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勇者の世話係

2週間後、マルクスさんとは別れ、エリオット様に連れられて、王都への旅路が始まった。数日の旅程であるが、初めて人とこんなに長く時間を過ごすことになるとは思わなかった。

だけど、今までが今までの生活だったから、周りに人がいると上手く眠れない。いかんせん、馬車の中もガタガタだからってこともあるけど、この人たちを信用していいか、本能的にまだ決めかねているんだろう。目が冴えて仕方ない。だからむしろ、昼間の移動中にウトウトして過ごしてしまう。

ああでも、だからかはわからない。3日目にはエリオット様が私の馬車の周りに人を遠めに配置してくれた。この日は、少しゆっくり眠れた。4日目の昼前、王都手前の街に着いた。今日は一日ここでゆっくりして、また明日の朝、王都に向かって、馬車で野宿。6日目には王都に到着するんだとか。だけど、ここで疑問が出た。

「エリオット様。私のところに来た時、3日くらいで来ました。なんでこんなに帰りはゆっくり何ですか?」

少ししまったという表情でエリオット様が私に苦笑していた。

「お気づきになられましたか。。。本来、貴女様の生まれ故郷と王都に進むだけなら2日程の旅程です。ですが、これも馬や人に負担をかける旅程です。失礼ですが、現在イリス様は病み上がりでございます。可能な限り負担の少ない旅程を組んであります。医師からも、これくらいは必要な旅程と確認済みです。ですが、お辛いようでしたらお教えください。もう少し到着を遅らせましょう。」

本当は、教皇様みたいな偉い人から‘様’付けなんて嫌だって思ったから、敬称なしで呼んで欲しいとお願いしたけど、エリオット様から却下されてしまった。やはり勇者は、神の愛し子だから、敬称なしでは宜しくないって、言ってた。それだけじゃなくて、この旅程まで、こんなに私を優先して組んでいるなんて、神の愛し子とは、本当に、腫れ物に触るような存在なんだろう。

「大丈夫。私のせいで遅くなってたんだね。。。エリオット様が頑張って来てくれたってわかったから、ごめんなさい。」

「いえ、(わたくし)こそ、説明不足により貴女様を不安にさせてしまい、大変失礼いたしました。」彼は、哀しそうな、寂しそうな表情で私に笑いかけてきた。


6日目の早朝、寝ていた私にエリオット様から「勇者様、お休みのところ恐れ入ります。予定通り、本日の昼に到着をいたします。イリス様、ご準備をお願いいたします。」そう、馬車の外から声をかけられた。高めのバリトンボイスが、私の耳に響いたけど、何だか少し心配そうな声だった。



ガラガラ……ガラ…………

馬車が、石畳を走るような音に変わった頃、私は王都に到着した。街は、前世の世界でいうところの、中世ヨーロッパ風。だけど活気に溢れてて、商店の呼び声がここまで響いてくる明るさがあった。こんな人々の過ごす世界を、神は戦争で壊すんだと思ったら、少し腹立たしい気持ちになった。何で自分達を信じる人達の命を壊して、平気な顔で選定できるんだろう?彼らは、何を基準に生きているのか、わからなくなる。



「イリス様、あちらが王城でございます。もう直ぐ、数刻もせずに到着いたしますので、先に体の汚れを清めてから王への謁見をいたしましょう。事前に、イリス様へはメイドを2名、世話係に用意させていただいております。その者たちへの紹介を行ってから、湯船に浸かりましょう。」

まるで、城の主みたいに、エリオット様が準備してくれていた。とても、有り難くて申し訳ない思いになる。。。








「イリス様、こちらの2人が貴女様の世話係になりました、イレーネとミーナです。(わたくし)の遠縁となる者ですので、何かあれば、(わたくし)にも話が入ります。旅立ちまでの間、安心して、お過ごしいただけるよう、最大限配慮いたします。」

「お初にお目にかかります。勇者イリス様。私はイレーネ。イリス様の身の回りのお世話をするよう拝命いたしております。なんなりとご命令ください。」

黒髪を一つに結んだポニーテール。そして灰色の目をした切れ長の目が綺麗な女性。それが、イレーネ様の印象。それに、とても真面目そうな表情(かお)をしていて、厳しそうな硬い声だけど、透明感のある涼やかな声をしている。冷たいわけでなく、私を気にかけるような話し方。

「初めまして!イリス様!!私はミーナです!至らないところもありますが、貴女様のお役に立てますように、しっかり働きますので、お願いします!」

ミーナ様は見た目のままのような元気な声で、明るい印象だ。私への好奇心が伝わってくるし、高めのちょっと愛らしい声が私への優しさを感じる。赤茶の髪をショートにして、緩めのパーマがかかっているけど、これは天然なのだろうか?眼の色は綺麗な青色。まるで宝石みたい。

こんな2人が私の面倒を旅立つまでみてくれるというのか。とても、ありがたい話だけど、自分のために心を砕いてもらうのが、申し訳ない思いにもなる。これから、10年、変わり映えのない生活が訪れることが決まってしまったのだから。

「初めまして。イリスです。これから、旅立ちまで、申し訳ないですが、よろしくお願いします。」ペコリ、と頭を下げて最大限のお詫びをする。


「それでは、イリス様はあちらにお越しいただけますでしょうか。湯屋へとご案内いたします。」

「旅の疲れをしっかり落として王様の下へ行きましょう!」ニコニコとミーナ様が話す姿に眩しさを感じた。

「お2人とも、お忙しいのに、()()()()()で時間を煩わせてごめんなさい。ちゃんと準備してたら、汚れなんてなかったのに。。。」

「そんな、準備をしていても、何日も旅をしてたら汚れますよ。お気になさらないでください。」ミーナ様が両手を左右に振りながら、謙遜する。

「イリス様は、(わたくし)どもへお気を使わずとも構わない方です。貴女様の望みが、我々の行いたいことです。」


不思議だ。少し前までは、誰がどんな声をしているかなんて、気にも止めなかったというのに、衣食住に困らないとわかった途端、私に関わる人たちの声が、どんな声なのか、気になり出した。現金なものだと思うし、今まで気にしたことのなかった、周りの感情が動いていたことにも気づけた。きっと、私の感情は、凍っていたんだと今ならわかる。だからか、周りの優しさがこんなに私に向いていたことが少し、戸惑いもあるけど、嬉しい。きっと勇者だからっていう理由はあるけど、それでも私を駒としてだけには見ていないとわかる。これは、私が前世では大人だったから、気づけた人の機微なんだろうと思う。

だって、前世では私は元々声フェチだったから、人の感情を声から気づいていたし、特に気になっていたことだったから。それで推し声優である彼女に、生きる力をもらっていたというのに。。。どうして今まで忘れていたのか不思議なくらいだ。


だけど、っていうことじゃないけど。魔王以外の声が思い出せない。いや、思い出せないというのも、おかしなことを言ってる自覚がある。でも本来ゲームの世界だったはずだから、全てのキャラに声があてられてて、声優がいたはずなのに、その声優の顔も、どんな声だったかなんてことも、覚えていない。推し声優以外にだって気づけるくらいには、声フェチのオタクだったはずなのに、誰も思い出せないし、わからない。

まるで、イレーネ様たちは、元からこの‘声’だったんだと言わんばかりに、声優が声を当てた存在ではないって思えるような本当の声のようで。ゲームの世界に転生しているはずなのに、実はそうでもなかったのだろうか?自分がこんなに記憶力のない人間だったのかも思い出せないけど、どうして魔王の声だけ、推し声優が当てた声だったことを思い出せたのか、逆に不思議だと思う。

少し言い回しを変えました。

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