7 王子
アベル王子に商談会終了後話しがしたいと持ちかけられた。武具防具を国王陛下に推薦するから王都に工場を作れという。
7 王子
商談はその場で成立するわけではない。あくまでもデモンストレーションである。参加者はそれぞれの組織の代表であっても独断で物事を決められるわけではない。国防大臣もマリエール商会の武具防具が優れていると思った。しかし国防大臣の独断で決められる事ではない。商談会に将校と経理担当を派遣するだけだ。少数購入して中で議論して決める事だと思った。アベル王子が何処で聞いたか商談会に参加するというまでは。
マリエールは商品について招待者に説明していた。アベル王子はマリエールに近づき、
「商談会の後でお時間頂けませんか。軍部の者です。」
武具や防具の事だ。軍部にも声を掛けてある。しかしマリエールと同じ年頃の少年に声を掛けた覚えはない。それでも、
「商談会が終わった後、残って頂けますか。」
と答えた。
商談会終了後、マリエールは軍部の将校、経理担当、アベル王子と共に別室に移った。アベル王子は、
「マリエール商会の武具、防具共に素晴らしい。しかも安価だ。私は国王陛下にマリエール商会の武具、防具を購入するように進言しよう。その代わりこのような武具、防具をどのように作るか知りたい。」
マリエールは構わないと思った。
「つまり、我々の工場に来て頂き、お教えすればよろしいのでしょうか。」
アベル王子は首を振った。
「王都に実際工場を作って共同で製造して欲しい。」
マリエールは少し疑問であった。
「幾ら王子様とは言え独断で決めてもよろしいのでしょうか。」
マリエールの疑問に、将校が答えた。
「武具、防具の購入も含めて持ち帰って検討する。」
これがこの場の結論になった。王子は不満そうだが、王子がかってに決めていい問題でない。
後日マリエール商会は国から少量の武具防具の発注があった。また工場見学を打診されたので了承した。その後ある程度纏まった発注があったが工場を王都に作れという命令はなかった。
その後アベル王子はしばしばマリエール商会にマリエールを訪ねた。アベル王子は、
「工場見学の報告だけでは、どうしてあのような武具や防具ができるか判らぬ。何か秘密があるのだろう。」
と聞いてきた。マリエールは、
「クロムという物質を含んだ鋼は硬くて錆びにくい性質があります。炭素含有量の調整や不純物の除去で名人級の剣ができます。また、炭素繊維やアモルファス物質、チタンやアルミニウムを使って軽くて丈夫な防具が作れます。」
どうしてそのような知識があるのか聞かれたので簡単にマリエールは履歴を語った。
「それではお前は万能者か。」
万能魔法を目指しけど答えはまだでないと答えた。
アベル王子はしばしば問題を持ち込んだ。こちらに都合のいい場合だけ応じた。ウィンウィンでないと長続きしない。アベル王子もこちらとの関係を考えたようだ。お互いに利益のある話しだけを持って来るようになった。ある時アベル王子は、
「王宮の若い貴族の集まる社交会を私が仕切ることになった。食べ物や飲み物、酒精が弱いお酒、出し物、音楽を頼みたい。歌があるとなおいい。ダンス曲も必要だ。司会も頼む。」
要するに丸投げだ。こちらのメリットは何がある。
アベル王子はお互いに利益のある話しだけ持って来るようになった。今度話しは若手貴族の社交会の仕切りを丸投げにすることだ。こちらに利益はあるのだろうか。




