表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パレット  作者: 青原朔
110/121

ep79.if

《共犯者:If ― 王の春》


「仮に君が王になった姿を見せよう」


咲が、軽く指を鳴らす。


鏡面がひび割れ、

世界が裏返る。


視界が白に沈む。


次の瞬間。


春は“玉座”に座っていた。



高い天井。


黒と白が混ざり合った城。


静かだ。


あまりにも静か。


「……なんだ、これ」


立ち上がろうとする。


だが身体は重くない。


むしろ、軽い。


力が満ちている。


零が、階段の下に立っている。


跪いている。


「ご命令を」


声は冷静だ。


嫉妬はもう揺れていない。


完全に春のもの。



魅魅が、玉座のすぐ隣にいる。


微笑んでいる。


「全部あなたのものだよ?」


色気も、毒もない。


ただ、従順。



葵は後方に立っている。


視線は春だけを追う。


不安も執着もない。


静かな信頼。



天音もいる。


すぐ横。


微笑んでいる。


あの日のまま。


「これでいいんだよ」


そう言う。


でも。


その瞳に意志はない。



春は、理解する。


全員を取り込んだ。


黒も。


王も。


感情も。


対黒局も崩壊し、

強欲も消え、

暴食も静まり、

世界は平穏。


黒は存在しない。


能力もない。


争いもない。


理想。


完全な理想。



だが。


誰も“選んで”ここにいない。


全員が“春の所有物”。


自由意志はある。


だが。


逆らう理由が存在しない。


春が全てだから。



「悪くないだろ?」


咲の声が後ろから響く。


振り返る。


咲は観客席にいる。


拍手している。


「君は成功した」


春は玉座から降りる。


階段を降りる。


零の前に立つ。


「零」


「はい」


間。


「俺をどう思ってる」


「あなたが世界です」


即答。


迷いなし。



春の胸が、軋む。


魅魅を見る。


「俺のこと、好きか?」


「もちろん」


即答。



天音を見る。


「幸せか?」


「うん」


完璧な笑顔。



何も壊れていない。


誰も苦しんでいない。


でも。


誰も“ぶつかってこない”。



春は、ゆっくり息を吐く。


「……これが王か」


玉座に戻る。


座る。


視界が広がる。


世界の全てが掌の上。


圧倒的支配。


孤独。


誰も本音を言わない。


言えない。


必要ない。



咲が笑う。


「悪くないよね?」


「誰も死なない」


「誰も離れない」


「君が恐れてたもの、全部消えてる」


静寂。



春は、目を閉じる。


想像する。


もしこの世界を選べば。


零は泣かない。


魅魅は離れない。


葵は壊れない。


天音は消えない。



だが。


それは全部。


“俺の中”で完結している。


誰も、俺を選んでいない。


俺が選んだだけ。



春は目を開ける。


咲を見る。


「……退屈だな」


その瞬間。


世界にひびが入る。


零の瞳が揺れる。


魅魅の笑みが崩れる。


天音の目に色が戻る。



咲の拍手が止まる。


「へぇ」


春は言う。


「こんな世界いらねぇ」


崩壊。


鏡が砕ける。



現実へ戻る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ