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勇者の初対面

本日、私が10歳となった次の日。

中衛候補の2人と、初対面をする日が来た。

長かった。。。いや、実際には、何ヶ月と待っていたわけでもなく、1ヶ月もしない期間だったが、思ったよりも、長く感じた。

私も、ラウルたちも、今か今かと待っていたからなのだろう。この日がくるまで、時間が牛歩の如く進むから、1日1日の修行が長く感じたのだ。

だけど、それをレオン様たちには気づかれていたようで、、、

「全員!気が緩んでいる!!!そのままでは中衛候補に会う時には、腑抜けとなっているぞ!!?」などと、ガレスと一緒に怒られた。それに、最近はレオン様の剣を躱すことだって上手くなっていたのに、今は何だか、習い初めの頃の様な、ぎこちない動きをしてしまっていた。。。

それは私たちだけじゃなくて、後衛の皆んなも、何かしらの気の緩みがあったようだ。現に、セシルたちはエリオット様に叱られていた。

「皆を回復すべき後衛が、そのように素早く動けなくては、()()()となってしまいますよ。」なんて、チクチク叱られていたのだ。


でも、これでやっと、彼らと対面できる。

それぞれの気持ちを、確かめあえるのだ。これから、魔王の先まで辿り着く仲間ができる。

けれど。どんなに身分が尊くとも、私たちを仲間と認めてくれるのか、私たちと同じ気持ちをもって、歩んでくれる存在になるのか、、、??

このまま、最後のその時まで、共にあることができるのか?

私たちとともに、この先にある、負けない未来を目指してくれるのか。。。?




「さぁ、イリス様。こちらにお越しください。皆さんは、こちらで待機をしてください。」

そう、エリオット様が、私たちを誘導してくれる。

だけど、3人は別室待機だそうで、私が初めに対面を果たすのだそう。

それはなんだか、勇者とその他大勢みたいな扱いを受けるみたいで、モヤモヤする。

3人のことを軽くみているんだと、言われているようだった。

「ご容赦ください。彼らはあくまで‘候補’。イリス様、貴女様よりその身分も、その意義も、上にはなりません。尊い身分の方へ会うならば、貴女様が、何より優先されます。」

クシャリ、苦笑いをしたエリオット様が、私を諭すと、「イリス様、私たちのことはお気にせずともいいのです。勇者である貴女様と旅立つのであれば、私たちには今後も起き得ることでございます。これからを知るのにも良い機会です。」そう、セシルが私へ慰めの言葉を掛けていると、後の2人も同じ様な気持ちなのか、ウンウンと頷いていた。

だとしたら、セシルを含めた彼らは、私すらとも、地位が違うと言っているのだろうか??

それは何だか、とても寂しい思いだ。。。





「初めまして。勇者に選定されたイリスといいます。至らぬところもありますが、一緒に強くなりたいです。よろしくお願いします。」ペコリ、最初が肝心だと思った私は、応接間の奥に腰掛ける幼さが残る2人に声を掛けた。そう、きっと彼らが中衛候補なのだろうと、思ったのだ。

すると。

スッと応接間の椅子から立ち上がる黒髪の女の子。腰まで伸びる綺麗な黒髪を揺らしながら私の正面に立ってくれる。

()()()()()()()()()()()(わたくし)は、この国の王女リディア。職業は賢者でございます。勇者様のお力になれるよう、この力を使って参ります。」

フワリ、スカートの裾を掴みながら深々とこちらに挨拶をする少女。

あの時出会った勝気で可愛さが残っていた王女様は、真っ直ぐ上を向き、お人形さんのような整った顔立ちに成長していた。そして、私と同い年だというのに、公式ビジュの片鱗が窺える妖艶さがある。まるで同年という設定が嘘のようで、鼻にかかった少し低めのウィスパーボイスが、大人びた色香を魅せていた。

それに、王への謁見時に会ったはずの彼女が、まるで初めて会ったような口振りをしているのは、恐らくあの時のことは忘れろという、合図なのだろう。

あの時出会った王女様は今もやはり、変わらない強かさがあると思う。

だけど、この子の攻略方法も何もかも、男勇者をクリアしていない私は知らないのだ。それに、今世では私は勇者で、彼女は一国の王女。だから、どう接していくべきか見当もつかない、、、

クリアしていない分、私の中では後衛であるセシルと並び彼女も、ダークホースといえる子だ。



そして。。。。


「勇者様にお目通り叶いましたこと、恐悦至極にございます。私は魔法使いの職業に選定されました、セドリックと申します。以後、お見知りおきを。」

貴族の礼をしてくれたセドリック。

彼も私と同い年のキャラ。こちらは、私も攻略したキャラだから心得ている。ただ、攻略が面倒くさいキャラである。

皮肉屋の彼は、ガレスをライバル視し犬猿の仲になる設定がある。いわゆる、ツンデレキャラ。

だからなのか、先程の王女と同じ様に、その声にはとても真っ直ぐな印象を受ける。そして、少しの自信のなさを隠す様な虚勢が、勝気に映り、声色に乗ってしまっている。

だけどそれは、彼のコンプレックスの裏返しなのだ。


本当は彼、騎士の名門一家の三男坊。

だからレオン騎士団長にも幼い頃に会っているし、ガレスにだって出会っている。

家族も、レオンも、なんならガレスも、職業が騎士なのに、彼自身は魔法使いだ。だからガレスが羨ましいし、妬ましい。故に言い方もキツくなる。


元々騎士道精神のある彼は、その感情を恥だと捉えており、誰にも言えずに余計に苛立ちを抱えてしまう。そして周りに強く当たってしまうのだ。

これではただの八つ当たりである。そんなものは、騎士道とは縁遠いものと、彼も分かっている。

そして、その精神性から誰よりも何よりも、彼はその態度を深く後悔している。だから半端になることがないよう、騎士道を潔く諦めたいと葛藤しているのだ。


だとしても、葛藤がわかりにくい彼は、いつもツンツンと皮肉を交え話してしまうものだから、真面目なガレスが嗜めるので余計に自分と比べてしまい、反発することを繰り返す。

そこからどんどん犬猿の中に発展していき、その間で揺れ動く勇者との関係に大いに盛り上がるのだが、一部のファンの間では、この2人をケンカップルと評してファンサイトまで出来ていた。



まぁ、それはさておき。

ガレスとの口論を差し置いて、その後の彼の皮肉を、勇者が嗜め続けているとバッドエンド一直線に向かっていく仕様となる。

その助言に嫌気が差すと彼は、勇者に嗜められないよう上手く逃げるようになる。ほとぼりが冷めるまで、酒場を練り歩くのだ。そんなところで魔王セレネアが偶然を装って接触してくるようになる。

すると、元々ガレスを引き合いに出しながら嗜める勇者に、不満を爆発させているセドリックだ。その彼に寄り添い話を聞く魔王の姿に好感度が上がっていく。話す度に彼女の共感が高まることが嬉しい彼は、誘惑を受け入れてしまう。

しばらくしたらそのまま、勇者の側にいたくないと願う彼を魔人族の陣地に招き入れ、セレネアの指導でその才能を開花させていく。

そして。彼女セレネアは、セドリックの全てを肯定して受け入れ、魔法の才だけでなく剣の腕だって褒めて伸ばしていく。

実は彼、魔法戦士として才能があるのだ。剣技に得意な魔法を組み合わせることで、剣士としての鈍い動き部分をカバーする。

そりゃそうだ。

元々騎士になりたかった彼の剣の腕は、達人級であるガレスと比べれば劣るものの、努力の結果、一般兵以上なのだ。一流の騎士並みである彼に、達人級である魔法使いとしての動きがハマった時、何倍にも力を発揮する。

セレネアの助言で戦うスタイルが決まった彼は、長年のスランプが嘘のように、一気に力が開花する。

それを導いた彼女に惚れ込み、魔法剣士として魔人族について行ってしまう。


なぜ酒場でしか会わないセレネアが彼の戦闘スタイルの最適解に辿り着いていたのか?理由は明確にされてないのだけど、きっとどこかで見てたのだろうと思っている。


多分本当のところは、彼女の配下が密偵をしてたんだろうなっていう台詞があり、それで知ったのかもしれないって、言われてる。ファンサイトでもそんな議論が多数だったから。

ちなみに、公式では発表はなかったところだ。


そして、、、

勇者がセドリックを攻略するなら、彼の魔法の才能なんて褒めるのはもっての外。

魔法使いとして学び続けた努力と、それ以上に血反吐を吐くよう修行した剣技を学んでいたこと、この彼自身の生来の地道な学ぶ姿勢、伸びていく力、そんな彼自身を褒めていく必要がある。

その上で魔法使いとしての努力が追従するものがないと、彼自身が受け入れられるようになった時、彼が魔法使いであることを認めると少しずつ、彼を攻略できるようになる。

皮肉屋で拗れた性格の彼は、ストレートに魔法の才能を褒める選択肢よりも彼自身を認めてあげる選択肢を選び続けるのが攻略のポイント。

結果的に剣への執着を解きほぐしていく必要がある。また選択自体はわかりやすいのに、その分彼の心の拗れが強いから、選択肢を選ぶ項目が多くて時間だけが過ぎていく。だから攻略がめんどくさい。


だけど、私にとって大切なのは、ここまでの攻略時に聞けるセレネアの声。

甘く誘惑をする声が、脳を蕩けさせるような、いつもの推しより艶っぽい声が、、、

これを聞けるから、セドリックも全クリ済み。推しの声がクルクル回る万華鏡みたいで、七色の声色を使いわけ聞かせてくれる太っ腹なこのゲーム、とても有り難かった。

実際、このゲームのセレネアの声はとても魅力的で、元々が製作者の中に彼女のファンがいたんじゃないかというくらいだった。

だって、台詞回しが彼女のために作ったものじゃないかと、疑いたくなるくらいハマっていたから、ファンの間では噂の的となったのだ。


長々と講釈をたれたけれど、結果的に彼の機嫌を損ねると、すぐにセレネアについていっちゃうキャラだから、彼との関係をしっかり構築するのが、ここからの正念場だと思っている。

ダークホースであるリディア様は、これからの様子見しかないけれど。



「ご挨拶、ありがとうございます。お2人のことは、中衛候補だとエリオット様から聞いてます。他にも一緒に戦う仲間たちが3人いますが、その子たちとも仲良くしてくれると嬉しいです。それと、私に至らないところが多々あるかと思いますが、そんな時は教えてください。お2人とも良い関係を築けたらと思っていますので。。。これからどうぞ、よろしくお願いします。」

とりあえず、職業には触れないでおこう。本人たちの納得がいかない職業の可能性が高いのだ。まだまだ仲が良くない私が聞くものではない。

魔法に関することよりも、2人が馴染んでくれるように、自己紹介だけして無難なことを言う。

彼ら彼女らの直接の能力なんて、これ以上は突っ込んで聞かない。

特にプライドも高い2人だ。徐々に、関係性を構築していこう。

「えっと、今日は挨拶だけで終わりと聞いてました。今後は、お2人も私たちの訓練に合流してくれるって、話を聞いてたので、私たちの戦闘スタイルや今後の方針など、またその時に皆んなで話し合いましょう。エリオット様、それでよろしいでしょうか?」

「イリス様、問題ございません。そのように、手配しておりますので、また来週以降のところでお2人が時間を合わせお越しいただけます。」

「はい、勇者様。我らはそのようにスケジュールを事前に相談を受けておりますので、来週早々、伺わせていただきます。お願いいたします。」

「直ぐに合流できず申し訳ございませんわ。この後の予定を済ませて来週からは時間に融通を利かせますので、お願いいたします。」

まるで、大人みたいなスケジュール管理と、ビジネス感覚。2人はやはりやんごとなき身分なのだと実感する。来週に、粗相がないよう、気をつけなくては……

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