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勇者の驚愕

しまった、ちゃんと人の話は聞いておくべきだった。思い込みで考えてはいけない。

よく前世で私が怒られていたことだった。適当な性格が災いしたのだ。やってしまった、そう思ったけれど、まさか、いや、そうか。この世界は選択の違いだけなのだ。それに気づくのが遅かっただけ。それだけなんだ。





1週間後、エリオット様が言っていたように、私と勉学を供にする仲間を連れてきた。だけど、私の中で強い思い込みが先行していたのだ。だって、そうでしょう?私は、この世界での‘女勇者’なんだ。それなら、その勇者の仲間は、設定上の幼馴染、僧侶ラウルしかいない、って思うだろう。

だけど、今目の前にいるのは、2()()の僧侶候補。

でも、そうだ、エリオット様は、‘彼ら’と言っていたのだ。きっと気づかないくらい、無意識なところで脳が勝手に都合のいいところだけを切り取って聞いていたんだろう。

自分の注意力のなさに驚いている。こんな単純な言い回しをしていたのに。転生して、思った以上に注意力も5歳児になってしまっていたのか?

気づくべきだった。ともに切磋琢磨する彼らという言い方。そして、()()ということ。そりゃ、もともとどちらも、勇者のお供になるくらいだ。優秀なんだろう。候補にして、()()()が来たら、1番優秀な方を供にすればいい。そういうことだ。だからって、2人ともが、今の私に出会いイベントになるなんて、私のキャパでは、ショートしそうなほどに詰め込みすぎな展開ではないか。。。



ただ、思ったとおり、そのうちの1人、僧侶ラウルが、鈍色の銀の髪と深青の瞳を揺らしながらこっちをニコニコと見ている。お調子者の兄貴分、これは、設定どおり。特に違和感もなかった。彼は、物語の勇者の回想によると出会った頃から、変わらない飄々とした性格らしいから。掴みどころがなくて、だけどどっしりとしているから、頼りになる。優しそうな、兄貴分って感じが今の幼いままでも伝わる。だけど魔王に籠絡されて、敵になる可能性があるチョロキャラってことも気にしとかないと、自分に返ってきてしまう。

そして、私の目の前にいるもう1人。

男勇者を選択すると仲間になる僧侶セシルだ。盲点だと思ったが、これは当たり前だったのだ。

いや、それはそうだ。教皇であるエリオット様がお連れになるのだ。元々どちらもゲームのキャラ紹介に、教皇が勇者のために選定した、見込みのある孤児で、僧侶候補という設定だった。

ここは、物語ではないのだ。今まさに私の現実にある世界。それならば、魔王に勝つ可能性を上げるなら、2人とも紹介されるのが筋になろう。気づかなかった、気にもしなかった自分の愚かさを呪う。

だけどセシル、本当のお嬢様みたいな愛らしい見た目をしている。本当に、孤児なのだろうか?ショートにした金髪にサファイアブルーの瞳が、ザ・ゲームのヒロインみたいで、とっても愛らしい。それに、ちょっとオドオドした感じが、設定にある癒しとちょっと世間知らずな女の子、って感じが出ていて、これには撃ち抜かれる可愛さだ。。。いや、私には推しがいるから、魔王に会う個人的な使命があるから、そんな移り気の多い主人公になるつもりはないけども、、、

というか、ラウルみたいな幼馴染の設定はなかったはずなのに、今ここで、出会ってしまっている。そして、彼女セシルは世間知らずなおっとり系で癒し担当の僧侶。私にはこの情報しかない、、、以前も言っていたが、推しのためにゲームをしていたから、男勇者の攻略対象の情報が何もない。公式に掲載されたビジュアルと職業しかわからない。

この状態で、この子たちと、どうやって仲良くなるのだろう?そして、私はどちらの候補と魔王のところまで進んでいくのか、まだまだ先が見えないが、この選定は誰に委ねられるのか、私は心配だ。。。



だけど、だからと言って、どちらかを選ぶんじゃなくて、どちらも選ぶだなんて、同じ職種で、同じような立ち位置とか、なんでそんな2人を今揃えているのか。どうしてくれよう??

というか、原作にこんな描写はなかったのでは?これは、語られていない裏設定?それとも、転生者が勇者になったこで起きたバグなのか??

これは、、、私はどう接すればいいのか。これから困ったものだ。





「さぁ、勇者様に挨拶をしなさい。2人とも。」そう、エリオット様が2人へ向かって声をかける。その横で私は2人を見ていると。

「はい。俺は、、、いや、()は、ラウルと申します。職業を僧侶と定められた者となります。これからは、勇者様のお力になれるよう、貴女様のお役に立てるように学んでまいります。特に回復については人一倍得意ですので、精進してまいります。これから、10年よろしくお願いします。」

ニコリ、美少年が私に向かって微笑む。まるで包み込むような優しさを称える所作をしている。これは、世の女性たちも食いつくカッコ良さなのだろう。まぁ、私には推ししかいないので、この良さをわかるつもりもないけれど。。。そして。

「ゆ、勇者様!私はセシルと申します!これからはもっとしっかりできるように強くなります!!だから、どうか。私のことをよろしくお願いします。」

あのキラキラしたサファイアブルーの瞳が潤んで私を見ていた。とても愛らしくてまるでハムスターのような所作である。ああ、ラウルよりなぜか信用できるのは何故か。。。まぁ、彼の裏切りまで攻略した私には、今の時点で信用できるのは何も情報がない、こちらのセシルの方だ。だから、ということではないけど、ちょっと態度に出ていたのか、ラウルがこちらを訝しむような目で見ているのが居た堪れない。


「イリス様、もし何かございましたら、ここでお教えくださいね。彼らがいる場で難しければ別の場所をご用意してお話ししましょう。」ああ、エリオット様にも勘付かれてしまったのか。不穏に見える自分を反省して、今は5歳児だから、と自分に言い訳をする。。。


「特に、何か言いたいこととかはないです。これから2人にはお世話になるので、よろしくお願いします。そして、()()()が来たら、ともに頑張りましょう。」少し引き攣った自覚はあるが、2人に激励の声をかけていた。そんな自分が、少し恥ずかしかったのは内緒だ。

誤字修正しました。

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