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「成程。もうヴァンパイアが領民達を襲う事は無いのだな。」
エアハルト伯爵に会った結稀は、アーシェはもう人を襲わない事、彼は自分達と共に旅に出る事を伝えた。彼女の話を聞いた伯爵は、ほっと安堵の息を吐いた。
「結稀、其方には本当に世話になった。我等エアハルト伯爵領の人々を救ってくれた事、民達を代表して礼を言うぞ。」
深々と頭を下げ感謝の言葉を述べる伯爵に、結稀は「そんな御礼を言われる程の事はしてないです。顔を上げて下さい。」と恐縮してしまう。
「領民達には、其方達がヴァンパイアを始末してくれたと伝えておく。死んだという事にしておいた方が、民達も安心出来るだろうからな。」
「分かりました。アーシェの事は、僕が傍で見守りますので任せて下さい。」
結稀が決意を持って一言述べると、伯爵は「宜しく頼む。」と静かに答えた。
クロノス達を余り長く待たせるのも悪いので、結稀は伯爵との話し合いが纏まった所で屋敷を後にする事にした。屋敷を出る前、伯爵は礼だと言って彼女に沢山の褒美の品を持たせた。結稀は遠慮して一度断ったが、伯爵が是非受け取って欲しいと強く申し出た為、彼女は有難く受け取る事にした。
「また近くに来た時は是非訪ねてくれ。それに、もし何か困った事があったら何時でも遠慮無く知らせてくれ。微力ながら力になろう。」
別れ際、伯爵は結稀に敬意を表し言葉を述べた。「有難う御座います。」と答えた後、結稀は伯爵と笑顔で別れたのだった。
「クロノス、アーシェ、ただいまっ!」
廃墟に戻って来ると、1匹の蝙蝠が結稀の方へぴゅっと飛んで来た。そして結稀の傍まで来ると、蝙蝠は少年の姿になり彼女にばっと飛びついた。
「お帰り。待ち草臥れたぞ。」
「アーシェ!遅くなって御免ね。・・・ていうか君、蝙蝠に変身出来たんだね。」
結稀が驚いていると、アーシェは得意気な顔をしながら蝙蝠に変化してみせた。
「変身は得意だからな。この位朝飯前だ!」
フフンと鼻高々に語るアーシェ。結稀が「凄いね、アーシェ!」と笑顔で褒めると、彼は嬉しくなって更に胸を張るのだった。
「お帰り。伯爵との話は、どうやら上手くいった様だね。」
2人でワイワイ話していると、洋館からひょこっとクロノスがやって来た。
「うん。領地の人々には伯爵が話をしてくれるからもう大丈夫。何時でも出発出来るよ。」
一騒動あったけど、無事解決する事が出来て一安心だ。アーシェという新しい仲間にも出会えて、これから先の旅も益々楽しいものになりそうだ。
結稀はアーシェの方にちらりと視線を向けてみる。もう両目の色の事は吹っ切れた様で、青い左目は包帯に隠される事無く堂々と姿を現していた。彼のオッドアイが月明かりに照らされ、キラキラと明るく輝いていた。
アーシェの悩みが少しでも晴れたみたいで、本当に良かった。今まで辛い思いをした分、これからは一緒に旅を楽しんで貰いたいな。
願いを胸にふと夜空を見上げた結稀。すると、夜空にシュッと一筋小さな光が流れていった。
「あっ!流れ星だっ!!」
結稀が燥ぎながら声を出すと、2人も上空を見上げる。3人が暗い空を眺めていると、もう一度白く光る流れ星が素早く流れていった。
「流れ星が見られるなんて、縁起が良いね。」
クロノスが微笑みながら語り掛ける言葉に、結稀は「そうだね。」と嬉しそうに答えた。彼女の隣に立っていたアーシェも、微かに笑みを浮かべながら小さく頷いた。
星々が綺麗に輝く夜空を眺めながら、今後の旅に大きく期待を膨らませる3人なのだった。




