当たり前のような温度
おはこんばんにちは投稿主です。
今回で七幕目、またまた明日香視点です。
家に中でもいつも通りの零、それを見てほわほわする明日香
無意識に明日香を優先する零とそのことを噛みしめる明日香の話をどうぞ
玄関のドアが閉まる音。
「ただいま」
「……ただいま」
いつもの声。
靴を脱いで、そのまま上がる。
気づいたらここにいるのも、もう当たり前。
(……落ち着く)
カバンを置いて、ソファに座る。
少しだけ、息をつく。
部活帰りのれいくんは、そのままキッチンへ。
「先、風呂入るか?」
「んー……あとでいい」
なんとなく、今はここにいたい。
「了解」
短く返事して、エプロンをつける。
白い髪を後ろでまとめて、
袖を軽くまくって、
包丁を持つ。
――トン、トン、トン。
一定のリズム。
無駄のない動き。
真剣な横顔。
(……なんか)
ぼーっと見てる。
特に理由はないけど、
見てると、なんか安心する。
(しっくりくるなぁ)
この景色。
キッチンに立つれいくん。
その後ろで、のんびりしてる私。
全部。
変に力入ってなくて、
すごく自然で、
ちゃんと収まってる感じ。
(……好き)
小さく思う。
声には出さないけど。
「何作ってるの」
「適当。すぐできるやつ」
「んー」
ソファに体を預けて、また眺める。
部活、あったはずなのに。
結構動いてたはずなのに。
疲れてる感じ、あんまり見えない。
(……大丈夫なのかな)
少しだけ気になって、
「ね、れいくん」
「ん?」
「先にお風呂とか入ってもいいよ」
「なんで」
「だって疲れてるでしょ」
そのまま、普通に言うと。
一瞬だけ手を止めて、
こっちを見て。
「疲れなんざねぇよ、いつも通りの生活の一部なんだから」
――さらっと。
何でもないみたいに。
言う。
「……そっか」
「おう」
また料理に戻る。
トン、トン、トン。
何事もなかったみたいに。
(……いや)
(なんでそんなこと普通に言えるの)
内心、ちょっとだけ固まる。
心臓、変な感じになる。
じわっとあったかくて、
でもちょっとだけ落ち着かない。
(ずるい)
無自覚でそれ言うの。
反則でしょ。
「……ありがとー」
一応、ちゃんと返す。
「おう」
軽い返事。
本当に、何も考えてない顔。
(……ほんとに)
気づいてないんだなぁ、って思う。
この距離も、
この空気も、
私がどう思ってるかも。
全部。
「……」
少しだけ、ソファから身を乗り出す。
キッチンまでの距離は、そんなに遠くない。
そのまま、背中を見る。
エプロン姿。
まとめた白い髪。
真剣な横顔。
(……似合うなぁ)
なんでも似合う。
なんでもできる。
優しいし、ちゃんとしてるし、
ちょっとだけ鈍いけど。
(……好きだなぁ)
また、思う。
さっきより少しだけ強く。
でも。
「できたぞ」
「ん」
呼ばれて、立ち上がる。
そのまま、いつもの席に座る。
変わらない流れ。
変わらない距離。
(……このままでもいいけど)
少しだけ、思う。
(やっぱり)
もうちょっとだけ。
欲しくなる。
「いただきます」
「いただきます」
手を合わせて。
いつも通りの夜が始まる。
でも心の中だけ、
ほんの少しだけ。
変わっていく気がした。
今回の話はどうでしたか?
恐らく10幕目まではあの二人の姉弟が司会進行をしないと思います。
6~10の間は休みの日の二人を書くことになりますのでお楽しみに。
止まらねぇ鼻水とくしゃみキツイって By投稿主




