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パレット  作者: 青原朔
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ep95.状況整理

喫茶アオハラ。


戦いの直後とは思えないほど、店内は静かだった。


青原がコーヒーを置く。


「……落ち着く」


春が小さく息を吐く。


その言葉に、魅魅が笑う。


「でしょ?」


何でもない顔で、春の肩に寄りかかる。


ほんの少し近い。


零はカップを回しながら、横目でそれを見る。


天音は気づいていないふりをしている。


葵は、気づいているけど何も言わない。


「さっきさ」


魅魅がぼそっと言う。


「ちょっとだけ思った」


「ん?」


「……戻れないのかなって」


軽い声。


でもその先は言わない。


春が答えようとする前に、


魅魅はすぐ笑う。


「うそ。怖かっただけ」


話を流す。


零が、静かに口を開く。


「王ってさ」


唐突。


「欲しいもの、我慢できないんだよ」


冗談みたいに言う。


春は笑う。


「お前ら欲しがりすぎだろ」


「そう?」


零は視線を落とす。


「……じゃあ、もし」


そこまで言って、やめる。


カップに口をつける。


言わない。


聞かない。


何も起きない。


でも。


春が無意識に、


隣にいる天音との距離を少しだけ縮めた瞬間。


零の指先が、わずかに止まった。


ほんの一拍。


誰も気づかない。


魅魅も、笑っている。


いつも通り。


でも。


空気の底に、


小さな“比較”が沈んだ。


まだ冗談。


まだ余裕。


でも、


選ばれる未来を


想像してしまった。


それだけ。



鏡の裏側。


ひび割れた空間に、無数の光が浮かんでいる。


都市の断片。


王の脈動。


能力の残響。


その中心で、佐久間咲は足をぶらぶらさせていた。


「揃ったなぁ」


指先で、一つの光に触れる。


喫茶アオハラ。


その中心に立つのは――神木春。


黒パレット。


暴食の半分。


壊れかけて、それでも立っている。


「主人公」


くすっと笑う。


その周囲の光が、連鎖する。


星崎天音。


白パレット。


迷いながらも、春の隣にいる。


選ばれる可能性を持つ光。


水卜葵。


水の魔女。


その内側で揺れる、嫉妬の王・零。


揺れている。


感情が。


そして、


色欲の王・魅魅。


甘く、熱を帯びた光。


春の近くで、少しだけ強く瞬く。


「ここが不安定」


佐久間咲は、楽しそうに言う。


さらに奥。


静かで、眠っているような影。


夢魔。


まだ動かない。


でも、いつでも傾く。


まだ姿を完全に現していない、


**統(傲慢)**の気配もある。


火のように揺れる光。


火野火憐。


憤怒と縁を持つ少女。


その弟――火野亜蓮。


まだ盤面の外縁。


だが、確実に絡む。


人間側。


久我。


硬い光。


削れても折れない。


美波。


小さく、鋭い。


引き金の光。


須川。


距離を測る目。


静かな観測者。


鷹見。


元対黒局。


今は盤上に立つ側。


そして。


少し高い位置。


静かで、動かない光。


青原。


触れられない。


複製できない。


写らない。


「ほんと、何なの」


佐久間咲は小さく笑う。


ルールの外に立っている人。


でも、まだ降りてきていない。


別の側。


濃く、黒い集団。


片桐りり。


その隣に、


暴食の王。


さらに、


強欲の王。


そして、


憤怒の王。


人器――パンドラ。


対黒局は崩れた。


その瓦礫の奥に、残滓。


世界はもう静かじゃない。


「きれい」


佐久間咲は、心からそう思う。


十年前。


失われた子どもたち。


能力を託した日。


あれは間違いじゃなかった。


「ちゃんと、ここまで来た」


春が迷っている。


天音が揺れている。


葵が耐えている。


零が静かに軋んでいる。


魅魅が甘く笑っている。


りりが壊しに行く。


青原は、まだ動かない。


「最高」


佐久間咲は、にやっと笑う。


そして、指先で


神木春の光を軽く押す。


「どこまでいけるかな」


壊れるか。


守るか。


選ぶか。


鏡の中で、


物語は、まだ整然と並んでいる。


崩れる瞬間を待ちながら。


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