第15話:大陸間横断鉄道、着工。――馬車より速い鉄の塊に、騎士たちが腰を抜かす
ドワーフの一族が「カイ工務店」の作業員として加わったことで、都市カイポリスの建設スピードは異次元の領域に突入していた。
「カイ様、ドワーフたちが掘り出した魔鉱石のストックが山積みです。ガミールさんも『これだけの量を馬車で運ぶのは不可能だ』と頭を抱えていますよ」
聖女リリスが、巨大な倉庫を指差して溜息をつく。
確かに、人力や馬車ではどれだけ時間があっても足りない。物流が滞れば、都市の成長は止まってしまう。
「……そうだね。それじゃあ、物流の『大動脈』を作ろうか。馬車に頼らない、新しい輸送インフラを」
僕は、街の北端から隣国ゼノスまで続く広大な荒野を見渡した。
「……カイ、また何かとんでもないことを考えているわね?」
エルフのセレナが、僕の「現場監督モード」の目つきを見て一歩引く。
「簡単なことだよ。地面に『レール』を敷いて、その上を魔導エンジンで走らせるだけだ。名付けて――【大陸横断魔導鉄道:カイポリス・エクスプレス】」
***
着工は、その日の午後だった。
「ドワーフの諸君! まずはレールの土台となる『バラスト(砕石)』を敷き詰めてくれ! 精度はミリ単位で頼むよ!」
「おうよ、親方! 俺たちの技術、見せてやるぜ!」
バルガス率いるドワーフたちが、改良された魔導ツルハシで大地を均していく。
その背後から、僕は特製の「レール敷設専用重機」――といっても、僕が魔力を込めた巨大な台車だが――を動かした。
【固有権能:等間隔定着】
ガコン、ガコン、と規則正しい音を立てて、銀色に輝くミスリル合金のレールが地面に吸い付くように設置されていく。
ただの鉄じゃない。僕が【分子結合】を強化したこのレールは、摩擦を極限まで抑え、かつどれほどの重量がかかっても歪まない。
わずか数時間で、地平線の彼方まで続く「二本の銀線」が完成した。
「……さて、次は『車両』だね」
僕は倉庫に眠っていた王都軍の攻城槌の残骸と、ドワーフたちが掘り出した魔鉱石を融合させた。
「【構造構築:流線型車体】。動力源は……昨日子供たちが作った『核融合ボイラー』を小型化して載せよう」
「カイ様、それ、爆発しませんか!?」
「大丈夫、リリスさん。安全弁は三重にかけたから。……よし、出発進行」
突如として荒野に出現した、白銀の巨体。
蒸気機関車のような無骨さと、未来の乗り物のような滑らかさを併せ持つ「魔導列車」が、静かに、しかし力強く駆動を始めた。
キィィィィィィン……!!
独特の高周波を響かせ、列車が加速する。
時速、百キロ、二百キロ……。
「な……なにあれぇぇぇ!? 馬より速いどころか、風より速いわよ!?」
セレナが驚愕で弓を落とす。
「これなら、隣国のゼノスまで三十分で着くよ。馬車で三日かかっていた距離がね」
***
その頃。
王都との境界線付近を巡回していた騎士たちは、目撃した。
自分たちが必死に馬を走らせている横を、銀色の巨大な鉄の塊が、見たこともない速度で、音を置き去りにして走り抜けていくのを。
「……おい、今のはなんだ?」
「わからん。……だが、あの鉄の塊の中に、ゼノスのミラ王女が優雅に紅茶を飲んでいる姿が見えた気がするんだが……」
騎士たちは、自分たちの乗る馬が、あまりの速度差に怯えて動かなくなったことに気づき、その場にへたり込んだ。
カイの「インフラ」は、ついに国家の距離すらも無効化し始めた




