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「わぁっ!これがダンジョン・・・大きい!!商人の人達が言った通り、見事に道を塞いでいるね。」
一本道を真っ直ぐ進んだ先に辿り着いた巨大ダンジョンを見上げ、結稀がワクワクしながら言葉を述べる。ダンジョンは古代遺跡の様な建物で、道を完全に塞ぎながらどっしりと聳え立っている。
「中から不穏な気配を感じる。気を引き締めて臨んだ方が良さそうだね。」
スッと目を細めながら、警戒を強め一言言葉を紡ぐクロノス。結稀とアーシェも、ダンジョンから醸し出される禍禍しい雰囲気に緊張がピリリと高まっていく。3人は慎重な足取りでダンジョンの目の前まで進んで行く。
「取り敢えず、入り口を探してみよう。」
結稀達は入れそうな場所がないか探す為、ダンジョンの周りをぐるりと廻ってみた。しかし注意深くダンジョンの外壁を調べていっても、入り口らしきものは見当たらなかった。
「扉や穴の様なものは見当たらないな。何か特殊な仕掛けか隠し扉の様なものでもあるのか?」
アーシェはダンジョンに鋭い眼差しを向けながら、顎に手を当て呟いた。
必ず何処かにダンジョンへの入り口がある筈!
結稀はきょろきょろとダンジョンを見廻してみる。そしてふと下に視線を落とした時、結稀はダンジョンの手前に大きな円形の台があるのに気付いた。
「この台・・・一体何だろう?」
結稀はトンと台の上に乗りぐるりと見廻しながら、円形の台をじっくりと観察してみる。クロノスとアーシェも台の上に乗り、台に触れたり見廻したりして調べてみる。すると、3人の乗った台にフッと魔法陣が浮かび上がり、3人を眩い光の幕で包み込んだ。一瞬の輝きの後に3人が目の当たりにしたのは、土の壁や階段に囲まれた広大な空間だった。
「ダンジョンの中って、こんな風になってたんだ・・・。まるで迷路みたいだね。」
ダンジョンの中は、テレビや書物で見た古代遺跡の様な場所だった。土の壁と階段が遥か遠くまで続いており、しかもそれらが天井や横の壁等あらゆる方向に伸びて複雑に入り組んでおり、見ているだけで目が回ってしまいそうであった。
・・・この果てしなく広いダンジョンを探索するのは、かなり大変そうだな。
「先ずは俺がダンジョン内を調べてみよう。このダンジョンの構造がどうなっているのか・・・少しでも情報が欲しい。」
アーシェはそう語ると、掌から数多の蝙蝠達を呼び出した。そして彼が「行け。」と一言呟くと、蝙蝠達は四方八方にバッと散らばり飛んでいった。
「今の蝙蝠達は?」
「俺の使い魔達だ。放った使い魔達と視覚を共有して中を探ってみる。今2人にも見せてやろう。」
結稀の問い掛けに答えると、アーシェは結稀とクロノスの前に片手を翳しサッと横に動かした。するとダンジョン内を飛行していく使い魔達の高く開けた視界が頭の中に入って来た。襲い掛かって来る斬撃やゴーレム等のモンスターを躱しながら、先へ先へと進んで行っている。
「凄いっ!!ダンジョンの様子がよく分かるよ。」
「そうだね。でも、この様子だと危険なトラップや魔物もかなり沢山居るみたいだね。」
結稀が感心して明るい声を出す隣で、クロノスは蝙蝠達から伝わってくる映像を見ながら眉尻を下げ一言述べる。
「出来るだけトラップを避けながら進んでいけたら良いが・・・そうもいかないかもしれないな。」
アーシェは鋭い視線を前方の迷宮へ向けながら、静かに言葉を紡ぐ。
「でも此処で立ち止まってる訳にもいかない。進んでみよう。二人共・・・準備は良い?」
2人を順に見つめ問い掛ける結稀に、クロノスとアーシェはこくりと頷いた。2人の返事を確認した結稀は、ダンジョンの先へ進もうと一歩踏み出した。すると次の瞬間、3人の足下の地面が鋭く尖った無数の土の針へと変化し、貫こうとしてきた。3人はすかさず武器を構え土の針を斬り裂いた。
「行こう!」
結稀の力強い声を合図に、3人はダンジョンを歩き始める。カツンカツンと3人の歩く足音が響き渡る。
「進んでも進んでも果てが見えない・・・本当にこのダンジョンは広いね。それに、上下・前後・左右色々な方向に道が繋がっていて何だか不思議な感覚がする。」
「あぁ、本当に広いな。こんな大きなダンジョンが突然現れるなんて・・・原因は一体何だろうな?もし人為的に造られたものだとしたら・・・造った奴は相当強大な力の持ち主だぞ。」
周囲を見廻しながら不思議そうに語る結稀に、アーシェが真剣な面持ちで言葉を返す。
「最近危険なダンジョンの出現や魔物達による襲撃事件が増えているらしい。このダンジョンも、何か関係があるのかもしれない。」
そう語ったクロノスの表情は曇っており、何処かピリリと鋭い空気を漂わせていた。
・・・この世界が陥っている状況を少しでも改善出来る様に、このダンジョンを攻略しないと。このダンジョンを探索している内に、ダンジョンや魔物の襲撃が増えている謎についての手掛かりが見つかるかもしれない。
少しでも手掛かりを掴もうと周囲への警戒と集中を高める結稀。すると、付近の扉から何かが近付いて来る気配を感知した。
「・・・何か近付いて来る。」
結稀の呟きに、気配を感じ取っていたらしい2人もぴたりと足を止める。3人が身構え警戒を強めていると ―
バァンッと扉が壊され、中から大勢のゾンビが出て来た。
「ゾンビッ!?しかもこんなに沢山・・・!?」
「このダンジョンで命を落とした者達だ。此処に縛られゾンビと化した様だね。」
「さっさと蹴散らして先へ進むぞ。」
掴み掛かり噛み付こうとしてくるゾンビ達を、3人はスパァンッと次々斬り裂いていく。
「わっ!?」
結稀が大鎌を振り回していると、横の壁から大きな植物の蔓が彼女の体を絡め捕る。結稀は植物の蔓を斬り裂き蔓を払い除けると、鎌をぎゅっと握り締め、足にぐっと力を込め踏ん張った。
「クロノス!アーシェ!しゃがんでっ!!」
結稀は大きな声でそう叫ぶと、鎌を勢い良くブゥンッと振った。結稀の声にバッと頭を下げた2人の頭上を斬撃が駆け抜ける。斬撃は迫り来るゾンビ達を瞬く間に一掃した。
よし。道が出来た!!
結稀はクロノス達と目配せしゾンビ達を振り切って先へ進もうと走り出した。しかしその直後 ―
「!?」
彼女の足下に魔法陣が出現したのである。
『結稀っ!?』
クロノスとアーシェが結稀を助けようと手を伸ばす。そんな2人に向かって結稀も手を伸ばそうとするが、眩い光が彼女を包み込み、2人の手が届く前に彼女は光と共に姿を消してしまったのだった。
「結稀っ!?結稀っ!?くそぉっ!!結稀を返せっ!!」
魔法陣の消えた地面をガンガンと力任せに叩きながら必死の形相で叫ぶアーシェ。怒りと焦りで我を失ったアーシェは、何とか魔法陣をもう一度出現させようと地面を乱暴に叩き続ける。ドォンドォンッという重く響く音と共に地面が抉れていく。
「落ち着くんだ、アーシェ!結稀ならきっと大丈夫だ。そう簡単にやられる娘じゃないよ。此処で立ち止まっているよりも、今は少しでも早く彼女を捜し出して合流しよう。」
アーシェの腕をガッと掴んで体を抑え込み、クロノスが彼を落ち着かせようと声を掛ける。アーシェは腕を掴まれたまま、クロノスの方へゆっくりと顔を向ける。己に向けられたクロノスの力強い真っ直ぐな瞳に、彼は少しずつ冷静さを取り戻していった。
「・・・済まない、取り乱し過ぎた。」
ふぅ、と1つ深く息を吐きながら、アーシェは静かに立ち上がった。
「もう大丈夫そうだね。」
眉尻を下げ微かに笑みを浮かべながら、クロノスはアーシェの腕を掴んでいた手をゆっくりと放す。
「この茫漠なダンジョンの中から、直ぐに結稀を見つけ出してやるっ!!行くぞっ!!」
「あぁ。」
ギンと強く鋭く前を見据え走り出すアーシェの言葉に、クロノスはこくりと頷き彼の後を追って行く。消えてしまった結稀の行方を捜す為、2人は魔物や罠が数多待ち受けるダンジョンの更に奥深くへと駆け抜けて行ったのだった。




