司馬遼太郎著作のあやしい箇所の原典をあたると、司馬遼太郎の創作でついでに誤字だった
軽めのネタを投稿しようとスクリーンショットを撮るついでに確認しようとしたら、泥沼にひきこまれるように時間を失っていきました。
司馬遼太郎は漢字の間違いがボチボチあります。「瓦壊」は「瓦解」の誤字です。
瓦壊
ttps://bit.ly/2YUKsDg
瓦が壊れていて、雨漏りするかもしれなくて大変だなあー、なら「瓦壊」でもおかしくはありません。瓦解だと、一部のほころびから全体に、最初はぽろぽろと、時間が少し経過すると一気に崩れていくイメージが個人的にはあります。組んである瓦がまとめてドーンと落ちるさまは見たことがありませんので、「瓦解」と聞くと、ビルを爆破解体するような光景が脳裏に浮かびます。
深夜に高層ビル爆破の瞬間 閃光走り次々と崩れる(20/04/21)
ttps://www.youtube.com/watch?v=WP3FLXcI32Q
こんなん。瓦解じゃなくて崩壊とか崩落とかですね。
アッシャー家の崩壊
ttps://bit.ly/2ZBuqxd
崩壊といえば、これも有名か。ゲームの館モノ!
ただ、司馬遼太郎の「覇王の家(下)」の「瓦壊」は「小牧陣始末記」からの引用箇所のようです。「小牧陣始末記」の時点で間違っているのであれば、司馬遼太郎のせいではありません。その場合は、「瓦壊 (原文ママ)」と書くのを省略したのかもしれません。
司馬遼太郎による現代文翻訳箇所であれば、司馬遼太郎の責任ということになります。
「小牧陣始末記」は国立国会図書館のデジタルコレクションで全体を閲覧できます。
「小牧陣始末記」
ttps://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2387695
もとは尾張藩の軍学家の口授だったそうです。それを書きとめて、途中でタイトルがかわったり、写本だけにバラけてみたり、別バージョンが誕生したり、一部文字が見えなくなったりしたと説明にあります。口授を書き写したものだそうですので、どうしても聞き取れなかった箇所や、墨で潰れて読み取れなくなった箇所もあるようです。「すまんな」と序盤に書いてありました。
それらを明治になんとかまとめて、元のタイトル「小牧陣始末記」に戻したようです。適当な解説ですので、本当のことを知りたい方はデジタルコレクションで原典を読んでください。徳川家康をさして「神君」ともあるので、途中で徳川家康の神格化がはさまっています。ピュアな歴史書ではありません。現代の立場から見ると、一部にフカシのある歴史資料ぐらいか。
で、デジタルコレクションで該当箇所を見てみると……
30ページに該当箇所はあって
「末々ハ□□ト相見ユル」
口授書き写し不明箇所やないかい! しかも、司馬遼太郎が勝手に「瓦壊」と埋めていて、ついでに「瓦解」の誤字だったという。
「ついでに」と書いたついでに
大石圭の「ついでに」を「つでいに」。
他の可能性として、「小牧陣始末記」の別の箇所かもしれないので、全体に目を通すことになりました。
別の「□□」箇所あり。 様子を伺う → 様子を窺う
鉄砲を打つ → 鉄砲を撃つ
「大阪」を「大坂」
別の箇所では、ちゃんと「大阪」
全体を見た結果、「小牧陣始末記」のあやしい箇所を発見していき、さらに時間をとられていきました。司馬遼太郎側で、「瓦壊」を「瓦解」にしてあれば、横断検索にもひっかからずに、泥沼におちいらずにすんだのにギギギとおもいました(こなみかん)。
いやでも、「□□」と原典でわからないところに、するりと適当な文字を入れ込んで平然とできるのは見習いたい。
「覇王の家(下)」は、あらすじにも「捕らえがたい」とあって、「捉える」、古い用例からとるなら、牛の鼻輪の把輪から「把える」のほうがよさそうなものもあって、わりとがばい感じでした。「瓦解」を「瓦壊」としているのを発見できるかどうかについては、
松本清張や新田次郎の著作でもスルーがありましたので、これはむずかしいのだなとおもいました(こなみかん2)。
さらなる可能性としては、「小牧陣始末記」の別版からの引用か翻訳だったとも考えられます。そうであっても「瓦壊」を説明無しで書くのは無いだろうと。えー、ほんとに「瓦が割れて雨漏りする」ぐらいの描写だと面白いんですが、ないでしょう。
以下、おまけ
「キングメイカー! ―戦野の隅の大英雄― 」
瓦解
ttps://bit.ly/2YVFFBR
「② とくに徳川幕府の崩壊をいう。
※坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉一「此下女はもと由緒のあるものだったさうだが、瓦解のときに零落して」」
徳川幕府の崩壊をとくに「瓦解」というのは知りませんでした。「キングメイカー! ―戦野の隅の大英雄― 」は、その点で、今回の横断検索でヒットしたなかでも、もっとも正しい使い方だったのではないかと思います。「瓦壊」と書いてあるのだけが残念。
幻魔大戦「雪崩を打って瓦壊」は「雪崩を打って崩壊」だと「崩」が重なるので嫌ったんだなあと予想。
引用箇所に間違いがあったと気がついたのだろう見事な例です。
早川書房セット
「パリは燃えているか? 新版」「一九八四年 新訳版」に「瓦壊」があって、そのころから「瓦」とくに「和瓦」自体が新築の家で採用される数が減っていったのかなと思いをはせるしだい。
タイトルに「理性瓦解」で本文に「瓦壊」と、IME辞書に頼らず、わざわざ「かわら……こわれる……」で変換したのかと困惑するパターン。
田中芳樹は手書きだった?
「冒険者Aの暇つぶし 1」 花黒子
冒険者Aの暇つぶし
https://novel18.syosetu.com/n9217cs/
「瓦壊」は、小説家になろうではあまり見かけませんでした。ミッドナイトノベルズで更新再開した、「冒険者Aの暇つぶし」の書籍版であったぐらいです。瓦……世代なのか?
カワラバトラーせだい。ちがいます。カワラチカラ。ちがいます。
ドラッカワラー。ちがいます。
菊地秀行は作中で色々と壊しすぎていますので、瓦でも壊れると変換したのやも。
ネタ切れで力尽きて、スクリーンショットのみ
西尾維新の「終物語 (下)」の「瓦壊」はセリフ箇所なので通るやも。
牧秀彦と鳥羽亮の誤字傾向が一緒なのは、時代劇を書いていると収斂していくこともあるのかと思いました。
ひかわ玲子は、ペンネームに「氷川玲子」を使っていた時期もあり、氷がらみの熟語だと
氷消瓦解、瓦解氷消
ttps://bit.ly/3ir0MDF
もあるんですが、たぶん「かわら」「こわれる」で一文字ずつ変換して「瓦壊」と書いたと思われます。一文字ずつ変換して間違うの謎はとけないまま終わります。
次回は、「瓦解」の残りの短めのネタです。これは確定です。ほんとうです。しんじてください。




