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パレット  作者: 青原朔
118/124

ep87.茶化し

魅魅は、くっついたまま。


でも、さっきより少しだけ力が弱い。


春の鼓動を感じる。


速い。


まだ、少し乱れている。


“生きてる”


それを確かめるみたいに、額を軽く当てる。


さっき。


本気で思った。


――戻らないかも。


あの目。


飢餓に飲まれた目。


自分を“効率”として見ていた目。


もしあのままなら。


自分は喰われていたかもしれない。


それでも。


止めなかった。


止めたくなかった。


強くなってほしかった。


でも。


消えてほしくなかった。


矛盾。


魅魅は、小さく笑う。


「……ほんと、心臓に悪い」


誰にも聞こえないくらい小さく。


でも。


零がちらりと見る。


葵も気づいている。


天音も。


誰も言わない。



その空気を。


あっさり壊す声。


「仲良いねぇ」


煙草の煙と一緒に。


青原。


全員が一斉に振り向く。


「仲良くない!!」


春、零、葵、天音、魅魅。


綺麗にハモる。


青原は、少しだけ目を丸くする。


「息ぴったりじゃないか」


「違う!!」


またハモる。


久我が、遠くで小さく吹き出す。


美波も、苦笑い。


夢魔がぼそっと言う。


「うるさ……」


統が内側で笑う。


――実に非効率だ。


春が青原を睨む。


「茶化すな」


青原は肩をすくめる。


「重くなりすぎるとね」


「人は壊れる」


それだけ言う。


煙を吐く。


「今日はここまでにしよう」


裏世界の空は、まだ歪んでいる。


暴食は退いたが、消えていない。


「次は向こうが仕掛けてくる」


青原の目が少しだけ鋭くなる。


「準備しなさい」


春は、息を吐く。


葵が、零が、天音が。


少しだけ距離を取る。


魅魅も、手を離す。


「撤退だ」


久我が言う。


裏世界が、ゆっくりと薄れていく。


現実への帰還。


壊れかけて。


笑って。


怒って。


生きて。


今日も終わる。


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