97 そして現代へ
ヘリコプターの音が聞こえる。
頭上を旋回しているようだ。
〇ックトゥザ〇ューチャーみたいだなと低い空を見上げながらミユキは思った。
「皆さん、大丈夫ですか? ここ、どこか判ります?」
ミユキの問いに横にいた怜美が大丈夫だけど、どこかはわからないと首を横に振る。
大丈夫ならよかったけど、と一息ついたミユキに
「あ、学校の屋上じゃん」
新勇者の誰かが呟いたのを皮切りに次々と肯定の声がして、秋月が代表で答えた。
「僕たちの学校の屋上です」
「明日だ!」
「え?」
「明日に戻ってきてるみたいです」
スマホを見た柿崎が説明する。
「明日の朝ですね。今は」
確かに屋上からは朝日が見える。視点は違うが、ミユキにとっても見慣れた風景だった。
「ってことはあのヘリはもしかして俺たちを探してるの?」
「う………」
「まぁ、いきなりこんなにたくさん消えたら捜すよね……。大捜索だよね」
確かにそうかもしれないが、高校生が一晩消えことでヘリが飛ぶだろうか……。いや、飛ぶかもしれないよね。高校生が10人も消えたんだもの……そしてヘリから見つかったかもしれないということは、ここに捜索隊?がなだれ込んでくることは確実だ。
「に、二年前の皆さん! 急いで手をつないでください!」
ミユキが慌てて見回したとき、元祖勇者たちはしっかりと手をつないだままで、黙ってミユキを見つめていた。ミユキは口角を上げ、見つめ返して頷いた。
「こちら側の皆さん、言い訳はそこそこ大変だとは思いますが、頑張ってください。
それでは皆さん、参りますよ。念のために息を止めて目をつぶっててくださいね」
見守る新勇者──いや、高校生たちにそれぞれ目を合わせた後、元祖勇者たちは黙ってそれに従った。
「では、お元気で」
ミユキがぺこりと頭を下げたかと思うと、そこにはもう、誰も残っていなかった。
直後にドアを開ける金属的な音がして、数人の足音がコンクリートに響き渡る。
「………あっけねーな」
笹神が呟いた声は雪崩れ込んできた大人たちが安否を確認する叫び声でかき消されたのだった。
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怜美が目を覚ました時、まるで音が聞こえなかった。
背中にはつるりとした塊を感じ、───自分がコンクリート、テトラポットの上にいることが判る。
体を起こすと近くにみんなが同じように横たわっているというか、載せられているようだ。
「………ミユキさんは?」
あたりを見回すと、あちこちがへこみベコベコに傷ついたバスが木や枝を巻き込んで、崖を支えに逆さになり、フロント部分を海に突き刺していた。窓ガラスが割れ、屋根にはいくつもの穴が不自然に開いているのが見えた。悲鳴を上げそうになった時、人影が見え、ヒュッと息をのみ目を凝らすとミユキが両肩に一人ずつ載せて海面をこちらに向かって歩いてきている。
(あのバス……)
あの日、自分たちが乗っていたバスなのだろうか。
起き上がっている怜美に気づいたのか、ミユキがバタバタと走り出した。
そしてそのまま近くまで来たミユキは息も切らさずテトラポットの上に飛び乗ってくる。
人間離れした動きはあっちと変わらないようだ。
「ミ、ミユキさん……」
「あ、怜美ちゃん、ごめんね。なぜか転移が使えなくて……ちょっと急がないとどれくらい時間がもつか判んないんで」
一人ずつ丁寧に降ろしながらへらりとミユキが笑った。
「わ、私も手伝います! みんな、起きてよッ!」
となりにいる夏光に手を伸ばした時、手の甲がぼんやりと光っているのに気が付いた。
「なに……これ…?」
ふと、最後に世界樹さんにもらった一枚の葉を思い出す。手の中に消えていった葉っぱ。
いや、今はそれどころではない。早くみんなを起こさないと!
すでにミユキはバスに向かって海面を走っている。
──そもそもなんで海面を走れるんだろう。
怜美が隣のテトラポットに移動するために恐る恐る海面に足を下すと地面と変わらない固さだった。波の形なのかでこぼことはしているが……。
全員を起こしながら、バスを指さすと皆驚愕した後、海面を走り出した。
「何でとか、どうしてとか、考えたら負けな気がする」
塩谷の横で北尾がぶつぶつと呟いている。
でも、間に合ったんだ。
きっと、みんな生きている。




