14話
あれからいくつの夜が過ぎたのでしょう。
当然の如く清継は処刑され弟である吉継がこの家の当主となることになったのです。
そして騒然としていた屋敷も落ち着きを取り戻し始めておりました。
ただ、吉継は未だに現実を受け入れられないように見えました。
周囲も吉継に気を遣うようにしてはおります。
が、彼はなかなか覇気を取り戻しません。
それどころか日が経つにつれ、生気を失いつつあるように思えます。
そんなある日、吉継の部屋をミツが訪れました。
「吉継様、元気を出してください。屋敷の皆、心配しておりますよ」
吉継は何も言わなかった。
「あの、初が死ぬ直前ある願いをしたのです」
「初が・・・?」
「はい、この手紙をあなたに渡してくだいと」
そう言ってミツは部屋に5枚程度の紙を置いて部屋をさりました。
吉継はゆっくりとそれを手に取りました。
そしてそれを全て読み終えた吉継は涙を溢れさせておりました。
―――兄上は死んだ。しかし、初はもう帰っては来ないのだ。
今まで、同じ屋敷内にいるということだけでも幸せを感じていた。
笑顔を遠くから眺めているだけで、生きている心地がした。
それがずっと続いてくれるのならば、私は幸せだった。
しかし初はもう・・・
もういなくなってしまったのだ、守ると言ったのに守れなかった。
罪など1つもないのに、殺されてしまった。
もうすこし真相を早く掴んでいれば・・・
あともう少し早ければ、今私は初と2人で笑い合っていたのだろうか?
否、私がしっかりと初のことを考えておれば初を悲しませることはなかったのだ。
真相を掴む以前に、もっと大切なことがあったのだ。
初は牢で1人悲しい夜を過ごしていたんだ、それに私は気がつくことができなかった。
考えれば考えるほど後悔という名のものが押し寄せては、私を苦しめてゆく。
しかしどれだけ公開しても、初はいないんだ。
もう2度と帰ってくることはないんだ・・・・・・。
その夜、吉継は屋敷から姿を消したのです。
そのことに気がついたのは夜が更けたあと、仕えの者が部屋を訪れても返事がなかったので見てみると吉継の姿がなく、現在に至っております。
皆で吉継を探しています。
屋敷内はもちろん、町民にも協力を得て、街中を探しております。
吉継は最近、心身ともに不安定であったことは皆が知っております。
皆、心配でたまりませんでした。
町民が屋敷に駆けてきて、ミツに言いました。
それを聞いたミツをはじめとする屋敷のものは海へと駆け出しました。
海辺には、波に打たれながら浜辺に横たわっている吉継がおりました。
息はなく、とても体が冷えております。
しかし今までに見たことのないくらい柔らかい表情を浮かべ、幸せそうな顔で眠っておりました。




