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時の契りと異世界統一  作者: 椿
第3章:迷宮 ― ダンジョン ―
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5

 一方、時をほんの少し遡り結稀を捜し出そうとダンジョンの中を駆け抜けるクロノス達。

 「結稀っ!居たら返事をしろっ!!」

 アーシェは大きな声で呼びかけ続けているが、返事は帰って来ない。

 「この辺りにも居ないのか・・・。方角は合っている筈だから・・・もっと奥の方に居るのかもしれない。」

 辺りを見廻しながら、クロノスが真剣な面持ちで語る。そんな2人の行く手を阻もうと、ゾンビやゴーレムが迫って来る。

 「どけっ!」

 アーシェは自身から黒い刃を出現させ、モンスター達を斬り裂いていく。クロノスも時の神の力で自身のスピードを加速させながら、モンスター達を退治し先へ進んで行く。

 何処に居るんだ、結稀・・・。

 込み上げてくる焦りや苛立ちを抑え込みながら、アーシェはダンジョン内の捜索に意識を集中させる。そうして暫く捜索を続ける2人だったが ―

 「!?」

 アーシェとクロノスは同時にぴたっと立ち止まり、床の方にスッと視線を向ける。

 「この下に・・・結稀が居る。」

 「あぁ、気配を感じる。」

 結稀・・・今助けに行くぞ。

 アーシェは黒い刃を形成すると2人の周囲の床をスパァンッと斬り裂いた。円形に斬り裂かれた床は2人を乗せてサッと真下へ落下していく。落下していく最中真っ先に目に飛び込んだ銀色の髪の少女の姿に、アーシェはやっと会えた喜びと一刻も早く彼女の許へ行きたいという思いが込み上げるのを感じた。床にストンと着地すると、アーシェとクロノスは一目散に結稀の許へと駆け寄って行った。

 「大丈夫か、結稀?怪我は無いか?」

 アーシェは結稀の両肩を掴みとても心配そうな表情で問い掛ける。隣に居るクロノスも心配そうに様子を窺っている。

 「大丈夫。心配かけて御免ね。」

 ふにゃっと明るい笑顔を見せ、一言結稀が答える。その言葉にアーシェはほっと安堵の表情を浮かべ、結稀をギュッと強く抱き締めた。

 「無事で良かった・・・。」

 耳元で呟かれた小さな言葉に、結稀はそっとアーシェの背中に手を掛け「心配してくれて有難う。」と答えた。そんな2人の姿に、クロノスも優しい微笑みを浮かべる。

 「仲間との再会に水を差して申し訳無いが、今は武器を構えた方が良いのではないか。」

 金髪の騎士が苦笑しながら3人に一言声を掛ける。彼の言葉にハッと我に返った3人は迫り来る大百足やゾンビ、ゴーレムを見据え各々臨戦態勢を執る。結稀はダッとモンスター達の方へ疾走していき、大鎌を振るって1匹、また1匹とモンスターを斬り裂いていく。アーシェの無数の黒い刃とクロノスの凄まじい速度の斬撃も、モンスター達を撃退していく。

 「中々やるな。これは我々も負けてはいられないな。」

 金髪の騎士は剣にぐっと力を込め構える。すると大剣は白く眩い光を放ち、騎士は白く輝く剣を握りまるで閃光の様に目にも留まらぬ速さで駆け出して行く。その流麗な剣捌きに、モンスター達は成す術無く倒されていく。彼の後ろに控えていた騎士達も、彼に続く様に動き出しモンスター達と闘いを繰り広げていく。集まった大勢のモンスター達を撃退していく結稀達だったが ―

 ズズゥゥンッ

 突如ダンジョンが激しく揺れ、壁や天井がガラガラッと崩れ始める。

 「あそこ見て!!」

 結稀が指差したのは部屋の一番奥にある台。部屋の床より少し高い円形の台である。

 「入口の台とそっくり。あの台から外に出られるかもしれない。」

 結稀の言葉に、一同は台を目指そうと走り出す。しかし天井から落ちて来る瓦礫や大勢のモンスター達に行く手を阻まれ中々進めない。

 このまま崩れゆくダンジョンの中でモンスター達の相手をしている訳にはいかない。

 結稀は片手を天井に向けて翳し力を込める。するとぐらぐらと揺れ崩壊し始めていたダンジョンも、周囲のモンスター達もぴたりと動きを止めた。

 「僕がダンジョンの時を止めてるから、その間に皆で脱出しよう!早く!」

 結稀の声掛けを受け、皆は台の方へと急いで走る。そして皆が台の上に乗ると、入って来た時と同じ様に魔法陣が現れ、光の幕が結稀達を包み込んだ。そして次の瞬間、結稀達はダンジョンの前の台の上に戻っていた。

 「やった!外に出られた!」

 結稀がパァッと明るい笑顔を浮かべ喜んでいると、彼女達の後ろでゴゴォッという大きな音を立て崩壊しながらダンジョンは消滅していった。ダンジョンは跡形無く消え去り、塞がれていた道が結稀達の前に現れた。一段落ついてちらりと周りを見廻してみると、騎士達の一部に怪我を負った人達が居て少し離れた隅の方で治療を受けていた。結稀は彼等の方へ駆け寄り時を操る力を使って負傷者の治療を手伝った。

 「部下達の治療を手伝ってくれた事、感謝する。私はリヴァント王国 国王陛下直属 魔法騎士団 団長ジークフリード・フォン・アイゼンヴェルク。以後お見知りおきを。」

 「此方こそ、助けてくれて有難う御座いました。僕は暮須結稀と言います。隣に居るのはクロノスとアーシェ。宜しくお願いします。」

 片手を胸に当て軽く頭を下げながら優雅な所作で名乗るジークフリードに、結稀もぺこりとお辞儀をして名を名乗る。クロノスも彼女に合わせて頭を下げ、アーシェは少し鋭い視線を彼に向け沈黙している。

 「あの、ジークフリードさんは ― 」

 「ジークで構わない。仲間達からはそう呼ばれている。」

 語り掛けた結稀に、ジークは穏やかな微笑みを浮かべる。

 「じゃあ・・・ジークさん達はどうしてダンジョンの中に居たんですか?」

 結稀は少し首を傾げながら、思っていた疑問を彼に投げかけてみた。

 「ここ最近出現したダンジョンで行方不明が相次いでいるという報告を受け、調査に来た。危険なダンジョンを放置しておく訳にはいかないからな。」

 成程。確かに国としても、危険なダンジョンが自国の土地に出現したとあっては動かない訳にはいかないよね。

 「結稀達こそ、ダンジョンへは何をしに?」

 ジークの話に結稀が納得していると、今度は彼から同じ質問が返ってきた。結稀は旅の途中で足止めを喰らっていた商人達と会い此処へ向かう事になった経緯を簡単に説明した。

 「そうか、君達は旅人だったのか。」

 ジークは一瞬考え込む様に顎に手を当て一言呟く。その後パッと顔を上げると結稀の方へスッと一歩近付いた。

 「もし良ければ・・・私達の団に入らないか?」

 「ふぇ!?」

 唐突なお誘いに、結稀は目を大きく見開き素っ頓狂な声を出してしまう。

 「ヒドラとの戦闘や脱出の時の様子を見させて貰ったが、君は時を操る特殊な魔力を持っていて戦闘能力もとても高い。御仲間の2人もかなりの実力者と見受けられるし・・・是非君達の力を我が団で発揮して欲しい。」

 真っ直ぐ結稀を見つめ片手を差し出すジーク。その真っ直ぐな瞳が、彼が本気で結稀達を騎士団に勧誘している事を物語っている。

 ぼ・・・僕達が魔法騎士団!?

 結稀が戸惑い困惑の表情を浮かべていると、アーシェがジークから引き離す様に結稀を引っ張り抱き寄せた。

 「結稀が困ってるだろ。離れろ!!」

 ギロリと睨み付け、「ウ゛ゥ゛~ッ・・・」と小さく低い唸り声を上げながらジークを威嚇するアーシェ。

 「済まない。君達みたいな優秀な人材に会って、是非勧誘したいと心が先走ってしまった様だ。」

 眉尻を下げ申し訳無さそうに笑うジークに、アーシェは尚も鋭い視線を向け威嚇し続けている。

 「こら!威嚇しちゃ駄目!」

 結稀が一言注意すると、アーシェは渋々威嚇の唸り声を止め少し拗ねた様に視線を逸らしながら「彼奴、気に食わない。」と小さな声でぼそりと呟いた。

 「あの・・・ジークさん。折角のお誘いですが・・・お断りさせて頂きます。済みません。」

 この世界やリヴァント王国についてまだ詳しく知らない僕に騎士団の一員が務まるとは思えないし・・・自由に動き回る事が出来なくなりそうだもんね。それに・・・何故かは分からないけど、アーシェはジークさんの事を余り良く思っていないみたいだし。・・・入団したら、ジークさんに突っかかっていっちゃうかも。

 「そうか・・・。是非入団して欲しかったが、残念だ。だがもしその気になったら、何時でも騎士団本部を訪ねてくれ。歓迎する。」

 申し訳無さそうに頭を下げる結稀に、ジークは爽やかな笑顔を向ける。

 「では、我々は次の任務があるので失礼する。(いず)れまた会える日を楽しみにしている。」

 ジークは片手を上げそう一言述べると、騎士団員達を引き連れ去って行った。結稀とクロノスは去り行く騎士団の人々にお辞儀をして見送り、アーシェはジークの方にむぅっと鋭い視線を送るのだった。



 「有難うっ!これで王都まで荷を運ぶ事が出来るよ!!」

 ダンジョンを攻略した結稀達は、一度バークローの街へ戻りダンジョンが消え王都への道が使える様になった事を街の人々や商人達に伝えた。商人や街の人々は大いに喜び感謝の意を述べながら、王都へと繋がる道へ急いで向かったのだった。

 「僕達も行こう。」

 結稀は2人に声を掛け、張り切った様子で力強く歩き始める。そんな彼女に「あぁ。」と一言返事をし、2人も彼女の隣に立ち共に歩く。


 「孰れまた会える日を楽しみにしている。」


 緑の中の真っ直ぐな一本道を歩きながら、結稀はふとジークの別れ際の言葉を思い返す。その瞳と言葉はまるで再び会う事を確信している様で、彼女の中に強く印象付けた。

 僕も・・・ジークさんとは近い内にまた会いそうな気がする。根拠がある訳ではないけど・・・何となくそんな予感がする。

 不思議な予感を胸に秘めながら、結稀は王都へと向かう道を一歩一歩踏み締めていくのだった。

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