勇者の嘆息
「よく頑張っていらっしゃいましたね、イリス様。とても堂々とされていて、しっかりご自身の意思を伝えられておりました。」
応接室へ戻って行くとイレーネとミーナが私の洋服を緩めて部屋着のような、動きやすいドレスに着替えさせてくれた。すると部屋の外で待っていてくれたエリオット様が、ニコニコと、部屋に戻ってきて私を褒めてくれた。
けれど、そんなことより気になること。
「どうして、あんなに人がいて、私を見ていたんでしょうか?元々王家が戦い方を、教会が勉強の仕方を教えるって決まっているなら、あんな場所で確認する意味はあるんですか?」
単純な疑問。どうして、これからの私の教育方針を決める場所に、国と教会の責任者を介して、大勢の人を集めてまで、謁見の場が使われた?王様に謁見、ってくらいだから、私のお披露目と紹介をして、王様からの激励を受けて終わるものだと思っていた。だからこんなまどろっこしくて、堅苦しい言い方をする必要はなかったんじゃないか?こんな場で私の‘これから’を話し合われる必要があったのか??
要は、とりあえず先に王様に会って、少しお話しして、私がどういう人か見極めたら解散すればいいだけじゃないのか?ってこと。
「イリス様は聡明でございますね。それに、効率的なことがお好きなご様子。あれは、貴族のためのパフォーマンスです。とても、非効率的ではありますが、これから勇者様がご活躍なさるのは間違いない。けれど、それまでの成長に寄与したものは、自分でありたい。だからその功績はフレイア聖光教会だけのものではなく、この国と教会の双方にあるとする必要があったのです。そのために行う時間としています。」
めんどくさい。。。要は、魔王討伐が終わった世界で力の均衡が崩れないように、事前に申し合わせたということか。ここがゲームの世界であっても、それが国として形作るなら、政治を行うことになるんだろう。すると肝心なところでは足並みが揃わなくなるから、抜け駆けをするような状況を牽制する必要が出るんだろうと思う。地方の公務員みたいな、馬鹿な風習。どんなことでも指差し確認。無駄に時間を使うより、国を動かすなら民のために行動することが必要だというのに、世界が変わっても、どんなところでも、こんなことをしているのか。
国が国としてあるなら、どこででも、いつまででも、こんなことが起きるのだろう。仕方ない。国は‘民の信用’で成り立つ。だけどその信用は、‘全ての人’が平均的にみて、理解できる方法でなくてはならない。これは、無駄でしかないけれど、‘人の営み’があるのなら、それは変わらないのだろう。
だから私の力が強くなるほど、自分たちへの影響が怖いから、先制を取りに来たということか。私がどれくらい役に立つか、均衡を保てる存在か、民へのプロパガンダになるのか、測っていたのだろう。
「イリス様、とても眉間に皺が寄って難しい顔になっていますよ。お顔の皺を緩めてあげてください。」
苦笑まじりにエリオット様なら宥められる。やはり彼は大人だと思う。私はこんなしち面倒くさいことは懲り懲りだけど、これからも勇者であるなら、続くのだろうな。そう、深いため息が出た。
そうだ、それよりも先程の謁見でエリオット様が、共に切磋琢磨するお供を先に選定したと言っていた。
ここに戻って来るまでそのことが気になっていた。今なら聞けるだろう。
「エリオット様、聞いてもいいでしょうか?」
「はい、イリス様。なんでしょうか?」
「さっき謁見の時に、私のお供の候補見つけたって言ってたと思うんですけど、誰ですか??」
「ああ、その者たちのことですか。本日は王への謁見でお疲れかと思っていましたので、明日にお話をさせていただければと思うのですが、、、いかがでしょう??」少し困った顔をして、エリオット様が私に提案する。
「そうなんですか?でも、ちょっとどんな人か気になります。直接会えるのも明日ですか??」
「明日は流石に準備が出来ておりません。1週間後、その者たちをこの王城へ招き入れる準備が整います。ですので直接会えるのは少し後になりますね。」
これにも苦笑しながらエリオット様が教えてくれる。残念。ここで一緒に学ぶ人、恐らく、予測はつく。公式でもあったから。
勇者の幼馴染キャラである僧侶ラウルじゃないかと思ってる。教会が直々に勇者のために選んだ孤児で、特に回復魔法が得意なキャラ。それでいて、2歳年上だから、お兄さん面するキャラでお調子者。だけどここぞとばかりに頼りになるどっしりとした皆んなの兄貴分。そんなキャラだった。
それに、勇者を護るために命をかける回復担当だったから、魔王に最初にやられやすいキャラでもあった。あ、やられやすいって言っても、バトルパートで死にやすいってことだけでもない。ちゃんと恋愛シミュレーションの部分として、バッドエンドだと魔王に寝返りやすいキャラでもあったんだ。
恋愛シミュレーションなだけあって、幼馴染ポジのラウルってチョロくて。上手くパラメータを上げて彼に頼ると、直ぐに絆されて愛を囁き出すし、回復魔法以外にもパラメータカンストして一緒に魔王を倒してくれるキャラなんだけど……俗に言うイージールート。チュートリアル枠というのか、簡単に攻略できるキャラだった。だけど勇者はバッドエンドだと死ぬって言ったけど、ラウルルートでも用意されてて。。。
僧侶なだけあって魔王との戦いが続くと、人々が疲弊をしているにも関わらずフレイア様が争いを止めることもしないことが、彼の信仰心に影を落とすんだ。だけど、周りにお調子者のように振る舞ってるし、兄貴分として勇者に接しているから、勇者も彼に頼り切りになる。
だけどフレイア様が、ニクスに勝つまで戦え、っていうその意志がわからなくなったラウルに気づかないで頼り続けて、心配する声をかけないでいると、魔王が現れてラウルを唆す。
ヒト族が勝つまで戦い続ける苦悩を抱える彼に、寄り添い出す魔王。懸想し出すラウルに、その葛藤にも気づかないまま能天気に勇者が接してると、自分に頼ってばかりで子どもっぽい振る舞いをする姿に嫌気が差すようになるんだ。
すると魔王に忠誠を誓うために裏切りの証として隙をついてラウルに殺されて死ぬんだよね。その時ってよく最初にやられるから、ユーザーにはチョロキャラ扱いされてた。大抵やられると魔王に殺されるか、ライバルとして寝返るかどっちかをしてるキャラだったな。。。これも推しの声を揃えるためにプレイしたエピだった。。。
まぁ。うん。だから、じゃないけど多分この流れなら教会に選ばれるって、教皇であるエリオット様に選ばれることと同義だろうし、そうすると自ずとラウルなんだろうと思っている。うん、5歳にして自らフラグに突っ込まなきゃいけないなんて、やっぱりフレア様は厳しいなぁ。。。
タイトル変えました。内容に変化ありません。




