勇者の誤算
粗相がないよう、なんて思ってしまったのがそもそもの間違いだったのではないか。
そう思うくらい、フラグが立ってしまった。目の前でヒリヒリと意見交換という名の口喧嘩が勃発している。
これは、避けられない運命だったのかもしれない。。
中衛候補のお2人と教会本部でお会いするのは、次週になる。だから、後の3人とも会えることになるのはその時。これが、本当の中衛候補との邂逅になるのだろう。気持ち的にも、ここがスタートだと思う。
ダンジョン攻略の要になる彼らとの関係をどのように構築できるか、それがこれからの課題となるのだ。
これが、私たちの強さを高めるための試練だ。絶対に、私たちは彼らとともに、先を目指す。
それは推しのセレネアへと繋がる道だから。ただ倒すためではない、邂逅するための布石。負けられない戦いに、絶対的な信頼を置く仲間を見つけるための、限られた選定の時間。
間違えない。正しい選択を、ここでしてみせる。
そうでなければ、転生した意味が私には、ない。ゴミのような今世を、美しい彩りで飾ることもできない。
なんて、意気込んでいたというのに。
ガレスは、真面目で誠実だと思っていたけど、猪突猛進。一点集中型の一直線なおバカなのかもしれない。いや、脳内も筋肉でできているといっても、良いと思う。そう思うくらい、なぜに考えなしにセドリックへとふっかけるのか?なんなのだ。2人の犬猿の仲は運命だというのだろうか?
そんなもの、捨ててしまえ。なんて思ってしまう。。
いや、本当に、どうしてこんな簡単なことで争うのか。ちょっと堪え性がなさすぎではないか??
なんて、思ってしまう。
「なぜ、イリス様からのご提案を受け入れない?」
「受け入れない、とは言っていない。その状況で可能なのか、と問うているのだ。」
「なに?イリス様を疑うのかっ、、、??」
「誰もそのようなことは言ってないだろう?我々だけで可能かどうかを確認しているだけだ!」
「確認をするということは、疑っているではないか?!」
ああ、向かい合って、まるで見つめ合うカップルのように接近している。。。
実際にはガンを飛ばしているだけなのに、ケンカップルと評される所以かもしれない。なんて、現実逃避をしたいところ。
だけど、原因は私の一言だから、介入しないわけにもいかない、、、というか、ガレスは私の信者か何かだろうか。それくらい、信頼をしてくれているのだろうけど、私の言葉は全てが真実とも限らないのに、、、
「ごめんなさい。不快になったのかもしれないですが、私たちは5年間、この訓練方法で続けてきました。2体2に分かれてダンジョンに潜り、2人の連携を強化しながら実戦で学び、魔物を駆逐する。これを初級ダンジョンで繰り返していました。やはり、セドリック様方は、初級より中級以上でないと、連携の訓練に意味はないと考えておいでですか??ですが、危険の少ない初級ダンジョンである程度の鍛錬を積んでから、次に進みたいと考えてます。」
驚いた顔をするセドリック。やっぱり、この訓練だと出番が少ないのだろう。練習にもならないから、彼は中級以上に進みたいのだろうか。
だけど、今の私たちの連携状況では、中級に進むと全滅の危険がある。人数も多くなるのだ。下地はきちんと整えたからでないと、進むのはリスクが高い、、、
気持ちも沈み、顔を下げていたらリディア様から。
「いえ、そうではございません。逆でございますわ。セドリックは、そのような訓練を初級ダンジョンで行うことではないと考えているのです。私も同様ですわ。あそこは、魔物の巣窟です。勇者一行といっても、まだ幼い子どもだけで潜る場所ではないのです。仮に、その物言いから日頃より潜っていると勇者様が仰っていても、我々戦闘の素人で連携を学べると思えません。事前に連携訓練を実施してから潜るべきです。そうではないと、命がいくつあっても足りませんわ、、、?」
えっ。。。??
初級ダンジョンなのだから、魔物もレベルが低いのだ。死ぬリスクは極端に低い。だから、あのダンジョンを利用して訓練をしているというのに、まるで私たちでは攻略が難しいという言い草。
けれど。あのダンジョンは、、、
「失礼します。リディア様のご懸念もごもっともでございます。ですが実は、我々4人においてあのダンジョンは一度完全攻略済みでございます。ですので、大変申し上げにくいのですが、我々にとっての訓練場として現在は機能しており、簡易訓練の場としては最適になっております。リディア様の仰ることも存じておりますが、イリス様が仰っていることも、間違いとも言えないのです。。。」
少し困ったような微笑みをしながら、私の方を向くセシル。なんということだ。
この言い方では、まるでリディア様が懸念するようにあのダンジョンは初級のものだが、我々で攻略できるものではないのだろうか、、、??
いや、だけどゲーム内では勇者一行がミニゲームとして攻略するダンジョンだったはず…まして、最初のダンジョンである。そんなに仰々しいものだったろうか、、、??
「本当ですの……?あのダンジョンを攻略済みとは、、何かの間違いということではなくて??」
「はい、間違いではございません。もし、お疑いのようでしたら、エリオット様へとご確認ください。これは本当のことでございます。」
セシルが、私の代わりに応えてくれている。
けれど、本当にそうも驚くことなのだろうか??あれは、初級ダンジョンであって上級ダンジョンでもない。
初心者向けのダンジョンである。
何ゆえこうも周りの空気がピリつくのか?
ガレスとセドリックの放つ雰囲気よりも、なお冷たい空気が漂っていると感じるのは気のせいだろうか?
「……イリス様?如何いたしましたか?」
ガレスがこちらを不可解そうに尋ねてきた。
「いえ、皆さんがどうして驚いているのか、、、あのダンジョンは初心者向けでしたよね??私たちの訓練にはちょうど良いくらいの。。。」
「……………。イリス様…?本気で言ってるの??」
ゲームみたいにしっかり者のお兄さんとしてフォローしてくれるラウルが、何故か驚愕の顔を私へ向けている。
「え、えぇ、、、?あのダンジョンは、私たちの訓練にはちょうど良いくらいの、初めて魔物討伐を学ぶような、私たち初心者が練習するためのダンジョンですよね、、、??」
「……イリス様。。。あのダンジョンは初級ダンジョンであり、決して初心者向けということではないよ。。。ましてや、俺たち向けということでもなく、新兵の訓練向けダンジョンであり、一流の戦士が初めて挑むダンジョンなんだ。そして、子どもだけで訓練をすることを想定していない、、、ただ、俺たちの能力が極端に高かったため、攻略が適ったものになる、、、」
少し呆れたような物言いで、ラウルが私に教えてきた。え、まさか、、、??!
私は、なんてとんだ勘違いをしていたのか。。。!
リディア様たちだけでなく、セシルたちも何だか少し、私に向ける視線が驚きに染まっているのに居た堪れない気持ちになってしまった、、、、
すみません、こちらのラウルも修正しました。。。




