!?やばいわ、ハイネ!!どっ・・・どうしようっ!?」

 仲間が次々と消えていくこの状況に動揺を隠せずパニック状態に陥るクレア。

 「落ち着きなよ、クレア。結稀達なら分断されても上手く対処出来るでしょ。それより今は、僕達が無事にこの部屋を脱出する方が先決だよ。」

 ハイネは落ち着き払った声でクレアをそう窘めると、魔武器の銃を両手に構え発砲した。彼の放った魔弾はポルターガイストの攻撃に命中し次々と撃ち落としていった。コロンも戦闘モードを起動し武器を構えると、一斉に弾丸を放ちナイフや皿等を一気に払い落としていった。怯えながら迎撃していくクレアとは対照的に一切動じる事無く流れる様な動きで攻撃を防ぎ、躱し出口へと進んで行くハイネとコロン。出口まであと少しという所まで近付いたハイネ達だったが―


 「何処へ行くおつもりですか、お客様ぁ?」


 妖し気に笑みを浮かべるメイド服の女性が現れ、ハイネ達目掛けてブゥンッと勢い良く大きな出刃包丁を振り下ろした。ぐぃっとクレアを引っ張って庇いつつギリギリでそれを躱しメイドと距離をとったハイネは、真っ直ぐ彼女の方へ視線を向けた。

 「僕達に何か用?今人を捜してて忙しいんだ。君に構ってる暇は無いよ。」

 キッと鋭い眼差しでメイドを睨み、警戒心と敵意を込め言い放つハイネ。蒼褪めた表情のクレアはそんな彼の腕にギュッとしがみ付きつつ背後から恐る恐るメイドの様子を伺い杖を構える。

 「つれないですねぇ。もう少し、このルルのおもてなしにお付き合い下さいませぇ。」

 彼女が出刃包丁を持ったまま両手を広げると、部屋一帯に悍ましい亡霊達が出現した。

 「あははっ。随分熱烈な歓迎だね!」

 「笑い事じゃないわよっ!!」

 聖銀でつくられた聖属性の魔弾を装填しながら笑うハイネに、クレアは怒りのツッコミを言い放つ。

 そんな彼等にルルと名乗ったメイドは怪しげな笑みを浮かべると、両手に握る包丁をゆっくりと構えた。そしてその直後、その包丁をブゥンッと力強く振るった。すると禍々しい妖気の籠った斬撃がハイネ達目掛けて放たれたのである。ルルの斬撃とゾンビ達の攻撃が容赦無く襲い掛かるが、涙目のクレアが広範囲の雷で薙ぎ払う。

 「うふふ。まだまだおもてなしはこれからですよぉ!」

 ルルが両手を高く掲げると、蹴散らした筈の大量の亡者達が再び出現した。3人を嘲笑うかの様に退治しても次から次へと湧いてくる亡者達。更にルルの斬撃が彼等に追い打ちを掛けていく。


 ・・・このままじゃキリが無いな。何とか突破口を見つけないと。


 「コロン、この部屋で邪悪な魔力が一番濃い場所を探してくれ。」

 ハイネがこっそり命じると、コロンは直ぐに部屋の解析を始める。そして部屋全体に意識を集中させ隅々まで調べ上げたコロンは、直ぐに目的の場所を見つけ出したのだった。

 「テーブルノ床下ニ“隠シスペース”ガアリマス。其処ガ一番魔力ガ濃イ場所デス。」

 コロンの言葉を受けたハイネがテーブルの方へスッと視線を向けると、その下にほんの微かだが色の異なる不自然な箇所がある事に気付いた。

 「流石コロン!!僕の自慢の相棒だ!!」

 ハイネがニッと笑い銃を構えながらそう言うと、コロンは「当然デス!」と胸を張った。ハイネの狙いに気付いたルルが、邪魔をしようと彼目掛けて斬撃を放った。大勢の亡霊達もそれに呼応するように一斉にハイネの方へ襲い掛かって行った。

 「あなたの思い通りになんかさせないわよっ!!」

 クレアの強烈な雷が斬撃と亡霊達を一気に蹴散らした。そこにすかさずコロンが追撃の波動を放ちクレアの雷から逃れていた斬撃と亡霊達を排除していった。その一瞬の隙を逃さず放たれたハイネの渾身の一発がテーブルの下に隠されていた“あるもの”を見事に撃ち抜いた。

 「そんな・・・私の・・・体が・・・」

 床に大穴が開く程の威力の一撃を喰らったルルそっくりの人形がぼろぼろと崩れ滅びていくのと同じように、彼女自身の体も消滅し始めた。そして彼女の姿が消えてしまうと、亡霊達も姿を消し再び室内に静寂が戻ったのだった。

 「た・・・倒したの?また出て来たりしないわよね!?」

 ぶるぶると震えながら周囲をキッと睨みつけるクレアだったが、暫く身構えても何も起こらない事をかくにんすると、ふぅっとため息を吐き「良かったぁ~・・・」と小さく言葉を絞り出した。

 「気を抜くのは早いよ。急いで此処を出て結稀達を捜さないと。」

 へたっと倒れ込むクレアに手を差し伸べ語り掛けるハイネに、クレアはこくりと頷く。3人は扉の前に辿り着くと、一呼吸間をおいてゆっくりと部屋を出た。無事に部屋から出られた事にほっと安堵した彼等は、直ぐに気を引き締め次の扉の前に立つ。

 「さぁ、次に行こうか!」

 「ハイ。」

 「う゛ぅ~・・・もう早く皆を見つけて帰りたい・・・。」

 3人はそれぞれ心の準備を済ませると、仲間を捜す為次の部屋へと足を踏み入れるのだった。


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