ep91.強欲の王
地下最深部。
半壊した対黒局の奥。
無理やり増設されたような空間。
金庫のような扉が、いくつも並ぶ。
能力結晶が、壁一面に固定されている。
黒く、光る。
冷たい。
「……趣味悪」
りりが呟く。
パンドラの箱が、静かに鳴る。
「集積空間」
「保管目的」
憤怒が鼻で笑う。
「溜め込むだけか」
朔は、黙っている。
その時。
空気が、ひやりと変わる。
奥の暗がりから。
小さな影が、出てくる。
子供。
十歳にも満たない。
白いシャツ。
裸足。
手には、透明な箱。
中には、小さな光。
能力結晶。
瞳は、感情がない。
「……邪魔しないで」
無機質な声。
だが。
周囲の結晶が、一斉に震える。
強欲の黒。
王。
りりが、目を細める。
「へぇ」
「思ったより可愛いじゃん」
子供は、首を傾げる。
「欲しいの?」
足元に、能力結晶が転がる。
パンドラの箱が、かち、と鳴る。
憤怒の炎が、少し揺れる。
朔の飢餓が、微かに反応する。
強欲は、微笑む。
感情のない、完璧な笑顔。
「欲しいと思ったら」
「全部、手に入るよ」
その瞬間。
壁の結晶が、宙に浮く。
何百。
何千。
集めた能力。
奪った力。
対黒局が資産として抱えていた“可能性”。
「ここは、ぼくの」
静かに。
でも確実に。
王の圧。
りりが、くすっと笑う。
「いいね」
「分かりやすい」
強欲の視線が、朔へ向く。
「半分しかないね」
「足りないでしょ?」
刺さる。
朔の飢餓が、疼く。
憤怒が、低く唸る。
「溜め込むだけの小僧が」
強欲は、首を振る。
「違うよ」
「選んでるの」
小さな手が、結晶を掴む。
一瞬で。
能力が、体に吸収される。
光が走る。
その姿が、微かに揺らぐ。
変化。
模倣。
強化。
りりの瞳が、光る。
「……マイトマイン」
強欲が、笑う。
「ちょうだい」
その一言で。
空気が、張り詰める。




