第3話 傲慢な世界
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「検索結果……? って」
目の前には、ステータスやダンジョンゲートで見たものとは違う、黒色のホログラムが浮かんでいた。
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検索ワード:基礎ステータスを上げる方法
検索結果:1件 Y/N
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チュートリアルの一種だろうか。
以前、ステータスの平均値を知りたいと思ったときには、願った以上に分かりやすいステータスボードが表示された。
だが、あのときのボードは青色だった。ステータス画面と同じ色だ。
「これって、どういう現象なんだ……?」
触らぬ神に祟りなし、とも言うし、ひとまずネットで調べてみることにした。
スマホで《黒いホログラム》《検索》《基礎ステータスアップの方法》《ダンジョン 黒い説明ボード》などのワードを入力してみたが、同じような現象は一つも見つからなかった。
「どうするべきか……。基礎ステータスって、たぶん、レベルアップする前のステータスってことでいいんだよな……。俺がそう思ったから表示されたんだろうし」
もし、そんな方法が本当にあるなら知りたい。
だが、誰でも使える方法なら、すでに誰かが見つけていてもおかしくないはずだ。
それでも、目の前のボードには検索結果が1件ある。
「これに賭けてみるしかないのか……。悪魔に魂を売るとか、そういう話じゃないよな……?」
少し迷った末、恐る恐るYの文字に触れた。
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検索結果
・傲慢の世界 スペルビア
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「傲慢の世界……スペルビア?」
悪魔に魂を売りそうな名前が出てきた。
少なくとも、俺の知っている名前ではない。
「……まあ、どうせ今の俺は負け組だ。試せることがあるなら、試してみるのも悪くないよな」
『確認しました。傲慢の世界、スペルビアへの接続を開始します』
その瞬間、突然、激しい頭痛に襲われた。
頭がふらつき、まともに立っていられなくなる。
まるで、頭の中に何かが入り込んでくるような……何かと繋がっていくような感覚だった。
ひょっとしたらこれ、選んじゃいけないやつだったんじゃないか?
後悔しても、もう遅い。
俺はそのまま、意識を手放した。
気がつくと、窓の外はすっかり明るくなっていた。
「何だ……夢でも見てたのか?」
『何が夢だ。てか、ここはどこだ?』
「!?」
突然、頭の中に声が響いた。
俺が考えたわけでも、口に出したわけでもない。それなのに、聞こえてきたのは俺自身の声だった。
(もしかして、並列思考みたいなことができるようになったのか?)
『並列思考なわけねぇだろ。てか、なんで体が動かせないんだ?』
「やっぱり聞こえるよな……。勘違いじゃないよな?」
どうやら、俺の意識とは別に、もう一人の俺が存在しているらしい。
しかも、声が聞こえるだけではない。相手も俺の言葉を聞き、返事をしている。
『俺はさっきまでダンジョンに潜ってたはずなんだが? なんでこんなところにいる?』
「それに関しては、多分……」
俺は、昨夜起きたことを順番に説明した。
黒いホログラムが現れたこと。
検索結果に表示された世界を選んだこと。
そして、激しい頭痛に襲われて意識を失ったこと。
説明を聞き終えた相手は、少し考え込んだあと、あっさりと言った。
『そりゃ、ユニークスキルの効果に違いないな。ダンジョンやステータスで、黒いボードなんて出ねぇし』
「ユニークスキル? 固有スキルのことか?」
『固有スキル??…………あぁ……多分あれだ、俺らは別の世界。しかも、ちょっと文化が違うとか、そういう話じゃねぇ。構造そのものが違う世界の住民の可能性があるな』
世界の構造そのものが違う。
そんなことを言われても、簡単には理解できない。
だが、目の前に見えない自分がいて、普通に会話までできているのだ。今さら、常識を持ち出して否定しても仕方がない。
『とりあえず、ステータスを見せてみろ』
「あ、ああ」
俺はステータス画面を開いた。
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萩野 駿 Lv:1 次のLvまでExp10
見習い冒険者
HP:8/8
MP:9/9
筋力:2
耐久:2
魔防:4
敏捷:6
器用:5
知力:3
魅力:4
幸運:10
固有スキル
【独り言】
戦闘系スキル
なし
魔法系スキル
なし
耐性系スキル
なし
生産系スキル
なし
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『…………なんだそれ! ははっ! ステータス低すぎんだろ、お前!』
「そこは今どうでもいいだろ!」
初対面で、いや、初対面と言っていいのかも分からない相手に、いきなり笑われた。
『まあ、そりゃそうだな。……んで、気になったことがあるんだが』
「なんだよ」
『お前のスキル、ユニークスキルじゃなくて固有スキルって言うんだな。もしかしたら、普通にお前が間違って覚えてるだけかと疑ったぜ』
「失礼なやつだな!」
『悪ぃ悪ぃ。俺の知ってる常識と、いろいろ違うのかもしれねぇな』
俺とこいつは、同じ人間のはずだ。
それなのに、知っていることも、使う言葉も違う。
パラレルワールドとでも言えばいいのだろうか。
それにしても、性格まで違いすぎやしないか?
俺はどちらかと言えば消極的な方だと思っている。だが、こいつは遠慮というものを知らない。口も悪いし、態度もでかい。
同じ声をしているはずなのに、こうも違うものなのか。
『にしても、俺はどうやって帰ればいいんだ? これ、戻せんのか?』
「さあ……。言われなかったら、固有スキルが原因だってことすら気づかなかったしな」
『とりあえず、解除って念じてみろ。【独り言】をタッチしてみるのもありだな』
「分かった」
言われたとおり、解除を念じてみる。
……何も起きない。
続けて、ステータス画面から【独り言】の説明を開いてみた。
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固有スキル
【独り言】Lv:1
自分と会話ができる。
Lvが上がるごとに独り言が増える。
1.傲慢の世界 スペルビア C級冒険者
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「……あれ?」
項目が増えている。
以前見たときには、「独り言が増える」という説明の下に、こんな表示はなかったはずだ。
『傲慢の世界、スペルビア……ねぇ』
「お前のいる世界のことだよな?」
『そうだろうな。俺の世界には七大魔獣ってのが存在してるんだが、そのうちの一匹に傲慢の大魔獣ってのがいる』
「そっちにも、七つの大罪があるのか?」
『七つの大罪? ああ、そういう呼び方もあるのか』
別の世界にも似たものが存在するのは、偶然なのだろうか。
そんな事を考えていると、もうひとりの俺が話始めた。
『まあ、今は戻る方法も分かんねぇし、俺がこんなに弱ぇのは許せねぇから……』
相手は一度、言葉を切った。
『基礎ステータスを上げろ』
「それができるなら苦労しないが?」
『……なに? 上げ方、知らねぇのか?』
「知らないも何も、レベルを上げる以外の方法なんて出回ってないぞ」
『マジかよ。この世界、ダンジョンは最初からあったんだよな?』
「いや? だいたい25年前くらいからだけど。それがどうした?」
それまで横暴な物言いを続けていた相手から、初めて弱気な声が聞こえた。
いや、弱気というより……引いている?
『……なるほどな』
しばらく考え込んだあと、相手は再び口を開いた。
『なあ、もう一つ聞いてもいいか?』
「ああ、いいぞ」
『今、最高レベルのやつって何レベルくらいなんだ?』
「んー……ダンジョンの攻略が82階層まで進んでるからな。何レベルくらいなんだろうな」
『こっちの世界のダンジョンと同じような難易度だと仮定すると……もうレベル100くらいにはなってるかねぇ』
「そんなもんなのか?」
『こっちなら、レベル60くらいだがな』
「攻略階層が同じでも、そんなに違うのか?」
『基礎ステータスの上げ方が一般化してねぇんだろ? だったら、レベルアップのときにステータスの伸びを大きくする方法も知られてねぇはずだ』
「それなら、少し聞いたことがあるぞ。余裕を持って戦うより、同格や格上レベルの敵と戦った方がいいんだろ?」
以前、ネットで見かけた記事に、そんなことが書かれていた。
異世界やダンジョンを題材にした物語でも、強敵と戦うことで効率よく成長するという展開はよくある。
だからだろうか。現実にそんな仕組みがあったとしても、俺にはすんなりと受け入れられた。
『確かに、基本としてはそれでいい。だが、それだけじゃ情報が全然足りねぇ』
「というと?」
『いいか? 敵を倒したときに得られる経験値は、敵のレベルだけで決まる。だがレベルアップのステータス上昇量はレベルだけで決まるわけじゃねぇ。どう戦って、どれだけ苦戦したかも関係してくる』
「ステータス上昇ってランダムじゃないのか?それに戦い方まで関係するのか?」
『ああ。例えば、格下の敵を遠くから安全に倒すのと、格上の敵に近接戦闘でギリギリまで追い詰められながら勝つのとじゃ、得られるステータスが違う』
「……それ、かなり重要な情報じゃないか?」
『だから今から説明するんだろうが。黙って聞け』
……こいつ、本当に俺なのか?
いや、俺なんだろうけど。
とにかく、今は貴重な情報を聞き逃すわけにはいかない。
『レベルアップによるステータスの成長は、場合によって上下する。敵の数や戦い方よってな』
「……どういうことだ?」
『例えば、相手を遠距離から安全に倒してた場合、経験が積めてると思うか?』
「弓士や魔法職ならそうじゃないか?」
『それは転職してからの話だろうが、今は見習い冒険者だから関係ねぇ』
傲慢な俺の説明によると、レベルアップまでに倒した敵の平均レベル上が高ければ高いほど、ステータスの上昇率も高くなる。
転職後はジョブに応じて、上昇率は変わって来るらしいが、基本的に法則は同じらしい。
最初はレベルが上だった相手も、自分が成長すれば、やがて下になる。
そうなれば、同じ敵から得られる成長の恩恵も小さくなっていく。
「なるほど……。スライムで楽して10レベルになっても、最弱の10レベルになるだけって事なのか」
説明をまとめると、ざっとこのような表になるらしい。
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レベル別ステータスアップ目安表
【余裕を持った戦いで勝利する場合】
(1~2匹/弓・魔法)
※ジョブが、魔法・狩人系統の場合、近接武器判定となる
相手のLv|獲得平均ステータス
Lv格下 2
Lv同格 2
Lv1.3倍 3
Lv1.5倍 4
Lv1.7倍 5
Lv2.0倍 6
Lv3.0倍 7
【ギリギリの戦いで勝利する場合】
(3~9匹/近接武器)
相手のLv|獲得平均ステータス
Lv格下 4
Lv同格 4
Lv1.3倍 6
Lv1.5倍 8
Lv1.7倍 10
Lv2.0倍 12
Lv3.0倍 14
【絶望的な戦いで勝利する場合】
(10匹以上/素手/デバフ状態で近接武器)
相手のLv|獲得平均ステータス
Lv格下 6
Lv同格 6
Lv1.3倍 9
Lv1.5倍 12
Lv1.7倍 15
Lv2.0倍 18
Lv3.0倍 21
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「……よくできてるな」
『当たり前だろ。そうじゃなきゃ、弱い敵を狩り続けるだけで、誰でも際限なく強くなっちまう』
確かに、その通りだ。
それでは、強敵と戦う危険を冒す意味がなくなってしまう。
成長するほど、次の成長には相応の相手が必要になる。
「……これ、本当なのか?」
『俺の知る限りじゃな』
もし、これが本当なら、今までのダンジョン攻略の常識が、大きく変わることになる。
安全に敵を倒すだけでは、効率よく成長できない。かといって、無謀に強敵へ挑めば命を落とす危険がある。
自分自身の成長に合わせて、戦う相手も考えなければならない。
「……分かった。まずは、自分の実力を把握するところからだな」
『そういうことだ。焦って超強敵に挑む必要はねぇ。自分に合った格上の相手を見極めろ』
俺は、自分のステータス画面をもう一度見つめた。
筋力2、耐久2、魔防4。
今の俺は、どう見ても強いとは言えない。
だが、何も知らなかったときとは違う。
どうすれば強くなれるのか。
何を基準に敵を選べばいいのか。
少なくとも、その手がかりは手に入った。
「……よし」
思わず、拳を握りしめる。
まだ分からないことだらけだ。
それでも、今まで知らなかった成長の仕組みを知ることができた。
しかも、それを教えてくれたのは、別の世界にいる俺自身だ。
『おい、変なこと考えてねぇだろうな?』
「いや。これからどうやって強くなるか考えてたんだよ」
『ならいい。……まあ、こっちもお前から聞きたいことが山ほどあるけどな』
「それはお互い様だろ」
俺は苦笑した。
異世界の自分と話ができる。
それだけでも十分に不思議な能力だ。
だが、こいつが知っている情報を自分の物に出来るなら……。
【独り言】は、俺が思っている以上に、とんでもない可能性を秘めているのかもしれない。
何話か書き溜めしているので、基本的には1日、1、2話投稿しようと思います!
出し切ったらゆっくり1日1話か2日で1話出そうと思うので良ければ見てってください。




