14.公爵様の好きな場所
王立図書館を出る頃には、午後の陽が少し傾き始めていた。
昼食を終えたエリアナは、ルシアンと並んで石畳の道を歩いていた。
学術地区は中央広場ほど賑やかではなく、通り沿いには古書店や製本工房、画材を扱う店が並んでいる。開け放された窓からは紙を裁つ音が聞こえ、どこかで乾かしているらしいインクの匂いが風に混じっていた。
エリアナは一軒の古書店の前で足を緩めた。
店先に置かれた木箱には、背表紙の擦り切れた本がぎっしりと詰まっている。
「……また本が気になる?」
隣から声がして、エリアナは顔を上げた。
「すみません。今日はもう、十分見せていただいたのに」
「謝らなくていいよ。少し寄ってみようか」
「いえ、今日はルシアン様のお好きな場所へ行く約束です」
エリアナは首を横に振った。
「そちらの方が楽しみなんです」
ルシアンは少し意外そうに彼女を見た。
「私の行き先は、まだ教えていないけれど」
「だから楽しみなんですよ」
エリアナは当たり前のように答えた。
ルシアンがどんな場所を好きなのか、知りたかった。
森で出会ってから、彼はいつも自分の話をよく聞いてくれる。花のことも、薬草のことも、興味を持って尋ねてくれた。
けれど、彼自身の好きなものについては、あまり聞いたことがない。
どんな本を読むのか。
どんな景色を好むのか。
忙しい仕事の合間には、何をして過ごしているのか。
そういうことを、少しずつ知りたかった。
「……そうか」
ルシアンは静かに笑った。
「では、予定どおり案内しよう」
歩き出した彼の横顔を見て、エリアナも自然と笑顔になった。
◇
大通りを離れ、細い坂道を上っていく。
道の両側には古い石造りの建物が続き、壁を這う蔦の隙間から小さな花が顔をのぞかせていた。
途中、ルシアンは一軒の製本工房の前で足を止めた。
「ここには、昔よく来たんだ」
「製本のお店ですか?」
「ああ。子供の頃、本の修理を頼んでいた」
エリアナは店の窓をのぞいた。
中では、年配の職人が革の表紙に細かな模様を刻んでいる。
「ルシアン様も、本がお好きなんですね」
「好きだよ。ただ、君ほど熱心ではないかもしれない」
「どんな本を読まれるんですか?」
「歴史書が多いかな。あとは旅行記も」
「旅行記?」
「ああ。遠い土地の風景や、そこで暮らす人々のことが書かれた本だよ」
エリアナは意外に思った。
公爵様なら、いろいろな場所へ行ったことがあるのだろうと思っていたからだ。
「ルシアン様は、旅行がお好きなんですか?」
ルシアンは少し考えてから答えた。
「……憧れていた、と言った方が近いかもしれないね」
「憧れていた?」
「昔は、遠くへ出かけられるような身体ではなかったから」
エリアナは足を止めた。
彼の言葉に、森で初めて会った日のことが重なる。
身体に絡みついていた、あの古い呪い。
目を覚ましたときの青白い顔。
あれほど苦しい状態が、何年も続いていたのだ。
「……そうだったんですね」
「ああ。旅行記を読んでいると、少しだけ自分も旅をしたような気分になれたんだ」
ルシアンは穏やかに話した。
つらい思い出を語っているというより、昔読んだ本のことを懐かしんでいるようだった。
「いつか、行ってみたい場所もたくさんあったよ」
「今なら、行けますね」
エリアナがそう言うと、ルシアンは足を止めた。
「……そうだね」
彼は少し驚いたように笑った。
「そのとおりだ」
エリアナは嬉しくなった。
「最初は、どちらへ行かれるんですか?」
「まだ決めていないんだ」
「それなら、選ぶところから楽しいですね」
ルシアンは彼女を見つめた。
それから、ゆっくりと頷いた。
「ああ。本当に」
彼の声が少し弾んだように聞こえた。
エリアナはその変化が嬉しかった。
自分の知らない場所へ行くことを考えているときの気持ちと、きっと同じなのだろう。
これから彼は、今までできなかったことを少しずつ楽しめる。
そう思うと、呪いを解けてよかったと改めて感じた。
◇
坂道を上りきると、目の前に小さな庭園が現れた。
高い石壁に囲まれた場所で、入口には古い鉄門がついている。
門の脇には、小さな銅板が掲げられていた。
『旧王立植物研究園』
エリアナは文字を読んで、目を輝かせた。
「植物の研究園……?」
「ああ。今は一般にはあまり知られていないけれど、昔は王立魔導院の研究施設だった場所なんだ」
ルシアンは門の鍵を取り出した。
「現在は公爵家が管理を手伝っている。許可を得れば入れるんだよ」
古い門が、かすかな音を立てて開いた。
中へ入ると、思いがけない景色が広がっていた。
庭園の中央には細い水路が走り、両側には大小さまざまな植物が植えられている。
奥には古い温室があり、ガラス屋根の一部には長年の雨風でできた曇りが残っていた。
公爵邸の庭とは違う。
綺麗に整えられているというより、植物たちがそれぞれの場所で自由に育っているような庭だった。
「……素敵」
エリアナはゆっくりと歩き始めた。
道端には細い葉を持つ薬草が群生し、石の隙間には小さな白い花が咲いている。
見覚えのある植物もあったが、初めて見るものも多かった。
「こちらは、どうして残されているんですか?」
「閉鎖されたあとも、珍しい植物がいくつか生き残っていてね。母がその話を聞き、保存のために援助を始めたそうだ」
「お母様が……」
「ああ。子供の頃、よく連れてきてもらったよ」
ルシアンは奥の温室へ視線を向けた。
「体調がよければ、ここで本を読んでいた。誰も急かさないし、静かでね」
エリアナは隣に立った。
「だから、ルシアン様のお好きな場所なんですね」
「そうだね。ここでは、病気のことをあまり考えずにいられたから」
その言葉に、エリアナは胸の奥が少し痛んだ。
森での暮らしは静かで、穏やかだった。
けれど、自分は好きなときに外を歩き、好きな場所へ出かけられた。
ルシアンには、それが難しかったのだろう。
今さら、その年月を取り戻すことはできない。
けれど。
「……また来られて、よかったですね」
エリアナは庭を眺めながら言った。
ルシアンが彼女を見る。
「今度は、お身体のことを心配せずに歩けますから」
少しの間、返事はなかった。
やがてルシアンは静かに笑った。
「……ああ。そうだね」
その声がいつもより柔らかく聞こえて、エリアナも微笑んだ。
◇
庭園の奥にある温室には、古い木製の棚が並んでいた。
壁際には研究に使われていたらしい器具が残され、棚の一部には植物の名前を書いた札がついている。
エリアナは一つずつ眺めながら歩いていた。
そして、窓辺に置かれた鉢植えの前で足を止めた。
「……あら」
薄い緑色の葉を持つ、小さな植物だった。
見た目は特に珍しくない。
けれど、根元から伝わってくる魔力に覚えがあった。
「これは……」
エリアナは鉢の脇にある札を確かめた。
文字はすっかり掠れている。
ただ、最後の二文字だけがかろうじて読めた。
『……草』
ルシアンが隣へ来た。
「何か気になるものが?」
「この植物、森で見たことがある気がするんです」
「そうなのかい?」
「はい。でも、名前が思い出せなくて」
エリアナは葉の形を確かめた。
細い葉脈。
茎の根元についた銀色の小さな斑点。
どこかで見た。
祖母の温室だっただろうか。
それとも、森の北側にある湿地だっただろうか。
「……少し、触ってもいいでしょうか」
「もちろん。枯らさないようにだけ気をつけてもらえれば」
エリアナは頷いた。
そっと葉へ触れる。
その瞬間、指先に微かな魔力が流れ込んできた。
冷たく、澄んだ感触。
けれど、その奥に何か別のものが混じっている。
エリアナは眉を寄せた。
「……変ね」
「どうした?」
「この植物、魔力を吸い込んでいるみたいなんです」
「魔力を?」
「はい。でも、普通の植物が栄養を吸うのとは少し違って……」
エリアナはもう一度、葉を確かめた。
魔力の流れが細く伸び、温室の床へ続いている。
さらにその先。
建物の外へ向かっていた。
「……どこにつながっているのかしら」
思わずつぶやいた。
ルシアンは真剣な顔になった。
「何か問題がある?」
「今のところはわかりません。でも、少し珍しいものだと思います」
エリアナは指を離した。
その途端、葉の銀色の斑点がわずかに輝いた。
そして、すぐに元へ戻る。
ルシアンにも、その光は見えた。
「……今、光ったね」
「はい」
二人はしばらく鉢植えを見つめていた。
やがてエリアナは小さく首を振った。
「無理に触らない方がよさそうです」
「そうだね。管理人に伝えておこう」
エリアナは頷いた。
けれど、気になった。
この植物の魔力は、どこかで感じたことがある。
それも、つい最近。
そう思ったところで、ふと記憶がよみがえった。
祖母の書斎。
古い本の表紙に触れたとき。
確か、あのときも同じような感触があった。
「……おばあちゃん?」
エリアナは小さくつぶやいた。
「何か言った?」
ルシアンが尋ねる。
「あ、いえ……」
エリアナは少し考えた。
「祖母が持っていた本に、似た魔力を感じたことがあるんです」
「本に?」
「はい。古い魔法の本で……」
そこまで言って、エリアナは思い出した。
『星の理と世界の根源』
祖母が亡くなる前から、ずっと書斎に置いてあった本だ。
内容は難しかったけれど、エリアナは何度も読み返していた。
その表紙に触れたとき、確かに同じような魔力を感じたことがあった。
「……同じ魔法なのかしら」
エリアナはつぶやいた。
ルシアンは彼女の横顔を見つめた。
「エリアナ。その本は、今も森の家に?」
「はい。祖母の書斎にあります」
「そうか」
ルシアンはしばらく考え込んだ。
今朝、オルフェン院長から短い連絡が届いていたことを思い出す。
エレオノーラに関する記録について、近いうちに相談したいという内容だった。
そして今、目の前の植物がエリアナの祖母の本と似た魔力を持っているという。
偶然なのだろうか。
ルシアンはすぐに答えを出そうとはしなかった。
ただ、エリアナが何か不安を感じていないか、それだけを確かめた。
「……気になるなら、あとで調べてみようか」
「いいんですか?」
「ああ。私も少し興味がある」
エリアナは嬉しそうに頷いた。
「ありがとうございます」
その返事に、ルシアンは微笑んだ。
◇
温室を出たあと、二人は庭園の奥にある小さな東屋へ向かった。
石造りの柱に蔦が絡まり、屋根の下には古い木製の長椅子が置かれている。
そこからは、王都の屋根が遠くまで見渡せた。
白い塔。
赤い屋根。
水路沿いに並ぶ建物。
遠くでは、王宮の尖塔が午後の光を受けていた。
「……ここが、一番好きなんだ」
ルシアンは東屋の中へ入った。
「子供の頃、よくこの椅子に座って本を読んでいた」
エリアナも隣に腰を下ろした。
「本当に、静かな場所ですね」
「ああ。王都の中心に近いのに、ここは昔からあまり変わらない」
風が通り抜け、頭上の蔦が小さく揺れた。
しばらく二人は何も話さず、景色を眺めていた。
エリアナは膝の上で指を組んだ。
ここは、ルシアンが幼い頃から大切にしてきた場所なのだ。
自分にとっての森の家と、少し似ているのかもしれない。
あの家にも、祖母と過ごした思い出がたくさん残っている。
庭の椅子。
台所の古い棚。
窓辺の小さな花瓶。
どれも特別に高価なものではない。
けれど、簡単には手放せないものばかりだった。
「……ルシアン様」
「うん?」
「今日、こちらへ連れてきてくださって、ありがとうございます」
ルシアンは彼女を見た。
「気に入ってもらえた?」
「はい。でも、それだけではなくて」
エリアナは少し言葉を探した。
「ルシアン様が昔から大切にされている場所を、私にも見せてくださったことが嬉しいんです」
ルシアンは一瞬、目を見開いた。
エリアナは照れくさくなって、視線を庭へ戻した。
「森の家も、私にとっては特別な場所なので……。何となく、お気持ちがわかる気がして」
少しの沈黙が流れた。
やがて、ルシアンが口を開いた。
「……実は、誰かをここへ案内するのは久しぶりなんだ」
「そうなんですか?」
「ああ。母が亡くなってからは、ほとんど来なくなっていたから」
エリアナは静かに彼を見た。
「……今日は、どうして連れてきてくださったんですか?」
尋ねてから、少し踏み込みすぎたかもしれないと思った。
けれど、ルシアンは困った顔をしなかった。
むしろ、少し考えてから答えてくれた。
「君にも、ここを好きになってもらえたらと思ったんだ」
エリアナは目を瞬かせた。
「……私に?」
「ああ」
ルシアンは微笑んだ。
「君が森の家を見せてくれたように、私も自分の好きな場所を見せたかった」
エリアナは胸の奥が温かくなるのを感じた。
森で出会ったとき、ルシアンに家を見せたのは、ただ休んでもらうためだった。
けれど今は、少し違う。
あの家のことを、もっと知ってもらいたいと思う。
庭の花も、祖母が残した本も。
リュシーたちが遊びに来る、いつもの午後のことも。
「……私も」
エリアナは小さく口を開いた。
「また森へ来てくださったら、今度はもっといろいろな場所をご案内したいです」
ルシアンは嬉しそうに笑った。
「楽しみにしているよ」
「はい」
エリアナも微笑んだ。
そのとき、ふと隣のルシアンへ目を向けた。
午後の日差しが、彼の銀灰色の髪を柔らかく照らしている。
落ち着いた横顔。
深い青色の瞳。
いつもと変わらないはずなのに、今日は少しだけ違って見えた。
彼が大切にしてきたものを知ったからだろうか。
それとも、昨日から何度も感じている、あの落ち着かない気持ちのせいだろうか。
エリアナは答えを探そうとして、やめた。
今は、無理に名前をつけなくてもいい。
ただ、こうして隣に座っていられる時間が心地よかった。
◇
公爵邸へ戻ったのは、夕食の少し前だった。
エリアナは客室で着替えを済ませ、窓辺の星霞草へ水をやっていた。
昨日より少しだけ花が開き、銀色の光が葉の先に宿っている。
「エリアナ」
リュシーが窓枠に座り、彼女を見た。
「今日も楽しかった?」
「ええ。とても」
「ルシアンと、いっぱいお話しした?」
「そうね。今まで知らなかったことを、たくさん教えていただいたわ」
エリアナは鉢を元の場所へ戻した。
「ルシアン様は、昔から本がお好きだったんですって。それから、旅行記もよく読まれていたそうよ」
「ふうん」
「いつか、いろいろな場所へ行ってみたいともおっしゃっていたわ」
リュシーは首を傾げた。
「エリアナも一緒に行くの?」
エリアナの手が止まった。
「……私も?」
「うん」
リュシーは当然のように頷いた。
「だって、エリアナも知らない場所に行くの好きでしょ?」
エリアナは少し考えた。
確かに、今回の旅はとても楽しかった。
森の外には、まだ知らない景色がたくさんある。
ルシアンと一緒なら、きっといろいろなことを教えてもらえるだろう。
そんなふうに考えてから、少し恥ずかしくなった。
「……そうね。いつか、一緒に行けたら楽しそう」
エリアナは静かに答えた。
リュシーは満足そうに笑った。
「じゃあ、リュシーも行く!」
「もちろんよ」
エリアナも笑った。
けれど、そのあとも少しだけ考えていた。
自分がルシアンと一緒に旅をする姿を、こんなに自然に想像できるとは思わなかった。
つい数日前まで、彼は森で助けた旅人だった。
それが今は、明日も、その先も、また会えることを当たり前のように考えている。
エリアナは窓の外へ目を向けた。
王都の街並みには、夕暮れの光が落ち始めていた。
遠くに見える白い塔の向こうには、まだ知らない景色が続いているのだろう。
いつか、それを見に行く日が来るのかもしれない。
そんなことを考えて、エリアナは小さく笑った。
◇
その夜、アルヴェリス公爵邸の執務室には一通の封書が届いていた。
差出人は、王立魔導院院長オルフェン・ヴァイス。
ルシアンは封を切り、短い手紙に目を通した。
『先日は突然の接触となり、失礼した。
エリアナ嬢に関して、確かめたいことがある。
ただし、本人の了承なしに調査を進めるつもりはない。
また、エレオノーラ・フィオーレに関する古い記録の中に、気になる記述が見つかった。
一度、直接話をしたい』
ルシアンは手紙を机に置いた。
今日、旧王立植物研究園で見つけた植物のことを思い出す。
エリアナが感じ取った、不思議な魔力の流れ。
祖母の本と似ているという、その感触。
もし、あれが原初魔法と関係しているのなら。
「……偶然ではないのかもしれないな」
ルシアンは静かにつぶやいた。
窓の外には、夜の庭園が広がっている。
客室のある棟には、まだ明かりがともっていた。
エリアナは今頃、今日の出来事をリュシーに話しているのだろうか。
それとも、図書館で見つけた本のことを考えているのかもしれない。
ルシアンは手紙をもう一度読み返した。
彼女には、祖母の過去を知る権利がある。
けれど、そこに危険があるのなら、何も知らずに近づかせるわけにはいかなかった。
まずは、自分が確かめよう。
そう決め、ルシアンは返事を書くためにペンを取った。
そのとき、机の端に置いていた小さな箱が目に入った。
エリアナからもらった、花の形の焼き菓子。
残りはあと二つだった。
ルシアンは箱を開け、一つ手に取った。
控えめな甘さと、花の香り。
彼女が自分のために作ってくれたものだと思うと、自然と表情が和らいだ。
「……困ったな」
誰に聞かせるでもなく、つぶやいた。
彼女を守りたい。
できれば、あの穏やかな笑顔を曇らせたくない。
けれど、それだけではないことにも、薄々気づき始めていた。
エリアナが何を見て喜ぶのか、もっと知りたい。
何気ない話を聞いていたい。
そして、できることなら。
彼女がこれから見る新しい景色の中に、自分もいたい。
ルシアンは小さく息を吐き、窓の外へ目を向けた。
森で出会ってから、まだそれほど日が経っていない。
焦るつもりはなかった。
今はただ、彼女との時間を大切にしたい。
そう思いながら、彼はペンを取り直した。
オルフェンへの返事には、短くこう記した。
『明日の午後、当邸にてお待ちしています。
ただし、エリアナに関する話は、必ず本人の意思を尊重して進めてください』
書き終えたルシアンは、静かに封を閉じた。
その頃、誰もいない旧王立植物研究園では、温室の片隅に置かれた鉢植えが、淡い銀色の光を放っていた。
細い葉脈の間を、光がゆっくりと流れていく。
やがてそれは土の中へ消え、古い石床の下へと伝わった。
長い間眠っていた何かが、静かに動き始めていた。




