魔王の焦燥
「太陽神フレアの子らよ。我は魔王、セレネア。とうとう、久方ぶりの勇者が選定されたようだ。拮抗していた我らはまた、戦わなければならない。準備に入ろう。次は勇者の旅立ちの時。それまでは、この世界は互いのもの。盟約を忘れるな。」
風の魔法を使い、我はフレアの子らに、魔国の言葉を届けた。これは、奴らへの牽制。今はまだ、動く時ではないというパフォーマンス。それは、双方への歩み寄り。
束の間の平穏を知らしめる儀式。
「おい。」
「ハッ!」
「聴いていたな?」
「御意。」
「話のとおり、あと10年、我らには時が出来た。これからの10年、どうすべきか。主らに任せよう……。我はこれから勇者との準備に入る。我の下に集うのか否か、選択は主らのもの。だがその選択に盟約を違えることは許されない。これだけは、、この10年の間にあっては肝に銘じておけ。」
「ハッ!承知いたしました!……ですが我らは、貴女様と共にあることを望むモノです。それはお忘れなきよう、どうか慈悲を賜りとう存じます、、、、。」
「…………。ああ、そうか。そうであったな。我は、今も恵まれておるか。なればその期待、我は応えてみせよう、、、」
「有り難き幸せ、、、、、」
バタンッ。
扉は閉められ、今は私一人となった。
やっと、やっと、長い時が過ぎてこの瞬間が、巡ってきた。
ああ、、、。
はやく、、早く、、、ハヤク。。。。。!!!
何よりも、早く会いたい!!!!
勇者、お前に、早く、はやく邂逅したい。。。
私の全てを賭けて闘う存在。奴と闘うことが私の至高。私の、全て。
だというに、何故だ?まだか、まだなのか??
10年、これからの10年。どれだけの長い、長い焦燥が私に押し寄せるというのか、、、
なぜ神は、月神ニクス様は、私の時間を早めてくださらない?なぜ、私は勇者に未だまだ、会えぬのか?
苦しい、苦しい。。。クルシイ、、、
狂おしいほど、私はクルシイ、、、、
あーーー……!!!
早く、早くもっと早く!!!
疾く、疾く速く。。。時よ、廻れ。そして、私に早く会わせておくれ……??
彼奴との時間は、私のただ一つの甘露。
他の何者でも替わることのできない、私だけの、勇者と私だけの、許された時間。
巡れ、巡れ、もっと巡れ。時よ、私に会わせておくれ。あの者に、私が会えるその時に。。。
何年、何千回という時を廻して私はやっと、この時を迎えるのだ。だからたった10年。ほんの、10年。何も苦しいはずがない。待っていられる。
今までの時を思えば、どんな時間も待つことができる、そんな時間。。。
本来はまだまだ待てる、その時間。
だが、知ってしまった。わかってしまった。彼奴が私の下に来る時を。
知ってしまえば待っていられない。
私の針は、動き出した。惰性に動いていたその針が、まるで早馬の如く進み出す。速さを、私に突きつける。そうなるはずだった。
だが実際は、現実はどうだ?緩慢に針が動き、今まで以上に進まない。どれほど牛歩の如く進んでいるのだろう??
どうしようもない、どうにもならない。この時を、ただ、ただ、見つめていることしか出来ない。。。
ああ、これからの10年。私はどうして、準備が行えるのか…………???




