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勇者の謁見

謁見の間の扉前に到着した私たち。騎士様が王様へ来訪を告げている。その間、扉の前で待っている。けれどしまった。私は少し前までただの放置子であり、平民。礼儀作法がわからない。この後どうすれば良いのだろうか??

「イリス様。この後ですが、名を呼ばれましたら中にお入りいただき王の前で跪いてください。その後、王より顔を上げるよう指示があります。それまでは、下げたままお待ちください。あとは、大変失礼ですが、王も皆も貴女様が平民出身と理解しておりますので、今のところ、礼儀作法を正しく行う必要はございません。今後の旅立ちまでに、貴女様が習うことの一つですので。。。」エリオット様が、まるで私の悩みを見透かすように今後のことを教えてくれた。気の利く彼の優しさが、私の心を落ち着かせた。


すると。。。

キィーィーー………。

騎士様より扉が開かれ、「『勇者イリス』様、王様がお呼びでございます。」と呼ばれた。

「はい。。。」廊下が薄暗くされていたからだろうか、謁見の間の照明がとても明るく感じて目が開けていられない。慣れるのに少し時間が掛かった。

「イリス様、騎士に続いて王の御前まで参りましょう。」エリオット様が小声で私に教えてくれる。小さく頷き歩き出すが、正面の王様まで続く緋色の絨毯の左右、整列した騎士様のような方々、理知的な文官のような貴族だろう方々が、私を値踏みするような目で見ていることに居心地の悪さを感じながら、騎士様に私も追従した。

恐らく、玉座の正面前の階段下が御前になるのだろうか?ここで跪けばいいのだろうか?そう逡巡していると、またエリオット様がコソッと教えてくれた。

「イリス様、ここで跪いてください。」

膝を曲げ、騎士がするように片膝を床につけ、反対の足を膝立てしたところに手を置き頭を下げた。


「勇者イリスよ。太陽神フレア様の愛し子よ。我らの希望の光よ。面を挙げよ。」よくファンタジーなどの物語で想像する‘王様’より、大分若い声。まるで、テノール歌手が歌い上げるような、優しい甘い声。だけど、厚みもあって芯が残る強さがある。この人がこの国の王なのだと云わしめるような強い声。どんな方か、顔を上げると。

光を吸い込むような漆黒の髪色に、リディア様のような真紅の瞳。30代前後であろう顔立ちに威厳を漂わせてこちらを見ている。えっと、、、ここは私から挨拶をするのだろうか??そう、思っていたら。。。

「王様、こちらが太陽神の愛し子、イリス様でございます。」エリオット様が私に目配せをしながら、紹介?してくれた。だから。

「お初にお目にかかります。勇者に選ばれましたイリスと申します。これから、愛するフレア様のため、民のため、何者にも屈せず、何よりも世界を愛し、この世界の礎として()()()平和を築きましょう。」と、王様の目を見て話していた。

「なんと。どうにも、(よわい)5歳にしては、しっかりとした子だ。利発そうな表情(かお)をしている。それに、己が使命を心得ている。。。。。」

王様が、こちらを驚いた顔で見てきた。けれど、私も言うべきことがわかっていたわけじゃない。私は、私の推しと、自分が死ぬ運命から抗いたいだけ。

確かにこの命は、フレア様が助けてくれたかもしれない。だけど、この希望は、魔王であるセレネアが、私の推しが、思い出させてくれたもの。だから、今この時、私は()()()の世界も護れるほど、強くなることを誓う。その誓いだ。断じてヒト族だけの世界を望むわけじゃない。。。けれどきっと、その気持ちはこの場の人々には、伝わらない。そう思うのに王様は。

「ふむ。勇者イリス。其方(そなた)は、本当に()()勇者なのだろう。。。その命全てを賭け戦う其方(そなた)に、我らは報いよう。今この時、この場で我らはこの世界の全てをイリス、君に賭けよう。」そう、私への信頼を示してくれた、、、、



「王よ。これより勇者イリス様は、歴代王家と教会の古き盟約のとおり教会預かりと致します。また教養については我らが担い、実戦においては王家が担い、あらゆる技術全てを教育することとなります。今後も、この盟約に異論はございませんか?」

「委細承知。我らと教会は、共にある。どちらが上にあるものでなし。等しく勇者イリスの成長を促す同志である。(みな)も、これでよいな。」そう、周りに控えていた人々に王様から声掛けがされていた。すると周りも‘然もありなん’というような、頷きを各々していたのだ。この人たちは、王様のこの言葉を聞くため、エリオット様からの問答を聞くために集まったのだろう。それが、わかる。まるでこの後の展開を待ち望むような、期待するような顔つきをしているのだ。


「それでは、我らの騎士団総司令官であるアルフレッドよ。これから、勇者イリスの力を鍛えるため、お主自ら、その師を定めよ。」

「はっ!!我ら騎士団、一丸となり勇者イリス様のお力になることを誓い、その総指導者として騎士団長であるレオンを任命いたします。彼の者による方針に基づき、今後は鍛え抜く予定でございます。」

「よろしい。他の者も、勇者イリスの世話を行う騎士団長レオンを支え、魔王を退()けるため精進致せ!そして、主らの力が誰よりも抜きん出た時、勇者イリスの共となり旅立つ者として選定いたそう。」

『ははっ!!!』騎士様方から、野太い咆哮に近い返事が響く。これか、、、

ああ、これか。。。騎士の皆様が期待する目をこちらに向ける。私に気に入られ、最も強き者になることを夢見る目。私に選ばれたいと媚びる瞳。そうか、この人たちは、私が勇者として旅立つ時に武勲を上げることを夢見ているのか。

これから10年、その間どれほどの騎士が育つのだろう。その時私の隣に立つのは誰になるのか??それをわかっている私は、こんな期待をする目を向けられても、この中にいないことをわかっている。だから、私は目を逸らした。

そう確か、年上のキャラだった。ゲームの攻略対象である騎士は、確かに年上キャラだったけど、勇者が旅立つ際に20歳の青年だったのだ。ここにいることがあり得ない。今の彼は、10歳。見つかるはずもない。




「王家の師が決まり、感謝いたします。次は我ら教会から。まず我らは勇者イリス様の友なる候補を探し出しました。彼らと共に切磋琢磨できる環境を整える所存。このため、師は(わたくし)含め、枢機卿と大司教で分担いたします。これで、勇者イリス様の今後は、万事盤石となったと心得てよろしいか?」

「ああ、これで全ての申し合わせは終了だ。後は皆の者、解散とする。勇者イリスよ、下がれ。」え、ここで終わり?返事をする??戸惑う私にエリオット様が。

「王へ返事をして後ろに下がりましょう。」と応えてくれた。

「はい、それでは、王様、今後とも精進いたしますので、何卒よろしくお願いします。これで失礼いたします。」ペコリと頭を下げて、私とエリオット様は、先程来た緋色の絨毯を同じように歩いて行った。

誤字修正です。

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