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女僧侶の攻略

まさか。


まさか、まさか、まさか、、、、、



勇者様とパーティーを組めるかもしれないなんて。私は、生まれてこのかた、祝福されたこともない孤児でしかなかった。

そんな私が勇者様の魔王討伐パーティーの候補に選定いただけるなんて、夢にも思わなかった。

確かに努力していた。男でも、女でも子どもでも、お年寄りだって、、、どんな人でも、極悪人でも、その身体に、心に、癒しを必要とする人に、その力を分け与えられるように。。。

誰よりも、どんな人よりも、良い回復魔法をかけられるように。。。

そうしないと、私の生きる価値が見出せなかったから。だから私が生き残れるよう、力をつけた。

そう、私は願って学び続けていた。


だから、というほどではないが、教会内でも私が秀才の類だと思われていたようで。それは、彼も同じだった。彼が何を思い、何を願い、学び続けているのか、私にはわからなかったが、目指すところは同じだと‘知っていた’。いや、理解していたという方が適切か??

そう思うほど、ラウルという同期は私と同じ()を持っていた。諦めた人だけが持つ瞳。けれど、その奥には熱い火が灯っていて、最後には掠め取る心を残している。そんな危うい瞳。

詐欺師といっても過言ではない瞳をしているのだ。私だって、全てを投げ打てるのであれば、最後は捨て置いてしまいたい。それが、私の生き方なのだ。



そうした生き方が功を奏したのか、私は勇者様へのお供候補としてお目通りが叶うこととなったのだ。

なんて幸運なんだろう。これで私は、生きることが、叶うのだ。誰ものにも脅かされない、安全な存在として。安全な供として。

在り続ける事を認められたのだ。

フレイア様に感謝した。生き続けることを認められた、私のこの生を。ああ、だけど同じタイミングで彼も選ばれていた。

それはそうだ。実力でいえば私と彼は同じところまであるのだから。そんな私たちは、勇者様に相まみえることになったのだ。


勇者様は、幼いながらにしっかりとした傑物だった。その奥に宿る魂は、きっと燃え盛る炎のような熱さがあるのだろう。それがわかるくらいに、勇者イリス様の態度には真っ直ぐさが滲んでいたのだ。


彼女との訓練は、中々に厳しいものだった。本来、年齢に合わせてゆっくりと、彼女の膂力に合わせて訓練を続けていくはずだった。

だけど、イリス様のその力は目を見張るものがあった。成長が、著しいのだ。1を10に昇華して、次に繋げる強さがあった。魔力量でも大分上位の方だから、近接担当のイリス様であるはずが、5歳児とは思えない動きをするのだ。それに周りがついていけなくなった頃、ガレスが呼ばれた。

イリス様の稽古相手として、同じ頃合いの強さを持つ彼が呼ばれたのだ。年齢は5も上のはずなのに、オドオドしたところが気になる弱気な男。だけどその腕は流石騎士団長の息子と思えるほどに強力で。

無意識のうちにイリス様を圧倒するのだ。。。

イリス様は、自身の力が弱いと思っている節がある。その原因の一つが彼であるけれど、多分イリス様、見つめる先が、何よりも先過ぎて、魔王セレネアしか比較対象としていない。

だから恐らく、その強さが旅立ちの頃合いと考えている。その頃の強さを今も持っていなければならないと勘違いしている。

私たちは、魔王セレネアを倒す強さを持つ必要はあるけど、今の年齢に見合う修行では手に入らない。そんなことをこの幼さでしていたら、死んでしまうのだ。

だから私たちは協力しながら、切磋琢磨をしてゆっくりと、成長に合わせた修行をする。

けれど彼女の()()は、苛烈なのだ。それくらい、彼女の訓練への入れ込みは凄まじいものがあった。だけど私たちは結果的にイリス様の駒として動くことになるから、彼女の望む強さがその先というなら、私たちも目指す努力はする必要があるのだ。

そんな、軽い気持ちでいたことが、いけなかったのか。。。

訓練を続けて2年が経過した頃、イリス様が、ダンジョンの下見に行くとレオン様に進言したのだ。だから私たちも、着いていくと言ったのだ。それに、下見だ。攻略に向かうわけでもない。

それなら、私たちでもできる。そう、思って着いて行った。それが、こんなに大事(おおごと)になるとは思ってもいなかった。



本来、初級ダンジョンは、新兵と2年目が、軍として魔物を駆逐する訓練に使用するものなのだ。だから、私たち勇者一行であっても、訓練中の身では攻略など出来るものではないはずなのだ。

それは、一流の戦士が訓練に使用する訓練場。そんな場所なのだから。

だから、初めはレオン様も私たちが下見であってもダンジョンに向かうことを渋っていた。まだその時ではないのだから。

この教会を旅立つ10年後、そのくらいに初級ダンジョンを攻略し終えている計画のものである。それは、初級という名が付くものの、新兵の訓練用。新兵が一人前となる試練として在るものなのだ。階層だって、中級や上級、最上級に進むためのもの。初級とは名ばかりの一流兵士が使うダンジョン。初級のくせして30階層まである難関だ。これを過ぎれば中級以降はむしろ、連携を学ぶためのもので、最上級に至っては、国の至高となる強さを手に入れる訓練用。この国では、魔法師団長と騎士団長、総司令官程しか攻略していない代物だ。

だから、初級ダンジョンなぞは、早くても旅立つ3年前くらいに攻略を始めて旅立つ頃に完全攻略するくらいのものなのだ。これは、ダンジョンが一般の戦い方をかじっただけの者に進ませないための、戦闘員向けのものである証拠。

そんなもの、中衛もいない私たちだけで攻略するものではない。そこを、イリス様ははき違えていたのだ。

()()だからと、私たちが攻略できるものと、考えていた。

だから、下見で10階層に進もうと言われた時には止めた。しこたま止めたのだけど、イリス様ったら、何を勘違いしたのか、30階層まで進まないといけないと勘違いをした。

余計に焦った。私たちだけで行くものではない。準備をして日を改めようと。すると彼女、レオン様に攻略に必要なもの、聞き出していた。

下準備が足りないと解釈したのだろう。そんなことではない。私たちでは死んでしまう。そんなものなのだ。ダンジョンとは。

30階層まで到達する余力と忍耐が必要なのだ。幼い私たちだけでは。まして、イリス様はまだ7つを過ぎたところだ。攻略するものではないのだ。

だけど、そんなこと、イリス様に関係がなかったみたいで。レオン様の引率がないことが、下準備が出来ていないことと、理解してしまったのだ。

レオン様の予定に嵌めて、攻略の日取りを取ってしまった。。。10日、このダンジョンを10日で攻略する準備を始めたのだ。何ゆえに、10日、、、??

3年かけて少しずつ攻略するダンジョンを、たったの10日で、、、??

レオン様も何かの冗談だと思ったのだ。

行けるとこまで行く、死なない程度に練習をする。

そう、解釈することにした。私たち、全員が。

だから、着いて行った。共に、戦うための訓練について行くため。。。


だけど本当に、10日で攻略してしまった。私たち、4人だけで。イリス様の、的確な指示のもと、私たちが、やり遂げた。。。

危ういところもあったけれど、イリス様に助けられた私は、彼女の求めるタイミングで回復をして、助けて、必要な力を渡して、戦い抜いた。

実際の戦闘は実質ラウルと2人だったはずなのに、私たちにも力を上手く使わせて、4人で攻略したのだ。


とても、強い達成感。そして、多幸感。。。驚く程に、周りが私たちに畏怖をした。そんなこと出来ると、思われていなかったから。

だけど、レオン様とエリオット様は、そのままを受け入れた。むしろ、レオン様に至っては、イリス様を尊敬の念で見つめていたくらいだ。騎士団長までなった人が、なんて思わない。それくらい、イリス様は規格外なのだ。エリオット様も、納得していた。

私たちが勇者一行だから。有り得ないことも、有り得ることがあると、そのままを飲み込んだのだ。

やはり度量のある人たちは、他の人たちとは異なるのだ。だから、むしろ私たちを大切に扱ってくれた。

腫れ物のようでもない、どっしりとした温かな強さで。

そんな中でも、勘違いをし続けるイリス様。私たちの戦い方が上手でもなくて、攻略もどうにかこうにか、スマートに行えていないから、周りに呆れられていると勘違いしていた。


なんて、可愛い人なのだろう。どんな勘違いなのだろう。どれ程に、ストイックで、見据える先が、私たちヒト族の勝利を掴む未来だけなのだろうか。

これ程までに、魔王セレネアを圧倒したいと、考えているのか。何故(なにゆえ)に、執着をしているのだろうか?不思議だと思う。

本当に、私たち、国民のため、どこまでも真っ直ぐに進んでくださるのだろう?

悔しい。どうして、この国に住む者たちは、こうもイリス様を畏怖の対象とするのか。認めないのか。。


ここまで真っ直ぐに、一直線に、強さを求めて、私たちの未来のため、進んでくださる方に、なんという仕打ちをするのか。許されない。

私だけでも、イリス様を守らなければ。全ての悪意から遠ざけて、私たちだけの、温かな空間を作らなければ。全ては、私の命を救ってくださったイリス様のために。。。。

そのことをしっかりと、私は心に留めながら、訓練に明け暮れているのだけど、その後も、完全攻略をしたはずの初級ダンジョンに、私たちは何度か訓練の総演習に通っていた。

イリス様の、強い要望で。復習は大切だからと。

スムーズに攻略出来るようになることが、大事だからと。なんて真面目なのだろうか。なんて、一途なのだろうか。そんな一途さを私に向けて欲しいと、思ってしまうほどに、セレネアが羨ましいほどに、妬んでしまう。


いつから、私はイリス様に愛しさを募らせたのか。わからなくなってしまった。

だけど、彼女のその真っ直ぐな横顔に、私は焦がれてしまうのだ。その、熱い瞳を私に向けて欲しいと、焦がれてしまう。。。



だから、彼女が中級ダンジョンを目指すなら、私たちはこの先も着いていくと誓った。どんなに困難な、()ではないと言われても、彼女が望む強さがその先だというなら、私たちは同じように着いていくと、決めたのだ。

だから、中衛候補が決まった時は喜んだ。これで、イリス様の目指す先を見に行けると、共に歩めると、嬉しくなった。


だけど、なんということだろうか。

またイリス様は、人を魅了するのだ。何故に彼女は、私たちを惹きつけて止まないのか。。。

私の気持ちは彼女に届かないのだろうか。

いつか、私の想いを伝えられることが出来るのだろうか、、、??

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