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「あの眼鏡野郎・・・マジで腹立つ!銀髪の餓鬼諸共ぶっ殺してやるっ!!」
時を少し遡り、結稀達が洞窟へと赴く少し前。ハンター集団のリーダーであるトーマスは、抑え切れない怒りの感情を言葉に乗せぶつけていた。
「本当に、生意気でムカつく奴等っスよね!!あんな奴等、けちょんけちょんにやっつけてやりましょうよ!!」
手下の男の1人が拳を握り締め、威勢良く叫ぶ。
「おうっ!さっきは油断したが、今度は容赦しねぇ!!二度と舐めた態度取れねぇ様にぶっ潰してやるっ!!」
トーマスはフンッと鼻息を荒げながらそう語ると、ササッと早足で歩き出した。そして先程追い出されたハイネの工房まで辿り着くと、こそっと隠れそぉっと中の様子を窺った。窓から中を覗いてみると、ハイネと先程邪魔をしてきた少女達が楽し気にお喋りをしていた。耳を欹てて会話の内容を聞いてみると、どうやら彼等は魔石を手に入れる為に洞窟へ行こうとしているらしい。
貴重な魔石を手に入れて売り捌けば大金を稼げる!それに奴等にこっそり付いて行けば、仕返しのチャンスもやって来る筈!!
「さぁ。あれを潜れば洞窟だよ。」
ハイネが空間の穴を作り出し、銀髪少女達に声を掛ける。
「お前等!俺達もあの中に入るぞ!!」
空間の穴を通り洞窟へと向かうハイネ達に気付かれない様に忍び足で近付いて行き、彼等の後に続いてトーマス達はサッと紛れ込み空間の穴の中へと入る。穴を抜けると、奥深くまで暗闇が続く洞窟が目の前にあった。トーマス達は岩陰に隠れると、ハイネ達が洞窟内へと入って行くのを見届ける。そして間を置いて少し距離を取ってから、トーマスは仲間に目配せして洞窟の中に入って行った。
「真っ暗でじめっとして・・・気味悪い洞窟だな。」
ハイネ達にバレない様に薄っすらと灯りを灯しゆっくりと進みながら、トーマスは眉を顰める。少し歩いて行くと、洞窟内の壁にキラキラと赤や青等の様々な色が輝くのが目に入り始めた。
「こりゃ大漁だぜ!!がっぽり採ってやるぞ!!」
ハイネ達の動向に気を配りつつ、トーマス達は魔石を採取し始める。御機嫌気分で魔石を集めていたトーマス達だったが ―
カサカサッ
突如足下や背中等に何かが這う気持ち悪い感覚が奔る。背筋がゾクリとする様なその感覚に驚き目を向けると、蜘蛛がトーマス達の体を素早くカサカサと這っていた。
「うわぁっ!?」
驚きで目を見開き蜘蛛達をパッと払い除けるトーマス達に、蜘蛛達は次々と近寄って行く。
「ちぃっ!?」
トーマスは土を尖らせ蜘蛛達を突き刺していくが、退治しても退治しても次々と湧き出てくる。じりじりと追い詰められ、トーマス達は横道の方へ入り逃げ出した。走り出したトーマス達の前に、今度は先程の蜘蛛達よりも巨大なギガスパイダーが4・5匹現れる。ギガスパイダーは彼等に向けて糸を放ち絡め捕ろうとしてくる。トーマスは大きな土人形を作り出しギガスパイダーを潰させると、ギガスパイダーの亡骸を踏み越えて仲間と共に更に先へ進んで行った。そんな彼等の後を、小蜘蛛やギガスパイダーの大群が追い駆けてくる。
くそっ!!眼鏡野郎達も見失っちまった・・・。こんな蜘蛛の化け物がうじゃうじゃ居る洞窟・・・さっさとずらかってやるっ!!
暫く走り続けていると、だだっ広い空間に辿り着いた。直ぐにこの場所を通り過ぎようとしたトーマス達。しかし突然体がぴくりとも動かなくなってしまう。
「なっ、何だっ!?」
何とか進もうと強く藻掻くが、体は全く動かない。動きを封じられたトーマス達に、上空から大量の蜘蛛の糸が放たれる。体中に絡み付く糸の隙間から上を見上げると、其処には今までの蜘蛛達とは比べ物にならない程のかなり巨大なギガスパイダーがカタカタと足を動かしながら此方を見下ろしていたのだった。
「ギャアアアアッ!!!」
余りにも恐ろしい光景に、トーマス達は目に薄っすら涙を浮かべ大声で悲鳴を上げる。身動きがとれず恐怖に震えるトーマス達に、超巨大ギガスパイダーは容赦無く牙を突き立てる。
「ぐぁぁっ!?」
牙が突き立てられた箇所に激痛が奔り苦悶の表情を浮かべるトーマス。傷口に焼ける様な熱さとジクジクと脈打つ様な痛みが襲い掛かり、トーマスの意識は飛びそうになってしまう。毒に侵され苦しむトーマスを前に、特大ギガスパイダーはガバッと大きく口を開く。
あぁ・・・畜生っ!!こんな所で化け物に喰い殺されるなんて・・・最悪過ぎるぞっ!?
迫り来る死への恐怖にギュッと目を瞑りギリッと歯を食い縛るトーマス。ギガスパイダーの牙が今にも彼の体に届きそうな程に接近したその瞬間 ―
「!?」
彼等にきつく絡まっていた糸がはらりと解けたのである。そしてトーマス達はギガスパイダーから少し離れた場所まで瞬く間に移動したのだった。
「危ない所だったね。」
「!?お前は銀髪の餓鬼っ!!どうして此処にっ!!」
予想外の人物の登場に、トーマスは驚きを隠せず目を見開き大声を出す。そんな彼に、結稀は明るくニコッと笑顔を向ける。
「悲鳴が聞こえたから、様子を見に来たんだ。」
結稀は一言答えると、トーマス達に向けて片手を翳し魔力を込める。すると傷を負い毒に侵されていた彼等の体が一瞬で癒えたのである。
「治療が終わったなら、此処は危険だからさっさと街に帰りなよ。」
まだ困惑しているトーマス達の襟首を掴むと、ハイネは空間の穴に彼等をポイポイッと放り込む。
「おいっ!?いきなり何しやがる・・・って、ぉおっ!?街に戻って来たのか。」
トーマス達が放り込まれた先は、ヒースの街の少し暗い路地裏だった。
戻って来られた・・・。あの化け物から逃げられた!!俺達助かったんだっ!!
危機を脱し安堵したトーマスは、緊張が解けその場にへたぁっと座り込んだのだった。




