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一方、双子と別れた結稀達は湖から少し東に進んだ所にある小さな村の中を歩いていた。
「クレアとミリア・・・ちゃんとヒースの方に向かってるかな。また行き倒れたりしてないと良いけど・・・。」
森の中で空腹に倒れる2人の姿を想像し、結稀は心配そうにぽつりと呟く。
「う~ん・・・。正直、私もかなり悪い予感を感じるんだよね・・・。」
眉尻を下げ歯切れの悪い言葉を返すクロノス。結稀とクロノスは顔を見合わせながら不安そうに「う~ん・・・。」と小さな声を出す。
「彼奴等何だかんだで結構しぶとそうだから、大丈夫そうな気もするけどな。」
アーシェは淡々とした口調でさらっと一言述べる。そんな彼の言葉に、結稀が「だと良いけど・・・。」と答えたその直後 ―
パァァァンッ!!
突然森の方から強力な魔力の気配と共に大きな音が轟いてきた。其方の方に視線を向けると、雷と水の融合した特大の波動が豪快に爆ぜている光景があった。
「あの爆発・・・立ち入り禁止区域の方からじゃ・・・。」
「!?済みません。立ち入り禁止区域について、教えて貰えませんか?」
近くを通り掛かっていた村人がぽつりと呟いた言葉が耳に入り、結稀は彼女の方へタタッと駆け寄り問い掛ける。村人は突然声を掛けられ戸惑いながらも、立ち入り禁止区域について語り始める。
「さっき大きな音がした方に立ち入り禁止の森があるんだよ。その森に魔力を吸い取る突然変異種スライムが最近現れる様になってねぇ。村の男達や国の兵隊さん達が駆除を試みたんだけど、凶悪で歯が立たなくて・・・。危ないから誰も立ち入れない様に柵をしていた筈だけどねぇ。」
表情を曇らせながら説明する村人の言葉に、結稀の不安も跳ね上がる。
ヒースの方角とは全然違うけど・・・今の魔法の気配、クレアとミリアのものに似てる気がする。
結稀がちらりとクロノスやアーシェの方に視線を向けてみると、2人も何か只ならぬ空気を感じ取ったらしく、爆発のあった方を真剣な面持ちで見つめていた。
「何か嫌な予感がする・・・。クロノス、アーシェ、爆発のあった場所に行ってみよう。」
結稀の真剣な眼差しに、2人はこくりと頷く。そして3人は爆発のあった森の方へ急いで駆けて行った。
力が・・・入らない・・・。
スライムに呑み込まれ身動きの取れない暗闇の中で、クレアは己の中の魔力を振り絞ろうとするが、ほんの僅かな閃光さえも放つ事が出来ない。
私が森に入る道を選んだばっかりに、ミリアを危険な目に遭わせてしまった。御免・・・ミリア・・・。
妹を危険に巻き込んでしまった事を悔やむクレアだったが、どうする事も出来ず意識も段々と遠のいていってしまう。動く気力も無くなり諦めかけていたその時 ―
「クレア!!ミリア!!」
ぼんやり薄れていく意識の中で、自分達を呼ぶ声が幽かに聞こえ、クレアは目を少しだけ開く。すると次の瞬間、全身を覆っていたスライムがスパッと払い除けられ、1人の少女がクレアとミリアの腕を引っ張り彼女達を助けたのである。
「!?結稀、どうして・・・。」
「私達、スライム達に呑み込まれていた筈では・・・。」
「爆発音が聞こえて、心配で来てみたんだ。間に合って良かった!」
目を大きく見開き驚くクレアとミリアに、結稀は2人の怪我を治療しながらにっこり笑い掛け答える。佇む3人に、四方八方からスライム達が飛び掛かって来るが、結稀と共に来ていたクロノスとアーシェがスライム達を勢い良く薙ぎ払った。
「此奴等が例のスライムか・・・。」
アーシェは黒い刃を構えスライムを鋭く睨み付けると、スライムの方へ素早く駆け抜ける。
「あっ、斬ってはいけません!!分裂して増殖します!!」
アーシェがスライムを斬り裂く瞬間、ミリアの声が響き渡る。斬り裂かれたスライムはアーシェににゅるっと絡み付こうとするが、彼は後方に飛び退きつつ魔力を放ちスライムを弾いた。
「ふんっ。なら・・・これでどうだ!」
アーシェは出現させた黒い刃に呪詛の魔力を込めもう一度スライム達を斬り裂いた。斬り裂かれたスライムは刃から吸収した呪詛の魔力により体がボロッと崩れ破壊されてしまう。
「はぁぁっ!!」
更に襲い掛かって来るスライム達に、結稀も大鎌を振るい立ち向かう。彼女はスライムの時の流れを止め分裂・増殖を防ぎつつスライム達を斬り裂いていく。
「君達は私の後ろに。」
クレアとミリアの周囲にもスライム達が群がり飛び掛かろうとするが、クロノスが時の流れを遮断して防壁を造り双子をスライム達から護る。
結稀達の手によりどんどんとやられていくスライム達。彼等は結稀達に抗う為一カ所へ集まり1匹、また1匹と融合していく。そしてスライム達は合体してみるみる巨大化していき、最終的に高さが何十メートルもある特大スライムへと変貌した。特大スライムはその場に居た結稀達5人の方へ体をにゅるんと伸ばし全員を呑み込んだ。
・・・スライムの中は重くて動き辛いな。
結稀は前に片手を翳すと、自分達を取り込む巨大スライムに向けて力を込めた。結稀の時を操る力で時を巻き戻されたスライムは、融合が解けてバラァッと散り散りにバラけてしまう。
「アーシェ!!」
「あぁ!!」
結稀の呼び掛けに答えると、アーシェは辺り一面に無数の黒い刃を長く伸ばし足場を作る。結稀は自分とアーシェに速度を速める術をかけると2人同時に駆け出した。2人は黒い刃を踏み台にしながら目にも留まらぬ速さでバラけたスライム達をどんどん斬り裂いていく。時を止める結稀の刃と呪詛で体を蝕むアーシェの黒い刃がスライム達を撃退し続け、最後の1匹もあっと言う間に消滅した。
『・・・凄い。』
スライム達を退治し終えストンと着地する結稀やアーシェ、そして自分達の前に立つクロノスを順に見つめながら、クレアとミリアは静かにぽつりと呟いたのだった。




