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勇者の邂逅

パシャ、パシャ……

「イリス様、湯加減いかがでしょう?」

イレーネ様がお湯加減を気にしながら、私の身体を洗ってくれる。くすぐったいし、恥ずかしいから、自分で出来るって言ったのに、「これも、私どもの仕事です。」と笑顔を向けられ断られた。本当は、元々大人だった記憶もあるから、やる瀬ない気持ちがある。だけど2人の仕事を奪いたいということでもないから、渋々ながら、受け入れた。

それとこの2人、勇者の世話係って、もしかしてだけど、ゲームの勇者が旅立った最初の野宿で仲間に話していた人たちかもしれない。

修行は厳しくて大変だったけど、1日のその時間が終わると優しくしてくれた、世話係。気持ちに負けないように励ましてくれた、元気がいっぱいの世話係。彼女たちの平穏のためにも、1人の犠牲者もなく笑顔で国に帰りたいって。そんな旅立ちのスチルと共に語られた、サイドストーリー。彼女たちが、この2人かもしれない。そんな気がするんだけど、、、

「はい、問題ありません。とても気持ちいいです。」ふぅ、とため息がこぼれる。とてもあったかくて、全身の力が抜けて、考えることもどうでも良く、身体も心も、解れていく。思った以上に身体も心も固まってたんだと思う。

「んー、先程から気になっておりましたが、イリス様、私たちには、敬語は不要ですよ。貴女様が私たちの主人(あるじ)なんですから。もっと砕けた話し方をしてください。」

ミーナ様が、とても驚愕なことを言ってくる。イレーネ様は子爵家の娘で、ミーナ様は伯爵家の娘だと先程教えてもらった。爵位持ちで、エリオット様の遠縁だから、私のお世話係に選ばれたって。勇者に仕えるのに必要な条件が揃ってるって。勇者であっても私は平民なのだから。ましてや、あんなどうしようもない親から生まれた子どもなのだから、砕けた態度をしていては、いけないだろう。だから。

「それは、難しいと思います。私は、あなた方より、身分の低い娘です。ミーナ様たちに、タメ口なんてできません。」

「イリス様……。貴女様は、神に選ばれた勇者様です。勇者として選ばれた時点で、我らの王とは別格の地位となります。そのような方に我々が敬語を使われることの方が不遜であり、不敬となります。それに、我々に敬称は恐れ多いことですし、我々と周りへの配慮を思えば波風のない状況を築くためにお辞めいただきたく存じます。。。」イレーネ様が、まるで、私に請うような言い方をする。これは、どうすべきか。ミーナ様を覗き込む。

「そうですよ。イリス様。イレーネが言うように、私たちに敬語や敬称を使わないでください。贔屓だーって、皆んなに怒られちゃいますから。」そう、わかりやすく私にミーナ様が有無を言わせないように、ニコニコと追従をする。だから、、、

「はい、、、うん。わかった。敬語使わない。イレーネ()()、ミーナ()()。これから、たくさん、よろしく。。。それと、ありがと。」と、2人にしっかり頭を下げた。

「イレーネ、ミーナ、でお願いいたします。」

ニコリ、とミーナが圧のある笑顔を向けた、、、ちょっと、怖かったのは秘密。

「……うん。イレーネ、ミーナ……ありがとう。。。」気を、使ってくれた。私が困らないように、萎縮しないように。優しく、慈しむように。。。こんな私を、大切に思ってくれる人たちが何人も、目の前にいる。そのことが奇跡だし、とても幸せなことなのだと気づいた。。。だから、この今の歓びを2人に伝えたくて、感謝の言葉を伝えた。

『いいえ、とんでもございません。』なんて、淡く微笑む2人に謙遜されてしまった。



湯船から出て、チュールを重ねた青のドレスを2人から着せられたけれど。。。

「よくお似合いですよ、イリス様。先程までも十分に可愛らしかったのに、今はもっと見違えるように、お綺麗さに磨きがかかったお姿になっておいでです。」

ミーナが、私を褒めちぎってくる。そんなことはないと思っていたのに、、、

「本当に。イリス様はこんなにも綺麗な銀色のお髪(ぐし)をお持ちなのですね。光に反射して、まるでオパールのような輝きを放って眩いですわ。肌も艶やかな白さで、陶器みたいな柔肌です。。。用意した深青のドレスによく映えますし、アメジストの瞳も、とてもドレスとの相性がいいです。。。」

イレーネが、まるで(うた)の一節をそらんじるよつに、うっとりと私へと語りかけている。確かにゲームの主人公らしい整った外見なのだろう。だけど5年間、見続けた自分の姿だから、そんなに褒められるほど整っているなんて、とはとても思えない。だから2人には私がどう見えているのか、別の存在に見えていないか、なんだか不安になる。



2人に褒められて居心地が悪くなっていたら、そろそろ謁見の時間が迫ってきたようで。。。エリオット様が私を迎えにきた。コン…コン……

「イリス様、そろそろお時間となります。(わたくし)と王の下へ参りましょう。」そう言って応接室から謁見の間へ、騎士の方の案内を受けながら歩を進めていった。すると。


タタタタ……タタ……!!

長い廊下の右方向から、焦ったような足音がしたと思ったら、突然騎士様の前に現れた小さな影。あ、ぶつかる…!と思っていたら、ドンっとした音とともに倒れた影。誰だ、と思ってよく見ていると、黒々と光り反射する髪に映える光輪、俗に言う天使の輪がよくみえる髪に、まるでガーネットのような、深みのある真紅をした瞳が、こちらを向いた。ああこの子は、もしかして、、、そう思って見ていれば。

「無礼者!(わたくし)が誰かわかっているの?!この国の王女、リディア()よ!!あなた達、この私の邪魔をしないでちょうだい!!」

「はっ!大変失礼いたしました!!」騎士様が、彼女へ膝をつき謝罪をしているのをみていると、、、

「申し訳ございません。リディア様。ただいま勇者となられたイリス様を王への謁見にお連れしていたところでございます。お父上の言いつけである学びから()()する貴女様を邪魔するつもりはございませんよ。」ニコニコした笑顔で、後ろにいたエリオット様が騎士様の肩に手を置き彼を立たせたと思ったら、騎士様と私へフォローをしているが、なんて辛辣な言い方なんだろう。この子、勉強が嫌で逃げ出したのか、、、だけどこの子、ゲームの中では男勇者が主人公だと攻略対象になる賢者リディアなのでは、、、?ネットで公開されたビジュアルの、黒髪赤目の美人、賢者リディアと似ている。だけど、確かにリディアはキャラ紹介に、ヒト族の王女で勇者と同い年。ってあったから、今の頃合いにあってるんだけど、、、知的クールで頼れる大人、っていう設定のリディアの面影が、窺えない……

でも、王族内で同じ年頃の王女の名前をおんなじにするなんてしないだろうし、確か設定で黒髪赤目は王族の(あかし)って、書いてあったから、たぶん、他にいないだろうし、、、この子、だよな、、、?もしかして、違う子がいるのか??後でエリオット様に確認しよう。だけど、今は、、、

「リディア様、貴女様はこの国の王女、最も身分が高い方です。そんな方が、安易に臣下に叱責をしてはいけません。王族が謝ってはいけないのは、その(こうべ)が何よりも高貴なものだから。決して、臣下を貶めるために王族であることをひけらかしたり、狭い心を見せてはなりません。寛容な心をお持ちなさい。」エリオット様が、王女様を諭しているこの状況。え、エリオット様、教皇様だけど、王女に忠言できるほど、高い地位なんだ。身分の差がどこまであるのか、勉強をしていない私は、ゲームの知識までしかない。だけど、関係性はきっと思った以上に対等なんだろう。そんなことを見ていると。

「ふん!そんなのわかってるわよ!!それよりも…お前が勇者ね!あんたのせいで、私は今から色んなこと、政治、経済、医学、兵法、魔法、、、とにかくいっぱい勉強をしなきゃなんないんだから!!もっとゆっくり大きくなるはずだったのに、遊びたかったのに、なんで今選ばれるのよ!!」くるっとエリオット様から顔背けたと思ったら、すぐに私を捉えてこんなことをいう。それは、私だって思ってる。()()()()で、また魔族と戦うことになるんだから、、、

誰だって、私は厄病神と思うだろう。平和を、壊した人間を勇者としなければならないのだから、、、

「王女よ!貴女は今最も言ってはならないことをおっしゃりました!!そのようなことはない!勇者様は、我らのため、フレア様のため、これから苛酷な試練に立ち向かってくださるのです!!そのような方に、なんという言い草でしょう?!この方がいなければ、我らは魔族に蹂躙されるのみ。そのようなことがないように、世界を平和にする象徴が、こちらの勇者様なのです!!」ビックリした。誰も言わなかったことをいう王女にも驚くけど、まあ子どもだから素直に言ったに過ぎないのに、それにもエリオット様が大きな声で強く否定してくれた。皆んなのために戦ってくれるんだって、言ってるくれる。だけど、それは建前でしかないはずなのに、それが間違いではないというように、、、とても当たり前の、尊敬を込めるように。

「な、何よ。。だって、私、賢者の職業になってしまったのよ?勇者に付いてく候補になったのよ??私、まだまだやりたいことあったのに、これから、10年ずっと、誰よりも賢くなるために、深く勉強しなきゃいけないじゃない、、、」目に涙を溜めながらも気丈に言い返すリディア様。そんな彼女に。

「貴女様は幼き頃より聡い方です。優秀な貴女様だから、候補にいるのですよ。そのことをご理解なさっておいでです。一時(いっとき)の感情に流されて、そのような発言をしてはなりません。貴女こそ、勇者様のお気持ちがわかる方でしょう?もう少し、勇者様の理解者となっていただきたい。。。」諭すようにエリオット様がリディア様へお話している。いいのかな?私、ここで何も言わなくて、、、だけど、相手が王女様だから、どうやって、話せばいいかわからない……そう悩んでいたら。。。

「……。申し訳ございません。勇者様。取り乱してしまいました。(わたくし)に至らぬところは多々ありますが、貴女様とともに戦えるようこれから精進いたします。それまで、良き理解者として、高め合っていけますと嬉しいです。。。」少し不服そうな表情をしていても、きっと私がこの子と同じように、選ばれただけの存在で、そこに意志がないとわかっているから、同情してくれた。だから、私も。

「ありがとうございます。私におはなししてくれて。私を、理解しようとしてくれて。賢い貴女の足を引っ張らないように頑張ります。だから、少しずつ、仲良くできたら嬉しいです。。。」正直な今の気持ちを伝える。この子があのビジュアルになるのが驚きだけど、職業が賢者なのだ。きっと何処かでこの世界の真理に気づいてしまうのだろう。だから、15歳にしては、大人の魅力が漂う少女と表現されていたのだろう。この子も、きっと可哀想な役目を背負っただけなんだ。そう思った。。。


「ありがたきお言葉ですわ。。。それでは、(わたくし)はここで失礼します。貴方も、ぶつかってしまって、ごめんなさい。。」目を開いたリディア様が、急に王女らしい言葉を話したと思ったら、元来た通路に戻っていった。

エリオット様を見上げると。。

「さて、色々ありましたが、謁見の間へ急ぎましょうか?」ニコリ、私を見て微笑むエリオット様がとても頼もしかった。

誤字脱字、表現を変えました。

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