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パレット  作者: 青原朔
125/128

ep94.略奪作戦

喫茶アオハラ。


夜。


シャッターは半分だけ下ろされている。


店内の灯りは、いつもより少し暗い。


青原が、静かにコーヒーを淹れている。


豆を挽く音。


湯を注ぐ音。


その落ち着いた所作と、


世界の壊れ具合が、あまりにも釣り合っていない。


「……対黒局、壊滅か」


久我が低く呟く。


美波はカウンター席で足をぶらつかせている。


零は壁にもたれ、魅魅は春の隣にぴったり。


「くっつきすぎ」


葵がぼそっと言う。


「うるさいなぁ」


魅魅が笑う。


「怖い思いしたんだから甘えさせてよ」


天音が無言でカップを置く。


静かな火花。


その空気を切ったのは、ドアのベルだった。


カラン。


「……久しぶりだな」


低い声。


鷹見だった。


以前より少しだけやつれている。


だが目は死んでいない。


「生きてたか」


久我が言う。


「簡単に死ぬかよ」


鷹見は椅子を引く。


青原が、何も言わず一杯置く。


「……ありがとうございます」


「久しぶりだね、鷹見」


「対黒局、終わったぞ」


単刀直入。


「知ってる」


青原は淡々と答える。


「君を呼ばなかったら、今頃巻き込まれていた」


鷹見が小さく舌打ちする。


「守ったつもりか」


「数は必要だ」


青原は視線を上げる。


「この先は、王が五体以上動く」


「暴食、憤怒、強欲、パンドラ……そして片桐りり」


店内が静まり返る。


鷹見が春を見る。


「お前、半分持ってかれたらしいな」


「……ああ」


春の拳がわずかに震える。


零がその気配を感じる。


「暴食は本気で来る」


青原が続ける。


「りりは強欲を取り込んだわけじゃない。協力関係だ」


「つまり“交渉できる王”が二体いる」


鷹見が眉を寄せる。


「交渉?」


「壊す側のね」


静かに。


青原は笑う。


「僕と戦う気らしい」


その一言で、


店内の空気が張り詰める。


鷹見はコーヒーを一口飲む。


「……で?」


「どうする」


春が顔を上げる。


青原を見る。


「受けて立つ」


即答ではない。


だが迷いもない。


青原はカップを置く。


「戦争になる」


「都市単位で壊れる」


「その前に――」


視線が、全員をなぞる。


「僕らは“揃う”必要がある」


魅魅がにやりと笑う。


「揃うって?」


青原は答えない。


代わりに。


鷹見を見る。


「対黒局のデータはどこまで残っている?」


「地下サーバーの一部は生きてる」


「強欲が集めた能力結晶の位置、追えるかい?」


鷹見の目が鋭くなる。


「……お前、逆に奪う気か」


青原は、穏やかに微笑む。


「借りるだけだよ」


春が、小さく呟く。


「……揃えるって、そういうことか」


零が春を見る。


「ハル、またやる気?」


春は、ゆっくり頷く。


「今度は暴走じゃない」


「準備だ」


外で、遠く爆音が響く。


りり側が動いている。


時間は、少ない。


青原が最後に言う。


「喫茶アオハラは、今日から戦時体制だ」


カップが並ぶ。


湯気が立つ。


日常の皮を被った、最前線。

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